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【一級建築士】特定主要構造部って主要構造部のお兄さんですか?

こんにちは、かねっつです。

令和6年(2024年)4月1日に建築基準法が改正され、特定主要構造部という新キャラが登場しました。果たしてコイツは何者なのでしょうか。解説していきます。

記事に入る前に、特定主要構造部の詳しい概要について分かりやすく説明しているサイトは多々あります。(私も沢山参考にしています)
この記事では、一級建築士の試験対策に直結した内容と絡めて解説しているため、実務向けというよりかは、試験問題で法令集をいち早く引けるようなまとめかたをしています。実務としての知識を得たい方は、別のサイトをオススメいたします。

※この無料記事を読み終えるのに、約17分かかります。


まずは、皆さんが聞き慣れている(であろう)主要構造部の確認です。

(用語の定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
※省略
五 主要構造部
壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、付け柱、揚げ床、最下階の床、回り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除くものとする。

建築基準法より引用

主要構造部の内容は改正前も変わっていません。用語の確認は法令集を確認するようにしてください。

建築物を耐火建築物や準耐火建築物にするためには、この主要構造部を政令で定めている技術的基準に適合させなければなりません。
※ここでは具体的な説明を省きます


主要構造部については確認できたかと思います。
そしてアイツの登場です。特定主要構造部
法文としては、法2条第九の二(耐火建築物)で出てきます。

九の二 耐火建築物 次に掲げる基準に適合する建築物をいう。
イ その主要構造部のうち、防火上及び避難上支障がないものとして政令で定める部分以外の部分(以下「特定主要構造部」という。)が、(1)又は(2)のいずれかに該当すること。

建築基準法より引用

ここでまず確認してほしいのが、特定主要構造部は耐火建築物の主要構造部について触れられているということです。
ということは、準耐火建築物またはこれと同等を有する建築物には、特定主要構造部の概念がないということになります。これポイントです。

先ほどの法文で『防火上及び避難上支障がないものとして政令で定める部分以外の部分』という、何とも回りくどい表現が出てきました。これがいわゆる特定主要構造部ということになります。
では、防火上及び避難上支障がないものとして政令で定める部分以外の部分とは何なのか?

簡単に言えば、超最強防火区画で囲われた空間のことをいいます。

まずはイメージ図を見て、超最強防火区画と特定主要構造部の関係性を確認してみましょう。

▲左が従前の建築基準法、右が改正された建築基準法のイメージ図

例えば、この建築物を耐火建築物にしなければならない場合、従来は、この建築物の主要構造部を、全て耐火性能(または同等以上の性能)を有する耐火構造にしなければなりませんでした。【左の図】
なので、「柱や梁を木材むき出しにしたい!!」という願望も簡単には叶えられなかったのです。(叶えられたとしても、木材の表面を何十ミリも厚くして燃え代を確保してね、という決まりがありコストも莫大にかかります。)

ところが、この超最強防火区画で区画した部分であれば、例え火災がこの内部で発生しても、超最強防火区画で区画しているから、火災が燃え広がる危険性は少ないよね〜。だったら超最強防火区画した内部は、主要構造部を木材にしてもええやん!使えるようにしてあげようぜ!
という考えになり、主要構造部の一部を木材等にすることができるようになったのです。【右の図】

ということはですよ。
この超最強防火区画で囲われていない主要構造部は、従来通り政令で定める耐火性能を有したものにしなければならないこととなります

そして今まで通りの法文で『主要構造部を耐火性能を有するようにしてね!』という条文にすると、
「えっ!ってことはさ、超最強防火区画で囲った主要構造部も、結局耐火性能を有しないとダメって読み取れるじゃん!この嘘つき!!」
となってしまうため、
「じゃあ超最強防火区画していない主要構造部を、防火上及び避難上支障がないものとして政令で定める部分以外の部分ということにして、通称、特定主要構造部と名付けてあげようじゃないか」
ということになったのです。

おさらいします。

  • 主要構造部は、従来の内容と変わっていない

  • 今までは、耐火建築物とする場合、主要構造部を全て耐火性能を有するようにしなければならなかった

  • しかし、超最強防火区画をされた主要構造部は、耐火性能を有しなくてもよいことになった

  • 超最強防火区画されていない主要構造部は、従来通り耐火性能を有した主要構造部が必要なので、それらを特定主要構造部と名付けた


ちなみに、ここまできて言うのもあれですが…
超最強防火区画のことを建築基準法上では、『特定区画』と表現しています。これは告示231号まで引かないと確認できませんが、試験では令108条の3第一号を確認すれば、十分に対策できます。
※超最強防火区画と表現しているのは、特定主要構造部を分かりやすくイメージできるようにした言い換えと考えてください。


それでは、例題を出してみます!

