【検証】堺シュライクスの強さとは
果たして春先、ここまでのぶっちぎりの成績を残せると思っただろうか。
投手陣は大量失点し、打線がそれをカバーできないというオープン戦。怪我人も出ていた。
しかし、ふたを開けてみれば優勝するまでに17勝5敗1分。他を寄せ付けない圧倒的な強さで優勝を勝ち取った。
変わった意識
「圧倒的な練習、圧倒的な成績で優勝することを目標にしていた」
大西宏明監督は優勝が決まった後にこう語った。
「リーグのレベルを上げていくためにも、まずは自分のチームから当たり前のことをしっかりやることを藤江(均・コーチ)とも話し合って決めた」
起用法についても、昨年はある程度自由にやらせていたものを、今年はサインを出し、代打などを起用する回数も増えた。藤江コーチも「去年は1年目で遠慮もあって、いる選手は大体使ったけど、今季はしっかりできている選手しか使っていない」と話した。
練習中、手を抜く選手に雷を落とした。服装の乱れ1つも、一つ一つ指摘した。
「子供みたいかもしれへんけど、「シャツが出てる」とか「声が出てへん」とかそういうところから言い続けてきた」とは夏凪一仁球団代表。
練習でも試合前でも和気藹々とはしている。でも、不思議と緊張感がある。そんなチームになっていった。
「試合じゃなくて練習中に選手が変わっていったのを見て、今年は行けるって思ったかな」と大西監督。
「そんな中で、やる気のない人間が居心地が悪くなるチームにできたのはよかったのかなと思う」
振り返ったのは、途中退団した選手の事だった。
「去年はやる気あるやつ半分、無いやつ半分、みたいな感じになってしまっていた。そうなるとチームのレベルも上がっていかない。そういったチームにはしたくなかった」
あくまで「上のレベル」を目指すチームだからこそ。2月に練習が始まる際には「優勝するのはもちろんやけど、上のレベルを目指してやるために練習するんや」と選手に話している。
「もちろんいい選手も入ってきてくれたし、それに選手が応えてくれたからね」
選手側の目線ではどうだっただろうか。鶴巻璃士外野手は、最下位だった前年と比べて、こう語った。「選手の意識が変わった。NPBに行きたいと思う人や、うまくなりたいっていう人が集まってきて、それに大西さんや藤江さんも応えてくれようとして一生懸命教えてくれた。それが試合の結果につながったと思います」と振り返った。
選手同士も「こうしたらいい」「こういう練習をやればいい」ということを話し合って、技術を磨いていた。打率.490を記録した大橋諒介内野手は「自分は年も上なので、伝えてあげられることでチームがよくなればと思っています。でも教えた人に負けるわけにはいかないですけどね」と話していた。
ただ、それでも「(優勝が決まるという)緊張感をいつも持って試合をしないと」と藤江コーチが言う。優勝が決まった後は、1勝3敗。
「な?なんも変わってへんやろ?」と藤江コーチが言った。優勝を決めて以降、怪我人も出たが、大味のスコアが増えた。投手は多く四球を出し、野手のミスも目立った。
目指すべき場所はまだまだ先にある。このオフも選手を鍛えるべく練習が始まっている。2021年への戦いは始まっている。
(文・写真 SAZZY 2020年11月2日)