3年間付き合ったけど彼氏がフリーターになったので別れた話。 (6) 付き合った話その3。
スキ、たくさんありがとうございます。嬉しいです。付き合った話が当初の予定よりだいぶ長くなっていて自分でも驚いてます。
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キスをされたと認識するのにそう時間はかかりませんでした。彼はすぐ体を戻し、さっきと同じようにわたしの隣にいます。これが正真正銘私のファーストキスでした。眠気は一瞬にして吹っ飛び、このあと何をすべきなのかわからなくて頭の中はパニック状態でした。恥ずかしくて彼の顔は見れなくて。でも彼の手はずっとわたしを撫でていました。それに後押しされるように、わたしはこの言葉だけは言わなきゃと、人生初めての勇気を振り絞って言いました。
「すき」
そう消え入るような声で伝えて、彼に抱きつきました。彼は驚いているようでした。
「先に言われると思わなかった…」
わたしを抱きとめた彼の声が頭の上から聞こえます。男の人からこのように抱きしめられるのも初めてで、わたしはずっとドキドキしていました。
「だって…」
「こっち見て?」
「無理です。恥ずかしくて見れないです」
「お願い、顔見て言いたい」
はっとして私は顔を上げました。見あげると彼は、さっきと同じ優しい顔をしていました。
「おれも好きです。付き合ってください」
答えはもちろん一つです。消え入るような声で返しました。
「はい…」
返した瞬間彼は満面の笑顔になりました。と同時にわたしを強く抱きしめ、わたしはこれが本当に現実なのか信じられなくてまたパニック状態でした。とにかく嬉しくて恥ずかしくて彼の腕の中に顔を埋めていました。心の中は感じたことのないじゅわっと暖かい何かが広がっていました。これこそが愛の承認だったのかもしれません。
「恥ずかしい?」
「はい…先輩は恥ずかしくないんですか?」
「恥ずかしがってる〇〇がかわいい」
この時初めて下の名前で呼び捨てされました。私はそれまでは、本名となんら関係のないアダ名で呼ばれていたので、彼のその言葉にさらに恥ずかしくなりました。
「〇〇って呼ぶね」
「はい…」
「かわいい」
また私を抱きしめる腕が強くなりました。わたしはなんだかもうよくわからなくなって、泣きそうでした。
「もう無理です〜〜恥ずかしくて無理です〜〜」
「いいよ、かわいいから」
彼はもう、かわいいと永遠に言ってました(笑)わたしは今起こっていることがほんとうに信じられなくて、ずっとどこかふわふわしていました。けれど初めて感じる彼のぬくもりだけは本物で。男の人の腕の中ってこんな感じなんだと、そんなことも考えていました。
「今日はこのまま一緒に寝よっか」
彼はもちろん終電を逃し、そのまま私を抱きしめて寝ました。わたしは寝るどころじゃなくて、恥ずかしくて本当に寝付けませんでした。のに彼はその5分後にいびきかいてました(笑)この人すげえ〜……と若干びっくりしながら、結局わたしが寝れたのは明朝、スズメの鳴き声が聞こえる頃でした。