カチカチ山、さるかに合戦、したきり雀、エトセトラ……。
日本には悪い奴らやズルい奴らをやっつける昔話が残っていて、おとなにも子どもにも人気がある。こんなにもこらしめられる話がたくさんあるのに悪い奴らはいなくなりません。
きょうはそんな、こらしめなきゃいけない令和の時代の悪い奴らのお話です。旅の途中で出会ったある〈オニ〉から聞いたお話です。むかしむかしでも、いまはむかしでもなく、いまのお話。それでは、ものがたりのはじまりはじまり。
日本だけでなく、世界の昔話にも悪い奴らをこらしめる話が残っています。なぜ昔話には、悪い奴らをこらしめる話があって、どこへ行っても伝えられているのか、オニとはいったいどんな存在なのか。ちょっと考えてみました。
ようやく表へ出られるようになった青オニにインタビューをしてみると、追い出された青オニの心には、仕返しや仇を討つという復讐心はありませんでした。静かに暮らしたい、なにげない毎日を穏やかに送りたい、気楽に生きていたい。ニンゲンとは仲良くしたいけど、かまわずにそっとしておいてほしい。それなのに、そうはさせてくれない悪い奴らが近づいてきて、使い勝手のいいオニたちを乱暴に扱うんだと。だからせめて、これ以上の被害が広がらないように、悪いニンゲンはこらしめなきゃいけないと。
青いレガシーに乗ったオニは、今まで誰かをこらしめようと思ったこともありませんでした。ニンゲンから数時間に渡り罵詈雑言を浴びせられたときも、都合のいいときだけ拾われて用がなくなれば捨てられる100円ショップに売っているモノのような存在にされたときも、仕方がないよねといって、静かに居なくなることを選んできました。
悪い奴らには、オニの心を思いやるよゆうもやさしい気持ちもこれっぽっちもないんだと知ったオニは、これからどうやってニンゲンの社会の中で生きていけばいいのか。そもそもニンゲンの社会に生きる必要があるのか。
ぼくは、そもそもオニという存在は、ニンゲンとニンゲンの境界やニンゲン社会のフチに生きているたくましくてしなやかな存在なんだと思うようになりました。目立たないよう見つからないよう、傷つけられないようにしながら、これからも静かに生きていく存在なんだと。もちろん良いニンゲンにも助けられてきた青オニです。そんなオニたちの思いを大切にしたい一方で、さみしい気持ちにもなります。
せめて、こらしめられたニンゲンは、二度とするまいという気持ちになってほしい。
もしもみんなのまちに、青いレガシーに乗ったオニが訪ねてきたら、気軽に声をかけてみてください。同じように世間の境界でのんきにくらしている赤とか黄色とかのオニを見かけたら、ちょっとだけ見守ってあげてください。そして、悪い奴らが近づいてきたら、すぐに逃げてください。そういうニンゲンとかかわらなくても生きていけます。もしも傷つけられてしまったら、青いレガシーに乗ったオニを探して助けを求めてください。きっとすぐに駆けつけてくれるはずです。
合言葉は、「愛とユーモアと想像力」です。