太陽と月と地球(3)
寺山と改札で別れてからずっと頭の中で同じ言葉がぐるぐるしていた。
「日比野くんね、ヤバイよ。君、幼なじみなんでしょ? 助けてあげたら?」
「僕じゃ何もできなかったから」
次の日、学校に着くと自然と日比野を探している自分がいた。そして教室に日比野は居なかった。別に日比野が居ないことくらいよくあることだ。それに、日比野とはただ幼なじみだというだけで、家の電話は知っていても、日比野個人の携帯の番号も知らないし、LINEのやり取りもしたことはない。
結局その日は日比野を見つけることは出来なかった。
3日間の学年末試験が終わった。
日比野はその間一度も現れなかった。
帰ろうとして下駄箱に向かうと、そこに女の子が居た。俺を見るなり頭を下げてこう言った。
「月村くん、日比野くんを助けて!」
*
女の子の名前はサコタカナエといい、元サッカー部のマネージャーだった。なんで俺? と思ったが、とりあえず落ち着いて話を聞こうと2人で駅前の喫茶店に入った。
「えーと、日比野に何かあったの?」
「……寺山くんに、月村くんに相談してみたら? って言われて」
「?」
「あの……日比野くんに助けてもらったから。私……と美田さん。だから今度は日比野くんを助けたくて」
「よく分からないな。日比野は今どこで何をしているわけ?」
「日比野くんには……先輩部員に襲われそうになってたところを助けてもらったんだけど、恨まれてしまったみたいで。私と美田さんはその後すぐにマネージャーを辞めたので詳しくは分からないんだけど、多分……日比野くんは先輩達にボコボコにされたんだと思う」
「え? それいつ?」
「えっと…年明けすぐ位かな」
ちょうど日比野がサッカー部を辞めたくらいの頃だった。
「とにかく、学校にも来てないし、連絡取れないし……心配なの」
「うん、分かった。今日このあとちょっと様子を見てくるよ」
そう答えると迫田さんは初めてホッとしたような顔になった。
「お願いします」
*
迫田さんとは駅前で別れてそのまま自分の最寄り駅まで電車に乗った。外は夜でも昼でもない、天気のせいか美しい夕焼けとかでもない、薄暮という感じの時間帯だった。
にしても寺山。
案外冷たい奴だな。
日はすっかり暮れて、街灯の明かりや家々の明かりが灯る道をいつしか俺は日比野の家の前まで来ていた。日比野んち、久しぶりに来た。
少し緊張する指先を呼び鈴に押し当てる。
「ピンポーン!」
家に明かりはなく、その音は暗闇に吸い込まれた。
(つづく)
追記
前半を書いた時はまだ緊急自体宣言もなく、学校は休校に入ったくらいだったのだが、すっかり書く気も失せて、ほっぽらかしてしまってすみません。また続いてしまって……。がんばれ自分。