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ZOMBB 9発目 フィールド脱出

山田次郎は鼻血と鼻水を垂れ流しながら、
なんとか立ち上がった。
だが、パワードスーツが重くなったように感じる。
バッテリーの電力残量が減っているようだ。

「しかし、伊藤店長もすげーモン造ったな~」
パットンこと、貫井源一郎が
顎をさすりながら感心していた。

「それにしても、ゾンビがいきなり現れるって、
 どういうことだ?」
丸川信也が周りを見渡す。
そこには数百体のゾンビの躯が転がっている。
倒れているゾンビたちを、新垣優実が覗き込んでいく。
そして、振り返ってメンバーたちに言った。

「でも、おかしいわね。どのゾンビも欧米人ばかりだわ。
 東洋系はほとんどいない。どういうことかしら?」

次郎はハナクソをほじりながら、その疑問に答えた。

「そりゃ、ゾンビっていったら外人だろ。
 ドーン・オブ・ザ・リビングデッドしかり、
 デイ・オブ・ザ・リビングデッドしかり、
 ナイト・オブ・ザ・リビングデッドしかり、
 バタリアンしかり、死霊のしたたりしかり、
 ハウス・オブ・ザ・デッドしかり・・・それから」

「もういいわよ、ダンボール」
山田次郎の額に、新垣優実———
ララのUSPの銃口が突きつけられる。

「しかし、ララの疑問も当然だ。
 いったい何が起こってるんだ?」
リーダーである坂原兄が首を傾げる。

「まあ、細かいことはいいじゃないスか。
 世界中こんなことになってるんだったら、
 仕事どころじゃないっしょ」
次郎はハナクソを飛ばした。

「たしかにな・・・オレも仕事で家出た途端に、
 ゾンビに追われて、すぐに自宅に帰ったよ」
と久保山一郎。

「ま、そういうこと。BB弾で倒せるゾンビなんて
 楽しくてしょうがないスよ」
山田次郎が、そう言った時だった。
上空から轟音が聞こえてきたのは・・・。
そして彼らの立っている地面に、
いくつもの影が、地面を這うように映る。
7人のメンバーは空を見上げた。
どの顔にも驚愕の色が浮かんだ。

上空に浮かんでいた・・・
いや飛んでいたのは、数十機に及ぶ、
軍用機だ。それも巨大な爆撃機のようだった。

「ありゃ、なんだ?自衛隊か何かか?」
坂原弟がつぶやいた。

「いや、あれはただの爆撃機じゃない。
 あんな物が飛んでるなんて」
久保山一郎の目は、驚きで見開かれた。

「久保山さん。どういうこと?」
新垣優実が、久保山の蒼ざめた顔を伺って訊いた。

「あれは、ナチス・ドイツが使用していた
 FW200C-4 フォッケウルフ コンドルだ」
久保山の声は確信めいていた。

「ナチス・ドイツ?なんなのそれ?
 そんなものが、どうして日本に・・・」
リーダーの言葉が終わらないうちに、
空を覆う爆撃機から、おびただしい数の何かが
降ってきた。その数は1000以上。
そして、その全てがパラシュートを開いた。

「なんか降ってきたぞ」

坂原弟がスナイパーライフルのスコープで、
その降ってくる何かを拡大して見た。
貫井源一郎もドラグノフのスコープを覗く。

二人ともスコープから目を離すと、ほとんど同時に言った。

「逃げたほうがいい。ありゃゾンビが
 パラシュートで降りてきてるんだ。ここに」

「なんだと?こっちは弾切れだし、
 いくらなんでも1000人ものゾンビ
 相手できねえぞ!」
坂原兄が叫ぶ。

「車まで100メートルくらいだ。みんな急げ!」

つってもオレはどうしたらいいのよ。次郎は一人ごちた。

「まだリアカーに乗れる電力はあるんでしょ?
 早く乗って!」
新垣優実が突っ立ってる次郎に言った。

山田次郎は、素直にリアカーに乗り込む。
といってもまた仰向けだ。
新垣優実はFJR1300ASに乗り込むと、バイクを急発進した。
その前には、その他のメンバーが
分乗している車が疾走している。

悪路は、リアカーに
仰向けになっている次郎の体を跳ね上げた。
上空はパラシュート降下してくるゾンビに覆われている。
そんな空を山田次郎は、見上げた。
彼はまだ鼻血を流していた———。

ララのおっぱいは、やはり凶器だ・・・

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