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【ドラフトの日】松本龍之介と堺シュライクスの長い一日


2024年10月24日

シーズン終了から約1か月。日も短くなり過ごしやすくなってきた。
今年もドラフトの日がやってきた。

さわかみ関西独立リーグでも調査書が届いた選手がいた。毎年そういう選手が出る中で、2017年以降指名に至っていないのが現状だった。

今回、堺シュライクス・松本龍之介捕手の指名会見場であるJCOM堺局に向かった。
松本選手は高校時代、昨年と調査書が届きながらも指名漏れ。3度目のドラフトを迎えることになった。

会見場に到着する松本

「2時ごろまで寝れなかったですね・・・(今年に)いいイメージもあるけど去年の(指名漏れの)こともよぎって・・・」

そう話す松本の顔は期待2割不安8割という表情をしていた。

朝から神社にお参りしていたという松本。畑康裕球団代表と大西宏明監督も神社にお参りをしていた。
心は一つだった。

プロジェクターに映し出された映像を見つめる松本

支配下選手指名

指名が進むにつれて選手たちも集まってきた。

手前から車谷仁、久保地一馬、高橋楓真、中圭佑

「あ、この選手知ってるぞ」「対戦したことあります」なんて声もちらほら出てきた。

他の独立リーグの選手や、ポジションが同じキャッチャーが指名されていくたびに何とも言えない雰囲気が会見場を覆っていく。空気がよどんでいく。

手を合わせて映像を見る大西監督

支配下選手の指名が終わった。さらにムードは重くなる。10分ほどの休憩をはさんで育成指名に入っていった。
そこでも独立リーグ選手の名前が呼ばれていく。キャッチャーの指名が出る。ただただ時間が過ぎていく。

選手の選択を終える球団も出てくる中、広島の指名が終わったところでハプニングが起きた。

そして運命の瞬間

堺のYouTubeやInstagramのライブ配信に「おめでとう」の文字が流れた。
大西監督の電話が鳴る。慌ててスマホの画面を見る他の選手たち。
「え、まさか?」「指名された?!でもまだ…」「どういうこと…?!」「来るぞ…!」

希望が確信になる瞬間がやってきた。プロジェクターに選手たちがスマホを掲げる。

「第4巡選択希望選手 東京ヤクルト 松本龍之介 捕手 堺シュライクス」

時間にして10秒。読み終わるのが早いか叫ぶのが早いか。あれほど重苦しかった空気は一瞬にして歓喜の渦の中へ消えていった。

抱き合う松本・大西監督・畑代表

松本は到着していた選手たち一人ひとりと抱き合い、喜びを分かち合った。

同郷の中圭佑と抱き合う松本

「画面に名前が出た瞬間はあんまり覚えていないけど、うれしかったです。去年ドラフトにかからなくて落ち込んだけど、大西さんと話して一からやってこれたのがよかった」

ようやく涙が止まり、落ち着いた松本がこれまでを振り返った。

「これから今以上にもっと死ぬ気で頑張るんで、堺シュライクスも、松本龍之介も応援してくれたらと思いますのでよろしくお願いいたします」

思いの丈を語る松本

大西監督は「自分のことのようにうれしかった。久しぶりに泣かせてもらいました。去年かからなかった後に『来年は絶対かかるんやぞ』という強い気持ちで1年過ごそうなって言ってきました」

それがシーズン中に驚異的な成績をたたき出す原動力にもなった。
松本もチームもこの日に向かって突き進んでいた。

大西宏明監督

「このリーグからも久しぶりにNPBに行く選手が出ました。関西独立リーグ、いい球団たくさんあります。NPBに行けることは実証できたので、龍之介に続いて来年再来年輩出できるように頑張っていきたいと思います」

大西監督はそう締めくくった。11月にはリーグ合同トライアウトも開催予定だ。

次のステップへ

高校時代、そして堺シュライクスで計3シーズン一緒にプレーした高橋楓真は「来年は自分が行きたい。もっとホームランを打てるようにしたい」と意気込んでいた。

松本と抱き合う高橋

「MAX〇〇キロ」という球速紹介が出るたびに「和泉(咲人)、お前行けるぞ!」
ショートの選手が指名されるたびに「仁ちゃん(車谷仁)、フィジカル鍛えたらいける」と大西監督や山本翔也コーチから檄が飛ぶ。

会見場にいた選手たちの目の色が変わっていったのが印象的だった。

松本だって前年打率は.186だった。盗塁阻止率も3割を切っていた。パスボールも多かった。指名漏れの悔しさもそこに向き合って必死に変わろう、上を目指そうとした結果がドラフトでの指名という結果に結びついたのだ。

長所でも、短所でも、真剣に向き合えば変わっていく。光る選手はたくさんいる。輝き方が変わる選手はリーグの中でも数多くいる。

だるまのもう片方の目を描く松本
だるまを持つ畑代表、松本、大西監督

長い一日が終わり、リーグの歴史にも名前を刻んだ松本。
松本の次の舞台も、他の選手たちも戦いは始まっていく。

(文・写真 SAZZY)





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