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元千葉県弁護士会会長の及川先生に聞いてみた(要約版)
元千葉県弁護士会会長で日弁連会長選挙に複数回出馬している及川先生に対するインタビューを要約しました。
ぜひ動画もご覧ください。
1.対談形式の要約
北:
本日はありがとうございます。及川先生にお話を伺えるのを楽しみにしておりました。
及川先生:
こちらこそありがとうございます。今日はよろしくお願いします。
北:
さて、今日は松戸市民の法律事務所で、元千葉県弁護士会会長でいらっしゃる及川先生にお話を伺います。まずは先生の簡単な自己紹介からお願いできますか?
及川先生:
そうですね。もともと私は弁護士ではなく、会社員として働いていました。最初はマルイで紳士服を販売していて、その後、業界新聞の記者をしていました。それから司法試験を受けて1999年に弁護士登録し、現在で24年目になります。この事務所を独立してからも16年ほどが経ちます。
北:
なるほど、最初は全然違う道を歩んでいらっしゃったんですね。マルイでの経験から、どのように弁護士を目指される道筋になったのでしょうか?
及川先生:
正直なところ、当時はあまり深く考えていなかったんです。マルイでの仕事は楽しかったものの、次第に「このまま一生これを続けるのだろうか」という思いが湧いてきました。その後、業界新聞の記者になったのですが、会社組織の中での仕事にも窮屈さを感じるようになりまして。「弁護士って自由そうでかっこいいな」という単純な動機で目指しました。
北:
具体的なきっかけや誰かの影響があったわけではないんですか?
及川先生:
全くなかったです。法学部出身だったことを思い出して、「じゃあ司法試験でも受けてみるか」くらいの軽い気持ちでした(笑)。ただ、実際に勉強を始めてみると想像以上に大変で、途中で本当に受かるのかと何度も不安になりました。
北:
弁護士になられてから、どんな案件を最初に手掛けられたのですか?
及川先生:
最初の8年間は事務所に雇われて働いていました。そこで扱ったのが商工ローン問題ですね。当時は、商工ローンの高金利が原因で多くの方が借金を抱え、自殺に追い込まれるという悲惨な状況が頻繁にありました。
北:
それは重いテーマですね。具体的にどのような形で関わっていかれたのですか?
及川先生:
個人で解決できる問題ではなかったので、全国規模の弁護団に参加しました。当時は大阪の木村拓哉先生や東京の宇都宮健児先生といった大先輩方がこの問題に取り組んでおり、私もそこに加わりました。全国的な活動を通じて、法律だけでなく社会全体を変えることの重要性を学びました。
北:
弁護団の活動は先生にとってどのような影響を与えましたか?
及川先生:
大きかったです。弁護団に加わることで、一人の弁護士では解決できない問題も、連携や社会運動を通じて解決の道を切り開けることを実感しました。特に、多くの人が追い詰められている現場を目の当たりにすると、「目の前の人を救うだけでなく、この問題そのものを解決しなければならない」と強く感じました。
北:
そこから独立されて、この事務所を構えられたんですね。独立後の活動で特に印象的なものは何ですか?
及川先生:
やはり行政訴訟や社会問題に取り組む案件が多いですね。例えば千葉県の産業廃棄物処理場の問題や外国人の生存権訴訟など、行政の対応に疑問を感じる事案に取り組むことが多いです。
北:
行政訴訟に取り組む際の難しさはどのようなものですか?
及川先生:
一つは時間がかかることですね。そして判決が出るまでに多くの労力を要しますし、経済的なメリットはほとんどありません。ただ、それでもやるべきだと思うのは、これらの訴訟が個人の権利や社会の在り方を大きく左右するからです。
北:
昨年からは精神保健当番弁護士制度の構築にも携わっていらっしゃるとか。
及川先生:
はい。この制度は、精神科病院に強制的に入院させられた方の権利を守るものです。日本全国で13万人以上の方が本人の意思に反して入院させられている現状があり、これを改善しようという取り組みです。福岡などでは30年以上前から活動していましたが、千葉ではようやく昨年から始まりました。
北:
弁護士としての先生の姿勢は、社会運動家としての側面も非常に強いですね。2017年には千葉県弁護士会会長も務められました。その時の経験を教えてください。
及川先生:
地方会の会長としては、司法改革の課題に真っ向から向き合う機会を得ました。司法試験の合格者数の問題や、弁護士業界全体の構造的な課題について議論を深め、声明を出しました。また、弁護士会内部の意思決定の仕組みについても、もっと民主的な運営が必要だと感じました。
北:
その後、日弁連の会長選挙にも挑戦されましたが、選挙を通じて感じたことはありますか?
