旦那様はサンタクロース(3)
私達は結婚した。
もうこれでデートしても同じ場所に帰れる。終電を気にしないで済む。朝まで一緒にいられる…私は初めそう思っていた。
しかし現実はそんなに甘くはなかった。
サンタクロースは彼にとっては本業だが、それだけでは勿論食べてはいけないので(日本サンタクロース協会からわずかだがお給料が出る。ちなみに出来高制だ)、普段は塾講師をしている。毎日ではないが午後、仕事に行き、夜遅く帰宅する。
私はOLなので、朝仕事に行き、夜帰ってくる。
そして夜、彼はいない。
おまけに、サンタクロースの仕事だと言って時々出張や、長期の研修に出かけたりする。夏に結婚式を挙げて以来、ほとんど休みなく働いている。
冬がはじまっていた。
サンタクロースが一番忙しいのは勿論12月なのだが、なんだかんだと一年中、クリスマスの為の準備やら研修やらがあるとは……サンタクロースと結婚してみて初めて分かったことだった。なんと、プレゼントまで、手作りで用意しているのだから、ほとんど家内制手工業だ…。私も少し手伝う。
「忙しいんだね。」
私もぬいぐるみの目を縫い付けながら、つい言ってしまった。
「うん、まあね。今が佳境だよね。…さみしい?」
玩具のロボットパーツを組み立てながら彼が言う。
「ううん。」
「ごめんね。」
そういって彼は私の頭に手を置く。そのままほっぺたをやさしくキュッとつまむ…。
「あ、針があるから危ないよ!」
彼の手を軽く振り払うと、彼も自分の仕事に戻った。
彼は誠実だ。仕事にも一生懸命だし、私のことも大切に思ってくれている。
だけど…。
なんか思ってたのと違う。
誰にも言えないモヤモヤした気持ちは、やがて私の中でどんどん膨らんでいき、私に重石のようにのしかかってくるようになった。
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(4)に続くかも。
旦那様はサンタクロース(4)
kanekyo12|note(ノート)
ありがとうございますサポートくださると喜んで次の作品を頑張ります!多分。