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こんな良質なドラマ作ってしまったら、映画が困るだろ。
シナリオや映像美はもちろん、人物描写が素晴らしく、飲食業経験者(特にレストラン)にはかなり共感が得られると思う。さらにっこんなカッコ良く飲食業や厨房を描いてしまうと、おっしゃ俺もあんな感じで働いてやるぜとイキった若者を生み出してしまうのではないかと、おじさんの俺はヒヤヒヤする。
白いTシャツから伸びる太い腕や自己中心的な思いを周りに強要する主人公、クセのある仕事のできない奴ら、本当は熱いんだけど、熱さを忘れてしまった従業員。
いるんだよ、本当にいるこうゆう奴ら。それが外人だからかスタイリッシュでカッコいい。憧れる。
ただ、これを日本を舞台にしてやってみぃや。どうせ毎度お馴染みの役者たちが顔を並べ、お馴染みの監督で、お馴染みの主題歌だろう。日本のドラマの世界観なんて、おそらく2パターンしかないと思う。悲しすぎるって日本のドラマ、映画業界。だから俺はテレビを捨てた。それは、ただの待機電力消費マシーンと化してたからだ。
なんにせよこの「一流シェフのファミリーレストラン」は何から何までカッコいいんだ。「日本語吹き替え」はまだないけど、字幕で全然いい。その方がいい。
ドラマ1話も「30分」という短尺で、内容、映像美共に高品質が凝縮している。だから、ドラマ特有の「今のそのシーンいる?」みたいな無駄なシーンも一切ない。電灯がチカチカしていつシーンですら美しくて、エモーショナル(そんなシーンがあったかどうかもカッコ良すぎて忘れた)。
ただ、そういったガス台に鋭角に置かれたタバコの箱をワンショットで写すシーンですらカッコ良く描かれている。そして、光もシアンがかった俺好みの光で、コントラストも強め、肉やバンズなどの食材が映える。シーンのワンカットを切り抜いて額装したら、立派なアート作品になるはずだ。そして、この作品の一番のウリはセリフの強さだ。
みんな何かにイライラしている。そして、この状況下でもイライラしてないやつにイライラする。その描写もマジでよくわかる。「なんで急がねーんだよ」「なんで今それやってんだよ」「なんで掃除しとかねーんだよ」そんな場面、現実に現場では毎日何回も繰り返されている。荒い言葉づかいや、強めに物を置く感じ、イライラの振り返り方、見ていて笑っちゃうくらいあるあるの連発。その時に主人公が使う言葉はリアルの連続だ。ゾクゾクする。俺の代わりに彼が行ってくれる。
だから俺はこの作品が好きだ。
リアルとアートが混在している。飲食業界経験者じゃなくても、絶対に楽しめる作品だと思う。くだらない日本のドラマ、映画を見るくらいなら、この作品を見てほしい。
ただ、「一流シェフのファミリーレストラン」をこんなにオススメしておいて言うことではないのだが、一つ本当に心配なのは、この作品によってこの主人公に被れた日本人の若者をこれ以上、生み出さないでほしいということ。なぜなら、もうすでに現場にはそうゆう若者が沢山いるからだ。
この作品「一流シェフのファミリーレストラン」は、「ディズニー+」で現在配信中。(2024.1月)