レトロウイルスとは何か?
こんにちは、すい@医学生です。今回は、ウイルスの中でも分かりにくいレトロウイルスについて解説していきます。
1.レトロウイルスとは
レトロウイルスとは、RNAウイルスで逆転写酵素を持つウイルスのことです。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)やヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)などが該当します。
普通のウイルスはこの逆転写酵素を持ちませんので、これらのウイルスは少し特殊と言えるでしょう。
そもそも、「レトロ」の意味は、その元となった「retrospective」について検索すると、
とあります。
後ろ向きに振り返るイメージの言葉であることが分かります。
そして、レトロウイルスはまさしく、後ろ向きに逆行するウイルスなのです。
では、一体レトロウイルスのどの部分が逆行しているのでしょうか?
2.DNAウイルスとRNAウイルス
そもそもですが、ヒトの細胞にはDNAが含まれていますよね。
高校生物では、
と勉強します。
これを踏まえて、ウイルスについても見ていくと、ウイルスも同じように増殖するための遺伝情報であるDNAやRNAを持っているのです。
そこで、
DNAだけを持っているウイルスをDNAウイルス
RNAだけを持っているウイルスをRNAウイルス
と分類したのです。
DNAウイルスはDNAを感染主の細胞に転写と翻訳を行ってもらい、タンパク質などを作ります。
一方、RNAウイルスは既に転写の作業は終わっていますので、翻訳だけしてもらいタンパク質形成、ウイルス増殖を行います。
ここで、レトロウイルスの登場です。
レトロウイルスもRNAを持っていますので、
と考えますよね。
ただし、レトロウイルスは逆「転写」酵素を持っていますので、RNAをDNAに逆行的に「転写」するのです。
そして、そのDNAを感染主のもとあったDNAに組み込みます。
そうすることで、細胞のDNAが転写・翻訳されるときに、ちゃっかり自分のウイルスDNA(組み込んだDNA)も転写・翻訳されるようにしているのです。
この逆転写の部分が逆行しているので、「レトロ」ウイルスなのですね。
3.潜伏期間が長い
では、他にレトロウイルスはどんな特徴を持っているでしょうか?
その一つに潜伏期間が約2~15年と長いことが挙げられます。
代表的なレトロウイルスのHIVウイルスで考えてみましょう。
とあります。
ここから潜伏期間が長くなる理由が4つあります。
感染主のDNAに組み込まれるので、免疫系が働きづらい
免疫系を担うT細胞自体に感染するので、免疫力が下がりやっつけられにくい
RNAウイルスなので、変異が多く、免疫系から逃れやすい
増えるのは細胞の転写・翻訳ペースなので緩徐である
などが考えられるかと思います。
したがって、ゆるーくながーく感染し続けるのです。
以下、レトロウイルスについてまとめます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
他にも、気になったことや医学のまとめノートを書いていますので、ぜひご覧ください。
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