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なぜ肝硬変でガンマグロブリンが上昇するか?
すい@医学生です。
肝硬変では、
Alb、ChE、T-Chol、凝固因子の減少
NH₃、芳香族アミノ酸、Bil、ガンマグロブリンの増加
が重要な所見です。
これらが見られる原因としては、
Alb、ChE、T-Chol、凝固因子は肝臓で作られる。
→肝硬変で産生量減少
NH₃、芳香族アミノ酸、Bilは肝臓で代謝される。
→肝硬変で代謝できずに蓄積
では、「ガンマグロブリンはなぜ増加するのでしょうか?」
結論から申し上げますと以下が挙げられます。
・ガンマグロブリンは骨髄で産生される
・炎症によってガンマグロブリン(抗体)が増加
・肝内血流異常やクッパ―細胞の機能低下などによる抗原処理能力低下
→腸管細菌などが増殖して抗体が増加
・肝硬変の原因はC型肝炎(約60%)が最も多く、ウイルスによって免疫 系が活性化されるため
まず、ガンマグロブリンは胎児は肝臓で作られますが、それ以降は骨髄で作られます。したがって、産生量は肝臓とは無関係なんです。
また、ウイルス性のものであれば当然、免疫系のガンマグロブリンは上昇してきますし、肝硬変は炎症が長引いて起きると捉えることもできますので、炎症によって上昇しているとも考えられています。
さらに「肝硬変症における高 γグロブリン血症の成因:機序について」
(鈴木光二 岩間章介 鈴木直人 武者広隆 小藤田和郎 奥田邦雄)
によると、
肝硬変症では肝内血流異常の為に、腸管由来の抗原物質の処理不活化が低下することで、腸管由来の抗原に対する抗体の産生が促進し、それが高グロブ リン血症の成因の1つになっていることを示唆している。
(鈴木光二 岩間章介 鈴木直人 武者広隆 小藤田和郎 奥田邦雄)
とあります。
まだ完全に機序が解明されているわけではありませんが、現段階では
・炎症
・ウイルス
・抗原処理能力の低下
が原因として挙げられるでしょう。