全てが愛おしく感じる瞬間。⑭愛す
私は若い頃、生まれ育った東京近郊と東京が嫌いでした。
気晴らしに行く渋谷などは、人の多さに吐き気をもよおしつつ「私もそうだけど、何でこの人たち生きてんの?みんな、ゾンビだ。」と思いながら・・
ゾンビ交差点の流れにつられて賑やかなセンター街へ吸い込まれ、スペイン坂を歩きながらアジアンの香り漂う小物屋の前を通りつつ・・・
パルコの横から公園通りに抜けて、NHK辺りまで来るとくちゃくちゃした気分がちょっと晴れて、代々木公園を横目で送りながら・・・
国立競技場の上の石畳にあるベンチで休みつつ、空を見たり渋谷にいる謎の人たちを想像したり、持っているリンゴをガブッと食べたり・・・
原宿へ行って、竹下通りの雑踏の中にまぎれ込んでみたりしてました。
それも飽きると、代々木公園で「死んだらどうなるんだろう?」なんて、ぼーっと考えることもありました。
ただ一つ、明治神宮なんて、足が向きませんでした。それは神様が嫌いで・・・というか、ある意味、不憫で・・・行きたくなかったのです。
今思うと東京の街を嫌いながらも、自分の居場所を見つけていたんだなと思いますね。
結局私は、死ぬことを選択するのではなく、海外逃避を選択しました。
そして、あれから30年弱も経ってしまった去年、「嫌いだった東京」が「愛おしい東京」に変わってしまったのです。
あれだけ嫌っていた明治神宮は、約100年前から専門家たちによって計画的につくられた、人工の「原生林」だということを知ったり・・
明治維新後の荒廃がひどい中、旧武家地である東京の60%が「桑畑と茶畑」だったこともあったのです。
ここ3・4年こうして各地域と出会い、その地域が通過してきた事情(歴史)との出会いを通して、当時は嫌っていた「東京」に寄り添い、耳を傾けてみると、そこには生き生きと呼吸する「東京」の姿があったのです。
そんな東京がここまで急速に発展を遂げたのは、大貿易港である「横浜」と結ばれたことが大きかったようです。
こうして一番遠かった場所が近くなり、愛しくなることを通して、あの時代の自分も近く感じることができました。
それはちょうど東京に対するイメージが破壊され、そして新たに創造されたように、自分に対するイメージも変化していったのです。
実は東京には、そんな「破壊」と「創造」が隠されていたのです。
(ちなみに、前回参加して下さったKさんの感想はこちら。)
(次回につづく・・・)
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全てが愛おしく感じる瞬間。
①母という存在 ②国と国との間で ③見えない力 ④人と人との出会い ⑤奇跡は起きる ⑥出会う ⑦書き続ける ⑧母とは? ⑨つながる ⑩つくる ⑪生きる ⑫問う ⑬観る
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