3年間付き合ったけど彼氏がフリーターになったので別れた話。 (7) 付き合った話その4。
スキ、本当にありがとうございます。うれしいです。今日夜道を歩いていると、目の前をカップルが幸せそうに手を繋いで通り過ぎていきました。彼らの幸せに覚えのある私は、セーターを着ているはずなのになんだか体が冷たく感じました。彼に対してもう未練はないけれど、やっぱりつらいものですね。
*
目を覚ますと、それはまだ夢の続きのようでした。私の腰には昨日の夜から1ミリも動いていない彼の腕があって、私の目の前には昨日と同じ彼の優しい顔がありました。頭も撫でられたままで、心地よい気怠さにわたしはゆっくり意識を取り戻しました。彼は先に起きていたようでした。
「おはようございます…」
「おはよう」
昨日起きたことが本当に現実なのか、まだわからないままでした。これも夢なんじゃないか。わたしは、夢の中で目を覚ましただけなんじゃないか。
「昨日はかわいかったよ」
彼の言葉ではっとしました。現実に引き戻された途端、よだれは垂らしてなかったかとか、寝顔はブサイクじゃなかったか、いびきはかいてなかったかとか、そんな事が気になって急に焦りました。自分の身体中を触ったけれど、もちろん何かされた形跡はありませんでした。
そんな私を見て彼は笑いました。
「大丈夫、俺もぐっすり寝てたから」
私の心配事を全て分かっているようでした。つられてわたしも笑いました。彼の笑顔を見ると、昨日の記憶が蘇ってきて、彼といわゆる両思いになれたことに嬉しさが込み上げてきて更に笑いました。
わたしはこの時、初めて両親以外の他人から愛されたのだと思います。もしかしたら知らないうちにそういう経験があったのかもしれませんが、自分が赤の他人から「愛されている」と自覚したのはこの時が初めてでした。自分の全てが肯定されたようで、その瞬間私はおそらく無敵でした。加えて、自分の気持ちも相手に受け入れてもらえた多幸感。自分の愛が相手に感謝されるということ。それまでの18年間、感じたことのないものでした。
見つめあって笑いあって、その日はお互い別の予定があったので、午前中のうちに別れました。彼は昨日とは違う彼氏の顔をして、ばいばいと手を振って私の家を後にしました。私はどんな顔をすればいいのかわからなくてうまく笑えてなかったと思います。彼が見えなくなってドアが閉まった瞬間、布団に埋まり、抑えていた気持ちをぶつけました。
「できちゃった……」
彼氏が。彼氏が!!!!!
女子校での3年間、芋女を極めていた私が、大学1年の夏にできちゃった!!!!!自分の想像以上に早かったことに驚いて、誰かに言いたくて仕方ありませんでした。完全にお花畑です。というかこんな時ぐらいお花畑にならせてくれ。きっと今、私は世界で一番幸せだ。
これが彼との始まりでした。突然キスなんて少女漫画的展開ですよね。これまで何度も彼氏ができる妄想をしていたけど、これはさすがに予想していなかった。そんなことが自分の身に降りかかったことが、夢見がちな少女の気分を更に高揚させていました。
*
これで付き合った話はやっと終わりです。引っ張ってすみませんでした。明日は別の話を書きますね、どうかお付き合いよろしくお願いいたします。