「ベースアップ(賃上げ)はやる気アップにつながるのか?」について考えてみた
こんにちは、お金が入るでかねいりです。
この1年ほどで話題となっているベースアップ(賃上げ)。
大企業だけではなく、中小企業へもその波が広がりつつあります。
今日は、このベースアップがやる気アップにつながるかについて考えてみたことをお伝えできればと思います。
■給与アップはやる気につながるのか?
物価上昇の波が日本に押し寄せて約1年ほどたちます。
その中で、30年間上がらなかった日本の給与が徐々に上がってきました。
いわゆるベースアップ(賃上げ)。
ニュース番組の街頭インタビューで、ベースアップについて話を聞くと、
「給与を上げてもらえるとやる気が高まります」
という声を聞くことがあります。
果たしてこのコメントは本当なのでしょうか?
自身の経験から考えると、給与が上がった瞬間は嬉しいという感情と明日からがんばろうという気持ちが出てきますが、次の日になるとその気持ちは小さくなり、時間が経つにつれて、その給与は当たり前になり、やる気をあげる源泉になってはいなかったと感じます。
■「ゼロをプラスにする要因」と「マイナスをゼロにする要因」
アメリカの臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグ氏は、やる気(動機づけ)が2つの要因に分かれることを提唱しました。
・仕事の「満足」に関わる要因=「動機づけ要因」
・仕事の「不満足」に関わる要因=「衛生要因」
簡単に言えば、
動機づけ要因は、ゼロをプラスにする要因で、
衛星要因は、マイナスをゼロに戻す要因。
具体的には、「動機づけ要因」は達成感・承認・チャレンジの機会などが当てはまり,「衛星要因」は給与・労働条件・福利厚生・人事労務体制などが当てはまります。
動機づけ要因は喜びややりがいを生み出しますが、衛星要因は不満を解消するに過ぎないということが言えます。
給与が上がってやる気の源泉になっていなかったと私が感じていた感覚は、概ね間違っていなかったと言えそうです。
■お金のために働くとパフォーマンスが下がる?
やる気(動機づけ)についての考え方として『マッキンゼー流最高の社風のつくり方』という書籍の中で「ToMo指数(Total Motivation|トータルモチベーション指数)」というものが紹介されています。
ToMo指数は、仕事そのものを楽しんでいるのか(直接的動機)を指標化したもの。直接的動機が高ければ高いほど、高パフォーマンスを発揮することを立証しました。
さらに興味深いのが、その分析の中で『管理強化⇒義務として仕事をする動機(間接的動機)増大⇒パフォーマンスの低下(創造性の低下)⇒業績低迷』というサイクルが発生することを立証している点です。
ここで出てきた「直接的動機づけ」と「間接的動機付け」。
簡単に言うと、
直接的動機づけは、自身の内から出てきたやる気(内発的動機)で
間接的動機付けは、自身の外から与えられたやる気(外発的動機)
のことを言っています。
そして、ToMo指数では、
直接的動機づけ=「楽しさ」・「目的」・「可能性」
間接的動機付け=「感情的圧力」・「経済的圧力」・「惰性」
に分けられ、
直接的動機づけが高まると、高パフォーマンスにつながり、
間接的動機付けが高まると、低パフォーマンスにつながる
と言ってます。
直接的動機をもう少し具体的に言えば、自身が成長する喜び、お客さんに喜んでもらうことや働く仲間に喜んでもらうこと、仕事へ没頭することがそれにあたります。
注目は、間接的動機の「経済的圧力」。お金のために働こうとすると、パフォーマンスが下がると言っているのです。
働くパフォーマンスが下がると、仕事において良い結果を出すことは難しくなり、ひいてはお客さんに喜んでもらうことや働く仲間に喜んでもらう機会が少なくなります。そうなれば、直接的動機は上がらず、負のスパイラルに入っていきます。
■働く目的をどこに置いたほうが良さそうか?
小宮コンサルタンツ代表の小宮氏は「お金を追うな仕事を追え」ということを言っています。
この意味は、「良い仕事をしていれば、後からお金はついてくる」ということを言っていて、高パフォーマンスの結果が評価につながり、それが給与アップにつながるということを言っています。
そして小宮氏は、「良い仕事」は次の3つのことだと言っています。
①お客さまが喜ぶこと
②働く仲間が喜ぶこと
③そのために工夫をすること
小宮氏の言う「良い仕事」をすることを自身の働く目的とすることで、直接的動機が高まり、やる気が高まり、高パフォーマンスになり、評価が高まり、給与が上がるという上昇のスパイラルが実現できると考えます。
ベースアップはあくまでマイナスをゼロにする施策であり、やる気を高めるものではないということが整理できました。
「お金を追うな仕事を追え」
ベースアップが騒がれる中で、意識したい言葉ですね。