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早稲田リーガルコモンズの河崎先生に聞いてみた(要約版)

早稲田リーガルコモンズ法律事務所の代表を務める河崎先生に対するインタビューを要約しました(インタビューは2022年10月)。

早稲田リーガルコモンズの代表を務めつつ、ブロックチェーン技術を扱う株式会社ケンタウロスワークスの代表でもあり、さらに世田谷区の参与もされています。

ぜひ動画もご覧ください。

1.対談形式の要約
司会(北):

本日は「早稲田リーガルコモンズ法律事務所」代表の弁護士、河崎健一郎先生にお話を伺います。まずは簡単に自己紹介をお願いいたします。


河崎:
早稲田リーガルコモンズ法律事務所の代表を務めています、河崎健一郎と申します。弁護士登録は61期で、現在13年から14年目くらいですね。私は元々社会人経験を経てロースクールに入りました。早稲田大学ロースクールの1期生で、同じように社会人出身の仲間たちと「早稲田リーガルコモンズ」という事務所を立ち上げたのが約9年半前です。来年(※対談時点から見て)で10周年を迎えます。今は事務所の代表をしながら、主に中小企業の経営者向けの顧問業務を中心に活動しています。


北:
その「早稲田リーガルコモンズ」について、もう少し詳しく教えてください。


河崎:
場所は九段下にあり、弁護士が31名ほど在籍しています。さらに司法書士、弁理士もいて、スタッフを含めると事務所全体で50人規模ですね。扱う分野は企業法務が5割、一般民事や家事、刑事事件が5割くらいとバランスよく受任しています。いわゆる「町弁」的なものも、東京で大きく展開しているような事務所、とイメージしていただければ近いですね。
もともとは“経費共同”形態で、各弁護士が個人事業主として案件を持ち寄るスタイルでしたが、最近“収益共同”に転換し、事務所全体としての意思決定や投資をしやすい形になっています。


北:
「早稲田リーガルコモンズ」という名称はどこから来ているのでしょうか?


河崎:
私が早稲田ロースクールの1期生だったことが大きいですね。当時、社会人経験者を積極的に受け入れる方針があって、そこに集まった仲間たちと「自分たちの世代の法律事務所を作ろう」と話していました。また、早稲田大学と臨床法学教育(リーガル・クリニック)の契約を結んで、ロースクールの学生を実務経験の場として受け入れることも事務所の目的の1つでした。そうした深い関係性もあって、名前に「早稲田」が入っています。


北:
大学と正式に提携して、臨床法学教育の機会を提供する事務所というわけですね。今でも続いているんですか?


河崎:
はい、ずっと続いています。早稲田大学の学生さんがインターンのような形で実際の法的業務に触れ、我々は教育プログラムを提供する。こうした連携を、開所以来ずっと続けているということですね。


北:
事務所の運営形態について、以前は“経費共同”だったとおっしゃいましたが、最近“収益共同”に切り替えられたのはどうしてですか?


河崎:
大きくは組織としての意思決定や投資をしやすくするためです。経費共同だけのスタイルだと、各弁護士が個人事業主なので、共通のシステム投資や採用に踏み切るのが難しい。その一方で、セキュリティや事務局スタッフ、ITなどにしっかり投資しないと安定したサービスが提供できない。そう考えたとき、収益を共有して投資に回せる体制にしなければ、コミュニティとしての成長が難しいと感じたんです。


北:
そこで収益をひとまとめにして、事務所として必要な人材やシステムにお金を使えるようにした、というわけですね。


河崎:
そうです。たとえば今、ハラスメント調査の依頼が全国の学校法人などから増えています。緊急性が高い案件に人数を投入しなければならないとき、個人事業主がバラバラに動くのでは難しい。しかし収益共同で運営していると、チームとしてスピーディに動けます。そういう意味でも、事務所全体で動ける仕組みがメリットになっていますね。


北:
この10年で事務所はずいぶん大きくなりましたね。ところで河崎先生ご自身の経歴も面白いと伺っています。もともとコンサル会社のアクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)にいらしたんですよね?


河崎:
そうです。大学時代は法学とは無縁で、バックパッカーをしていたり、就職活動もうまくいかなくて(笑)。たまたまアクセンチュアの面接で面白がってもらい、組織人事戦略系のコンサルティング部門で約5年働きました。途中で産業再生機構のお手伝いなどもして、法律や会計の専門家が大きな力を持つ現場に出会ったんです。それがきっかけで「弁護士資格を取れば、もう一段違うかたちで社会に貢献できるのでは?」と思い、ロースクールへ進むことにしたんです。


北:
社会人経験を経て早稲田のロースクールへ行き、そこから司法試験に合格して今に至るわけですね。早稲田リーガルコモンズはまさにそういう社会人出身者同士で始まった事務所、ということでしょうか。


河崎:
そうですね。私と同じように銀行出身や会計士出身など、多彩なキャリアを持つ仲間が集まりました。司法修習後、各自が別の事務所で経験を積んでから、「自分たちのカラーを出せる法律事務所を作ろう」と始めたのが今の早稲田リーガルコモンズです。


北:
最後に、新人弁護士やこれから弁護士を目指す人に向けて、河崎先生なりのアドバイスをいただけますか?


