【兵庫ブレイバーズ】選手から監督へ。山川和大が選手たちに求めること
ぽつりと漏らした言葉
「なんでこんなに元気ないんかなぁ」
ある日の試合後、山川和大と兵庫ブレイバーズの試合中の話になった。
「ベンチから全然声出てないでしょう?堺やほかのチームはベンチからもしっかり声が出てるし、こっちは点を取られたらすぐシュンとなってしまう」
巨人を退団し、かつて4年間を過ごした兵庫に戻ってきた山川。
今シーズンは最年長の野手としてチームを引っ張っていた。
一時、山川はベンチで声出しを率先して行っていた。
ファーストを守りながら、「ベンチ声!」と指示するシーンも多かった。守備や打撃で声を出したり身振り手振りを大きくしてプレーをしていた。
「たかが1試合、ベンチでも試合出ていても、その試合に本気になれないなら上には上がれないんですよ」
シーズン中繰り返し山川が話していた言葉。しかしチームは失速。最下位が確定していた。
監督としての考え方
兵庫ブレイバーズの最終戦の朝、スポーツ紙に山川が監督を引き継ぐ旨の報道が踊った。
10月4日、この試合が選手として最後の試合になった。
1番一塁で先発出場。
7回にはヒットも放ち、8回からは捕手として染矢啓士郎、そして巨人時代のチームメイト、工宜とバッテリーを組んだ。
試合が終わり、改めて監督就任に至るまでの話を聞いた。
「監督のオファーがあったのはシーズン終盤。周りの監督たちに比べると若いので大丈夫かな、という思いはあったが、任せていただけるということで受けました」
現役生活については「去年巨人を退団して、もう野球をやることはないと思っていたんですが、この1年本当に楽しかったです」と振り返った。
オファーを受諾したら視線はすでに来季に向かっていた。兵庫ナインに求める姿は明確だった。
「アピール合戦をしてほしいです。僕自身僕じゃない先輩を目当てにスカウトが来たときに目に留まった経験があります。『俺を見ろ!』という姿を見せてほしいですね」
もっとギラギラしてほしい、目の前にあるチャンスをつかんでほしい。そしてまたこの言葉が出てきた。
「リーグ戦なので落とす試合もあると思いますが1試合1試合を勝ちに行けるようにしていきたいです。1試合で真剣になれない選手がやっぱり上のレベルに行けるはずがないんです」
その言葉にはNPBの厳しさを知る山川の考えもあった。
「やっぱり自分自身も4年間巨人にいて甘くない世界だなと思いました。そういう世界を目指すのだから、選手たちには、厳しい事、甘くないことを伝えていきたいです。(同じく巨人にいた)坂本(工宜)も、折下(光輝 堺シュライクス)も、村上(海斗 堺)も同じ想いだと思うので」
「見てわかるぐらい目が血走った集団にしたいと思う」と山川は言った。ドラフトで指名されるために、上のレベルに行くために、必要なマインドであることは間違いない。
兄貴分として・ボスとして
今シーズン、開幕前にチームに合流した山川だったが、チームのムードメーカーとして、兄貴分として選手とコミュニケーションを取っていたのが印象的だった。
場の空気も明るくなる、そしてメリハリがつく。そんな光景を今年の兵庫で見てきた。その空気をさらに洗練させて来季に臨むことになる。
「僕が兵庫に入ったときの山﨑章弘監督、池内豊コーチ、永山英成コーチ、そして今年迎えてくれた橋本大祐監督、木村豪コーチ、この5人の気持ちを引き継いで、何とかこのチームからドラフト指名にかかるようにしていきたいです」
そしてこう言った。
「全試合勝ちに行きます」
セレモニーでは「応援してくれる人を笑顔にしたい」と宣言した山川。
来年の秋を実りの秋にできるように。新しい挑戦と戦いが始まった。
(文・写真 SAZZY)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?