東京メトロはなぜこのタイミングで上場をしたのか?
こんにちは、お金が入るでかねいりです。
10月24日の日経新聞の一面記事に「東京メトロ、東証プライム上場」という記事が掲載されていました。そこには、「終値が公開価格の約4割増しの1630円で、時価総額は1兆円を超え、2018年のソフトバンク以来の大型上場となった」とありました。
そこで今日は、東京メトロ上場から考えたことをお伝えできればと思います。
■なぜこのタイミングで上場したのか?
その理由はズバリ、有楽町線や南北線の延伸計画を進めるために東京都が、資金が必要だったためです。
東西線の木場駅と門前仲町駅との間が全国一の混雑区間となり、その解消のために東京都は、木場駅のひと駅手前の東陽町駅で、南北に乗客を乗り換えさせる有楽町線の延伸が効果的と考えました。
具体的には、有楽町線の終着駅の豊洲駅から東西線の東陽町駅を通って半蔵門線・都営新宿線の住吉駅まで延伸をする計画です。
また、白金高輪駅から南北線を延伸させて、品川駅にメトロを乗り入れる計画も検討が進められています。そうなると初めて品川駅に地下鉄が乗り入れることになり、さらなる利便性の向上が期待されます。
東京メトロの株式5億8100万株のうち、国が53.4%、東京都が46.6%を保有していましたが、その50%分を市場へ放出。上場に伴い国26.7%、都23.3%となりました。
ちなみに国の売却分(約1800億円)は、東日本大震災の復興事業のために発行した復興債(借金)の返済に充てられる予定となっています。これは国が、東日本大震災後に、国の保有株式の売却収入は、復興債の返済に充てるという方針を定めていたことに由来します。
もともと、東京メトロは2004年に設立された際に、全株式を売却し、完全民営化する方針が決まっていました。残りの株については、国土交通相の諮問会議で、東京メトロが事業主体となる地下鉄の延伸整備が終わるまでは、国と都が株式の2分の1を保有することが適切と主張。延伸計画は、有楽町線(豊洲—住吉間)と南北線(白金高輪—品川間)で、完成は2030年代半ばを想定しているという。
■東京メトロの経営状態は?
東京メトロは、東京都心を中心に9路線を展開し、輸送効率が高いことが特徴。
国土交通省『令和元年度 鉄道統計年報』によると、日本の鉄道会社で年間輸送人員1位はJR東日本の約65億人、2位は東京メトロで約27億人、5位は都営地下鉄で約10億人となっています。
また、東京の地下鉄輸送人員は、メトロと都営を合わせると約37億人。ニューヨークの約17億人、パリの約15億人、ロンドンの約13億人をはるかに凌いで、圧倒的な輸送力を持っています。
2024年3月期の営業利益率は19.6%と私鉄の2倍近い水準で、稼ぐ力が突出していることがわかります。
冒頭で記載した通り、時価総額は1兆円を超えたのですが、鉄道会社としては7位の位置です。トップはJR東日本の3兆4000億円。4位が東急で1億1500万円となっており、東京メトロの時価総額は決して高いとは言えないものになっています。
■なぜ時価総額が高くなっていないのか?
輸送人員や営業利益率の高さといった特徴があるのにもかかわらず、東京メトロは、他の私鉄とほぼ変わらない時価総額となっているのでしょうか?
それは、東京メトロの事業収益の8~9割が鉄道事業となっており、鉄道事業の1本足打法になっており、見方を変えれば、鉄道事業に依存していると言えます。
他の私鉄の鉄道事業の割合は、1~2割ほど。そのほかはというと、不動産などの非鉄道事業が収益源となっています。
時価総額が他の私鉄と比べて高くならなかった理由は、東京メトロは効率的な経営ができていないという市場の評価の現れ。
東京メトロ山村社長は「鉄道一本足では、新型コロナウイルス禍のような危機に対して強靱(きょうじん)な経営とは言えない」と話しており、今回の上場を機に、不動産事業の強化を宣言しています。
2024年度からは、私募の不動産投資信託を活用し、外部から資金を募り、事業を伸ばす戦略を打ち出しています。
また、2025年度からスタートする次期中期経営計画では、マンション開発などにも進出することを計画しています。山村社長は、東京メトロしか駅がない「銀座」、「表参道」、「広尾」を中心に投資をしていく考えも示しています。
東京メトロの上場を機に、交通網だけではなく、生活の利便性がさらに向上することが想定されます。東京都と東京メトロの動きに期待しましょう。