エレベーターに乗った際の大きなミスと小さなミス
エレベーターという空間は、一瞬の時間といえど、全くの赤の他人が狭い密室空間を共有するという点で、異質だと思う。
そして、そういう性質だからこそ、思いもよらない出会いをすることもある。
例えば、外国人と2人きりになった際に、ワールドカップの勝敗予想を尋ねられることもある。
ある日、雑貨店での買い物帰りに、立体駐車場のエレベーターに乗ろうとした。扉が閉まりかけていたので急いで駆け寄って扉を開けて中に入ると、先客として若い夫婦(なのか?)が乗っていた。
人を見た目で判断するな、とは言うが、その見た目にやや怖めな印象を僕は受けてしまい、ちょっとビビってしまった。このエレベーターに乗らなきゃ良かった…、と。ポケモンの世界で言えば、ニドリーナとニドリーノに相対したキャタピー、みたいな図だったと思う。
モゾモゾとエレベーターに入ってきたキャタピーこと僕に向かって、怖い印象のニドリーノは意外な発言をする。
「何回のボタンを押しましょうか?^^」
え、うそ!優し!
なんだ、優しいニドリーノだったのか。隣でニドリーナも微笑んでいる。
僕は「3階を押してくださいだピー」と告げ、なんとも言えない嬉しい気持ちになった。彼らに『つきのいし』でもプレゼントしてあげようか、と思うくらいに。
さらに、4階に車を停めていたニド夫妻は、3階に着いた時にエレベーターの『開』のボタンを押して、僕のためにドアを開けてくれた。
僕は大きなミスを犯してしまっていた。
人は見た目では判断してはいけない。
そんな当たり前の事実に、エレベーターは気付かせてくれた。
ありがとうニド夫妻。立派なニドキングとニドクインになるんだよ。
エレベーターというトランセルから脱皮したキャタピーこと僕は、バタフリーのような優雅さで、足取り軽く羽ばたきながら、エレベーターから降りて自分の車に向かった。
そこで僕は気付いた。
自分の車を停めていたのは、2階だった。