モンスター隣人の話
むかし会社で上司に「なんか面白い話して」って無茶ぶりされた時にこの話をしたら、
会社で大爆笑が巻き起こったのでこの話をちょいとひとつさせてもらおう。
大学1年生のときのお話。
東京の大学に進学した私は、女性しか入居できないアパートでひとり暮らしを始めた。
女子学生やOLが住んでいた。
新築のためみんな一斉入居だったこともあり、私はすぐに3人の同い歳の子たちと仲良くなった。
誰かの部屋に集まってはご飯を食べたり遅くまで話し込んだりしていた。
そのモンスター隣人は1階のわたしの隣の部屋に住んでいた。
たぶん同じくらいの年齢。
絶滅したと 思っていた、ザ・地方のヤンキーみたいな女の子。上下だぼだぼスウェット、金髪、キティちゃんの健康サンダル。みたいな。
たまに会っても絶対に挨拶をしない。
いつもちょっと怒ってる表情。
彼女の存在を気に留めることなく生活していたのだが、
入居してしばらく経ったころ。
私の部屋でみんな集まっているとき。
突然、アパートが揺れるくらいの勢いで
「ドンドンドンドンドンドンドン ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」
と壁を思いっきり叩いてきた。
狂気を感じる連打。
みんなも私も「え。。??」って一瞬止まった。
全然うるさくしてないじゃん!
え、なにこの人。
ってイラっとしたけど、
ここはおとなしくしとこうということで私たちは静かになり、解散した。
そしてまたある時。
私が部屋で母と電話をしていると、また
「ドンドンドンドンドンドンドン ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」
と壁を思いっきりたたいてくる。
めっちゃ怒っとるやん。。。。
声のボリューム普通でしょ。
あまりの大きな音にこわくなり、クローゼットの中に逃げ込んで電話をつづけた。
神経質だなぁ。。
まぁいいや。大丈夫でしょ。
くらいにまだその時は思っていた。
そしてまたある時。
今度は2階の友人の部屋、モンスターのちょうど真上の階でまたみんなで集まって鍋をしながら話をしていた。
そうしたら、いきなり床をものすごい勢いで
「ドンドンドンドンドンドンドン ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」
と激しく叩かれる。なにかによじ登り、棒のようなもので天井を突いている!!!!
こわすぎる。。笑
恐怖を通りこして私たちは声を立てないように爆笑してしまった。
どんな執念なんだよ。。笑
彼女の壁叩きはどんどんエスカレートしていく。
モンスターのもうひとつむこうの隣の部屋の人に聞いてみると、彼女もまた壁叩きの被害に遭っていた。
モンスターは、両隣と上の階、つまり彼女の部屋から叩けるところをぜんぶ叩いていやがるということが判明した。
もう誰も部屋に呼べないじゃん。
普通にリラックスして生活できないじゃん。
ムカついてきたのでみんなで管理会社に電話をしてモンスターに抗議の気持ちを伝えてもらった。
でも効果なし。
まったく 変わることなく、モンスターは私たちの生活音を監視してくる。
壁叩きをやめない。
私たちはしばらく壁叩きに怯えながら生活していた。
モンスターの部屋から離れた2階の角部屋の子の部屋で集まるようになった。
でも私の部屋はモンスターの隣。
なすすべがない。
そもそもそのアパートは隣室のアラームのバイブレーションも伝わってくるくらい壁が薄かった。
どうしらいいんだこの頭のおか**女。
って感じ始めていた。(口悪くてすみません)
なにもできない。
あの叩き方からして多分普通じゃない。
話をしに行くのもこわい。
どうすればいいかわからず、機嫌を損ねないように生活をしていたある日。
平日の日中、たまたまモンスターも私も家にいるタイミングがあった。
そしてモンスターはめずらしくご機嫌だったのか、口笛を吹いていた。
アラジンのアホールニューワールド。
私はすかさず、一緒にアホールニューワールドを口笛で奏でた。彼女の旋律にピッタリと重ねて。
モンスターと私は、ピッタリと重なる口笛でアホールニューワールドを一緒に奏でたのだ!
数秒後、一緒に私が口笛を奏でていることに気がついた彼女は口笛を吹くのをピタリとやめた。
私もやめた。
怒り狂って部屋に怒鳴り込みにくるんじゃないか、とか考えてちょっとドキドキしたけど、
モンスターは静かになり、その日は何もなく終わった。
そしてまた数日後、たまたま彼女がオナラをこいた瞬間を私は聞き逃さなかった。
できすぎた話に聞こえるかもしれないが、私もたまたまその時準備万端のオナラがお腹にあった。
私は今度もすかさずオナラをこき返した。
そのときも彼女はこれといった反応もせず、静かだった。
こき返した後、息をひそめて彼女の反応を待ったがシーンとしている。
オナラをこいた女とこき返した女。
ふたりの頭のおか**女たちは、ほんの束の間、おなじ静寂を共有した。
それから1ヶ月後かそれくらいで、彼女は何事もなかったかのように家を出ていった。
あんなに意味不明でこわかったモンスターは、口笛とオナラ返しをして以降、1度も壁叩きをすることなくアパートを出ていった。
こうしてモンスター隣人からの数ヶ月にわたる嫌がらせはなくなった。
狂人には、狂人として接するべし。
狂人のむこうがビビるくらいの狂人っぷりを演出すれば、案外おとなしくなることもある。笑
正論とか純粋な苦しみの抗議をぶつけても聞いてくれないどころか、いっそうモンスターになってしまう人がいる。
そんなときは
相手を上回る狂人っぷりを発揮してみせてみるのもひとつの手。
私はこの話をすべらない話として持っているが、あまりすべったことがない。
ありがとう、モンスター。
ありがとう、モンスターのわたし。笑
(※狂人、というのは親しみを込めた揶揄です。ひどい言葉を使いごめんなさい🥸)