及川先生:
派閥の力が強いことを実感しました。地方の弁護士がどれだけ努力しても、東京や大阪といった大都市部の派閥が圧倒的な影響力を持っています。それでも、選挙に出ることで少しでも政策に影響を与えられるなら、それは意味のある挑戦だと思っています。
北:
最後に、これから弁護士を目指す人や、社会問題に取り組みたい若手弁護士に向けてメッセージをお願いします。
及川先生:
弁護士としての道は簡単ではありませんが、社会に対して影響を与える力を持てる職業です。大切なのは、目の前の依頼者を救うだけでなく、社会全体を良くするためにどう行動するかを考えることだと思います。ぜひ、一緒に頑張りましょう!
北:
今日はたくさんの貴重なお話をありがとうございました!興味のある方は、ぜひ及川先生の事務所にお問い合わせください。
及川先生:
こちらこそ、ありがとうございました
2.より時間のない人のために
及川先生の経歴
マルイで紳士服販売 → 業界新聞の記者 → 弁護士
マルイでは「自由でない働き方」に疑問を持つ。
記者時代に組織の窮屈さを感じ、法学部出身であることを思い出し司法試験を受験。
1999年に弁護士登録(2回目で合格)、現在24年目。
独立して事務所を開設(16年目)。
弁護士を目指した理由
「弁護士は自由そうでかっこいい」という軽薄な動機。
特に弁護士への強い憧れや具体的な目標はなかった。
勉強時代は「一発試験」という仕組みの中で1日15時間以上勉強。
初期の活動と転機
最初の8年間は事務所勤務(雇われ弁護士)。
商工ローン問題に取り組み、借金苦による自殺者を目の当たりに。
大阪や東京の弁護団に参加。
「個別の事件を超えた社会的課題」に取り組む重要性を実感。
社会問題への取り組み
商工ローン問題:全国規模の弁護団に参加し、最高裁判決で逆転勝訴。
行政訴訟・社会問題
千葉県の産業廃棄物問題。
外国人の生活保護に関する生存権訴訟。
八ッ場ダムの建設差し止め訴訟。
精神保健当番弁護士制度
強制入院者の権利を守る制度を千葉で導入(2023年)。
制度構築に1年9カ月を要し、全国普及を目指している。
千葉県弁護士会会長時代(2017年)
弁護士の増加に伴う課題(司法試験合格者数の問題)に対する声明。
弁護士会内部の意思決定プロセスの課題を実感。
修習生の受け入れ制限を表明し、波紋を呼ぶ。
千葉弁護士会で40年ぶりの会長選挙に勝利。
日弁連会長選挙への挑戦
2度の挑戦(2020年、2022年)
「地方弁護士の声を反映させる」ことを目指したが、派閥の壁に阻まれる。
東京・大阪などの派閥が持つ圧倒的な影響力を痛感。
成果
選挙制度の改善(供託金300万円 → 200万円返還条件の導入)。
谷間世代問題に対する議論の再活性化。
弁護士活動の課題
行政訴訟や社会問題に取り組むには時間・労力・資金が必要。
社会的運動の重要性を実感する一方で、個々の弁護士間での意識の違いが障壁に。
若手弁護士・次世代へのメッセージ
社会全体を見据えた弁護士活動の重要性。
若い世代にはネットやSNSを活用し、全国的な連携を築いてほしい。
目の前の依頼者を救うだけでなく、社会を良くするために行動してほしい。