河崎:
あまり目先のルールに最適化しようとしすぎないことですね。社会や業界のルールが次々と変わる時代なので、そこだけに合わせてしまうと、いざルールが変化した時についていけなくなる。もう1つは、自分の目の前に来た機会を「これはお金になるかどうか」だけで判断しないこと。人と関わってみて面白いと思ったり、何か心が動かされるなら、まず飛び込んでみるといいと思います。その“ご縁”の中でこそ、新しい可能性や学びが生まれるはずです。


北:
本日は貴重なお話、ありがとうございました。もし興味を持たれた方がいれば、早稲田リーガルコモンズのウェブサイトなども参考にしていただきたいと思います。今後の発展も楽しみにしています。


河崎:
こちらこそありがとうございました。もしご興味のある方がいれば、ぜひ事務所の情報もご覧いただきたいです。今後ともよろしくお願いいたします。

2.より時間がない人のために
早稲田リーガルコモンズ法律事務所(以下、コモンズ)の概要

  • 九段下にある弁護士事務所

  • 弁護士が約31名、司法書士や弁理士、スタッフ含め合計50名規模

  • 企業法務が5割、一般民事や刑事などが5割の総合法律事務所的スタイル

  • 2023年頃に“収益共同”形態に移行(それまでは“経費共同”形態)

  • 事務所の特徴と理念

    • 早稲田大学ロースクール1期生を中心に設立

    • 大学との提携による臨床法学教育(クリニック教育)の実施

    • “コミュニティ”としての事務所づくりを重視し、多様な分野・カルチャーを有する弁護士が所属

    • 組織運営は代表(河崎)を中心に委員会制(経営・人事・業務など)を導入し、選挙で代表を決定

  • 収益共同へ転換した理由

    • 投資(システム・スタッフ・教育など)をしやすくするため

    • 大規模案件やハラスメント調査等でチームとしてスピーディに対応

    • “個人事業主の寄り合い”ではなく、法人組織としての機動力を高める狙い

  • 具体的な取組事例

    • ハラスメント関連の調査・対応

      • 教育機関や企業から全国的に増加している案件

      • 緊急性が高く、複数弁護士による迅速対応が求められる

    • 控訴審専門サービス

      • 元裁判官が中心となり、控訴審だけを新規に受任・検討

      • 一審代理人との共同受任など、ニーズが高まっている

  • 河崎健一郎弁護士の個人経歴

    • アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)で約5年勤務

    • 産業再生機構で専門家の活躍を目の当たりにし、法曹資格を志す

    • 早稲田ロースクール1期生として司法試験合格後、一般民事・人権・刑事を多く扱う事務所で経験

    • コモンズの立ち上げに参画し、代表を務める

    • ブロックチェーン関連の会社(ケンタウロスワークス)も立ち上げ、IT投資や実証実験を進行

  • 個人の仕事スタイル・考え方

    • 訴訟弁護士としての活動は数年前に一旦区切りをつけ、今は事務所経営や顧問業務、事業企画面を中心に担当

    • アンテナを高く張り、社会の変化やテクノロジー(AI、ブロックチェーン)に積極的に関与

    • 「目の前に来た縁を大切にする」ことがキャリア形成の軸

  • 若手・新人弁護士へのメッセージ

    • 現行のルール・仕組みに最適化しすぎるのは危険(社会や業界のルールは激変していく)

    • 短期的な損得ではなく、面白いと感じた事や縁を大事にする

    • 社会は「贈与」をベースとした関係性で支えられている部分が大きい。お金になるかだけではなく、相手や社会にどんな価値を与えられるかを考えることが大切

  • まとめ

    • コモンズは、多様な弁護士やスタッフが集まり、それぞれの強みを活かす総合法律事務所

    • 収益共同化によりチームとしての機動力と投資可能性が広がり、新しい業務・実験に取り組みやすくなった

    • 河崎弁護士の経歴や考え方は「社会の変化を見据えつつ、縁や直感を重視して行動する」姿勢が特徴的

    • 新人弁護士へのメッセージとしては、常に変化する時代に合わせて柔軟に行動し、「これがお金になるか」だけでなく「面白いか」「縁があるか」を基準に挑戦することを推奨

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