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【 ドラフト指名 】堺シュライクス 松本龍之介の2年間

2024年10月24日のドラフト会議で堺シュライクス・松本龍之介選手が東京ヤクルトスワローズに育成ドラフト4位で指名されました。

松本選手について紹介いたしますので、東京ヤクルトスワローズのファンの方及び、NPBファンの方、ぜひご覧いただければと思います。


プロフィール

2005年3月1日生
大阪府泉佐野市出身
東海大学付属山形高-堺シュライクス(2023-)
右投げ右打ち 捕手

初めて取材班が松本選手を捉えた写真

東海大山形高から堺に入団。当時は俊足を生かした選手だったが、大西宏明監督の指導の下、強肩強打、それでいて俊足の選手というプレイヤーとして成長。
高校3年時、2023年と調査書が届きながら2度の指名漏れを経験したが、今回晴れて指名された。

松本龍之介通算成績

■初出場
2023年4月1日 対大阪ゼロロクブルズ戦(くら寿司)8番捕手で先発出場
■初安打
2023年4月1日 対大阪ゼロロクブルズ戦(くら寿司)6回裏(中安) 投手 佐藤雄飛
■初打点
2023年4月18日 対大阪ゼロロクブルズ戦(花園)2回表(左2塁打)投手 古田青依
■初本塁打
2024年5月25日 対姫路イーグレッターズ戦(ウインク)6回表に三浦弦氣投手からソロホームラン
■初盗塁
2023年4月27日 対大阪ゼロロクブルズ戦(花園)6回表に二盗(投手:野村賢介 捕手:堅木康生)
■背番号
2(2023-2024)
■獲得タイトル
ベストナイン1回(捕手部門)2024年
打点王1回:2024年(47打点)

プレースタイル

右打者ながら俊足が売り。主に下位を打っているため打席数が少ないのだが、2年間で6本の3塁打、49盗塁を記録。
また状況に応じた右打ち、バントも得意である。

ヘッドスライディングでホームに戻る松本

2024年は長打力が付き、低い弾道のまま打球がよく伸びるようになり、5本塁打を記録しているが、本人曰く長打は狙っていないとのこと。

今季はリーグ最高の盗塁阻止率を記録。しかし、盗塁企画数が58と他のキャッチャーに比べ少なく「そもそも走れない捕手」として活躍した。
今季行われたNPB交流戦でソフトバンク戦、中日戦で盗塁を刺している。

2023年

「盗塁成功率10割と出塁率チームトップになりたい」
2023年、新入団選手として話を聞いたときに松本が立てた目標だ。
キャッチャーながら俊足。本人もそこで勝負ができると思っていたのだろう。

迎えた開幕戦。開幕スタメンに抜擢された松本。試合は7点ビハインドだったが、徐々に追い上げつつあった。そんな6回にセンター前ヒットを放ち、脇屋紀之のタイムリーで1点差に迫るホームを踏んだ。

プロ初安打の瞬間

しかしそのあとに待っていたのは「バッティング」という課題だった。
打率.186、引っ張った打球が飛ばない。

とてもうれしそうだが、四球を選んだシーンである

明るい性格で先輩にもかわいがられていた。
グラウンドの中ではまじめそのもの。試合後にロングティーに励んだり、少しでも技術を吸収しようと脇屋や折下光輝など、経験豊富な選手に教えを乞うていた。

リードをどれだけとるか、という感覚をつかむために牽制で戻る練習をする松本

開幕前にこだわっていた出塁率は、打率に比べればかなり高い.310を記録した。
またリーグ選抜に選ばれ巨人戦ではヒットを放ち、ソフトバンク戦では盗塁も刺した。

キャッチャーとしての素質を評価されたのかNPB球団から調査書は届いた。だがドラフトで松本の名前が呼ばれることはなかった。

雪辱を晴らすために

「昨年が悔しすぎた」
2月の合同練習で松本が話した。
「バッティングがダメすぎたので振り込んできた。今年だめなら本気でNPBを目指すのは最後と決めている」

合同練習中の松本

言葉通り、体は大きくなり、前年はほぼなかった柵越えをフリーバッティングで連発。
オープン戦前に行われたソフトバンク戦でもヒットを放ち、また盗塁も刺した。

盗塁を刺す松本

オープン戦ではついにホームランを放った。そこからシーズン中の松本の快進撃が始まる。

シーズンが始まると松本のバットが止まらない。
振ればヒットになる。塁に出たら盗塁を欠かさず決める。

盗塁を決める松本。一時は盗塁王も争っていた(普通の年なら盗塁王でもおかしくない数字でもある)

打率も8月ごろまでしばらくずっと4割を超えていた。
その好調ぶりについてはしっかり自己分析ができていた。

「バックスピンをかけるようなイメージでバットを平行に出す。それによりきれいなバットスイングになっていった。それに捉える力がついてきてボールが飛んでいると思う」
タイミングの取り方も腕でヒッチを取り入れた。タイミングが取れるようになってきた。
「大西さんから去年から言われたことがちゃんとわかってきて今打てるようになっていると思います」

あくまで狙うのは低い弾道。守っている選手の頭を上を超すイメージでバットを出す。それが形になり、打球は鋭く速くなっていった。

いつしか恐怖の9番と言われ、下位にいながら打撃タイトルのほぼすべてに絡む活躍を見せていた。

フライになると思った打球が思った以上に伸びて長打になることもしばしば

「この成績でなぜ9番を打たせているのか」と大西監督に聞いたことがある。すると意外な答えが返ってきた。

「打つのは今は結果が出てるだけ。それよりキャッチャーとしてしっかりやってほしいから」

捕手としてもエラー、パスボールをリーグ最少でまとめた

打撃よりまずキャッチャーとして。そう大西監督は思っていた。

そして同じ質問を松本にもしてみた。
「大西さんは打つほうより多分守る方をしっかりしてほしいんだと思ってます」

松本は大西監督の意図をしっかり理解していた。
9番で気負わず打つこと、そしてしっかり守ること。松本の盗塁阻止率はリーグトップになっていき、パスボールもエラーもリーグ最少レベルにまとめていった。こうして堺シュライクスは連勝街道を突っ走っていった。

松本の成長

9月7日。堺シュライクスはマジック2として兵庫ブレイバーズと対戦。勝てば優勝という試合。

試合は投手戦の様相を見せたが、兵庫が突き放すと堺も追っていくという展開。
9回を終わって同点。延長に入った。

延長11回裏、先頭の代打藤村翔が死球で出塁。バッターは松本。
前の打席でヒットも打っているが、ここで大西監督がサインを出した。
それを見て松本は笑っていた。

何をするんだと思ったら、次の瞬間、松本はバントの構えを見せ、1球で決めた。
生きようとするセーフティでもなく、ただ単純に投手の前にうまく転がした送りバントだった。

バントを決める松本

「おっしゃーーー!!!」と雄たけびを決めながら、笑顔でベンチに帰っていく松本。

バントの後笑顔で退く松本

後に大西監督が「龍(松本)が嫌な顔せずチームのためにバントを決めてくれた時に「勝った」と思った」と最大の賛辞を贈ったプレーだった。

点が入れば優勝が決まる場面。打ちたくて仕方なかったかもしれない。それでもそれを上回るチームのためのバントだった。

試合は次打者の浅成翔天のタイムリーで勝利。
前年届かなかった優勝を勝ち取った。

大西監督を胴上げする松本(右端)


夢にまで見たNPBの世界に飛び込む松本。
「危機感を持ってやっていきたい」と語った通り競争は始まっている。
目指すは支配下登録、そして神宮球場での大暴れだ。

(文・写真 SAZZY)


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