問1.次の記述について、建築基準法上、誤っているか。
地上3階建て、延べ面積900㎡の共同住宅(各階の床面積300㎡)において、耐火建築物で建築し、その一部を強化した特定の防火区画で区画した場合、その区画内部における主要構造部は耐火構造としなくてよい。

正解は…

正しいです。

特定の防火区画で区画した内部の主要構造部は、木材等の耐火構造以外とすることができます。これは前述した記事を読んで頂ければ解ける問題ですよね。

では次の問題です!

問2.次の記述について、建築基準法上、誤っているか。
耐火建築物における主要構造部のうち、防火上及び避難上支障がない部分は、当該部分が、床、壁、又は政令で定める防火設備で区画したものをいう。

答えは…

誤っています。

主要構造部のうち防火上及び避難上支障がない部分の内容は、令108条の3に定められています。条文を確認してみましょう。

(主要構造部のうち防火上及び避難上支障がない部分)
第108条の3 法第2条第九号の二イの政令で定める部分は、主要構造部のうち、次の各号のいずれにも該当する部分とする。
一 当該部分が、床、壁又は第109条に規定する防火設備(当該部分において通常の火災が発生した場合に建築物の他の部分又は周囲への延焼を有効に防止できるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)で区画されたものであること。
二 当該部分が避難の用に供する廊下その他の通路の一部となつている場合にあつては、通常の火災時において、建築物に存する者の全てが当該通路を経由しないで地上までの避難を終了することができるものであること。

条文にもある通り、第一号と第二号のいずれにも該当する部分が、主要構造部のうち防火上及び避難上支障がない部分として定められています。設問は、第二号の条文が書かれていないため、この設問は誤りと判断できます。

では最後に、もう1問!

問3.次の記述について、建築基準法上、誤っているか。
地上3階建て、高さが17.5mの建築物において、特定主要構造部である柱及び梁に木材を使用したものは原則として、その特定主要構造部を通常火災終了時間が経過するまで倒壊及び延焼を防止するための所定の構造としなければならない。

答えは…

正しいです。

この問題は、法21条に規定する大規模の建築物の主要構造部等から読み解きます。条文を確認してみましょう。

(大規模の建築物の主要構造部等)
第21条 次の各号のいずれかに該当する建築物(その主要構造部(床、屋根及び階段を除く。)の政令で定める部分の全部又は一部に木材、プラスチックその他の可燃材料を用いたものに限る。)は、その特定主要構造部を通常火災終了時間(建築物の構造、建築設備及び用途に応じて通常の火災が消火の措置により終了するまでに通常要する時間をいう。)が経過するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために特定主要構造部に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、その周囲に延焼防止上有効な空地で政令で定める技術的基準に適合するものを有する建築物については、この限りでない。
一 地階を除く階数が4以上である建築物
二 高さが16メートルを超える建築物
三 別表第1(い)欄(5)項又は(6)項に掲げる用途に供する特殊建築物で、高さが13メートルを超えるもの

法21条第1項では、第一号から第三号に該当する大規模の建築物を建築するときに、主要構造部を木材やプラスチック等の可燃材料を使う場合に、通常火災終了時間が経過するまで倒壊及び延焼を防止するための所定の構造としなければならないと定められています。設問の建築物は、第二号に該当しているため、設問の内容は正しいものとなります。


特定主要構造部、いかがだったでしょうか。
新しいワードなので、受験生は混乱してしまうかもしれませんが、ひとつずつ紐解いてみると案外単純なものだということが分かったかと思います。

少し余談になりますが、この超最強防火区画が定められ、特定主要構造部というのが新たに定められた背景には、国が脱炭素化社会の先駆けとして、建築時に炭素の排出量が少ない大規模木造建築の推進を働きかけています。
ですが現行の基準法では、大規模木造建築であっても制限がかかる、そもそも耐火建築物であっては、主要構造部に木材を使うことが難しいというのがありました。
そこで今回の改正で、耐火建築物であっても、一部に木造を使えるようにしていこうね、となったのです。この考えは、建築計画の学科試験でも問われそうな内容ですね。

建築法規の試験では、重要な部分ですので高確率で出題されます。

  • 法2条九の二

  • 法21条各項

  • 法27条

  • 令108条の3令108条の4

  • 令109条の5

  • 令110条

  • 告示231

  • 告示255

上記の条文は、しっかりと確認しておきましょう!


最後まで、ご覧いただきありがとうございました!

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