業績好調のセブンアンドアイ井阪社長が退任要求を出された理由について考えてみた
こんにちは、お金が入るでかねいりです。
6月は大手企業の株主総会の季節。その中で、ひとつのニュースが話題になりました。セブン&アイ・ホールディングス井阪社長らの退任を株主である投資ファンドが要求したというものです。
この背景や狙いについて考えたことをお伝えできればと思います。
■業績好調のセブン&アイ・ホールディングス
2023年2月期のセブン&アイの業績を決算短信から見ると・・・
売上高が、対前期比35%増の11兆8113億円(前期から3兆615億円増)。
営業利益が、同30.7%増の5065億円(前期から1188億円増)。
国内小売としては初となる11兆円台を突破し、営業利益も5000億円にのせるなど大幅な増収増益を達成。いずれも過去最高を更新しています。
好調の要因は「コンビニ事業」。
国内コンビニ事業の売上高は8902億円、営業利益は2320億円。全体の営業利益の約半分を稼いでいる。また、営業利益率は26.0%と高い。
海外コンビニ事業の売上高は8兆8461億円、営業利益は2897億円。売上高は、対前年比で70%増、営業利益も80%増と海外事業が進展したことによる要因が大きい。
■なぜ投資ファンドは退任要求を出したのか?
過去にないほど絶好調なセブン&アイ。
こういった中、なぜ井阪社長は、投資ファンドに退任要求を出されたのでしょうか?
その大きな理由は「スーパー事業」にあります。
スーパー事業は、イトーヨーカドーやヨークベニマルなどを運営している事業です。
セグメント情報をみると、売上高は1兆4491億円、営業利益は121億円となっており、営業利益率は0.8%と低く、営業利益額は全体の2.4%と貢献度が低い。また、売上高も前期から20%減少と落ち込んでいる。
収益性や資本効率面で投資家が重視するROE(株主資本利益率)は8.7%。グローバル水準の10%に届いていないこともその要因と見られる。
投資ファンドはこういった面から、スーパー事業から撤退し、コンビニ事業へ資源を集中するよう働きかけているが、その要求に対し、井阪社長ら現役員は反対を表明しているため、退任要求を出したと考えられます。
■セブン&アイがスーパー事業を撤退しない理由とは?
こういった理由が考えられます。
セブン&アイの祖業は、イトーヨーカドー。そして、創業者は伊藤 雅俊さん。戦後間もない東京・千住で、お母さんと兄と3人で始めた羊華堂という洋品店がその原点です。
その伊藤さんは、今年お亡くなりになりました。伊藤さんが亡くなった年に、イトーヨーカドーなどのスーパー事業の撤退を発表することは、伊藤さんへの敬意を欠く行動であり、セブン&アイとしては、とても難しい判断です。
井阪社長ら役員は「首都圏に集中するスーパーストア事業の持つ調達力やサプライヤーネットワーク、そして現在整備を進めているインフラを活用することで、スーパー事業だけでなく国内外コンビニ事業の成長につながる」と話しており、スーパーストア事業がセブン&アイの成長戦略、競争優位性確保に必要不可欠であることを改めて強調し、投資を進めています。
現在好調のコンビニ事業。一方で、この事業の成長が鈍化するということになると、本格的にスーパー事業への風当たりが強くなることが予想されます。
井阪社長が描く相乗効果が果たして発揮できるのか。今後のセブン&アイの動向を注目していきたいと思います。
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