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映画「his 」の感想 泣いたこと。考えたこと。気づいたこと。のぐるぐるした私の混沌について。

はじめに

映画「his」を観てきました。ドラマ「his〜恋するつもりなんてなかった」がなんだかずっと心に残っていて。映画化、しかも13年後の二人。そしてドラマに引き続き、最近の一番好きないわば推しの今泉力哉監督で。年末に再放送を見たときのツイート。

https://youtu.be/9TNRJ7HhUlk

ドラマはこっち。

絶対見るなんて思ってて、ふっと思い立った大阪旅行最終日、はじめてのシネリーブル梅田で。 

以下めちゃくちゃネタバレです!!

感想という私の戯言

肩を震わせるようにして何度も泣いてしまった。それぐらい私の感情を揺さぶって仕方なかった。

歯磨き中の迅にキスしておいて、めっちゃ歯磨き粉、的なことばを言う渚に、あたりまえ、的なことばを言う迅(って最近セリフを全然覚えられない。)。そんななんでもない言葉がとてつもなく愛おしかった。(個人的にはこの歯磨きキスは「愛がなんだ」の追いケチャップなみの強さで。)

最初にわーっとなったのは、迅が二人が別れた日に渚と代えたままだった服をずっとしまっていて、その服を抱きしめるよう匂いをかぐところで。だってそうでしょう?ドラマで渚が迅のシャンプーの香りをかいでしまうのを覚えているから。

そしてその服を着て後ろから渚を抱きしめる迅。からの合わせるおでこ。メインビジュアルのシーン。再びわーっとなって泣いてしまう。

二人がキスしているところを空が見て、友達に言ったら、変だと言われること。そして村の人たちに知られてしまうこと。
「普通」という言葉がものすごく出てくる。なんだろう?普通って。いつだって私も感じている何か。
迅のサラリーマン時代の同じ会社の上司が「男と付き合ってた。」とか「井川だったら試してみてもいい」的な発言をすること、それに対し「最近は冗談でもそう言っちゃいけないんですよ。」って他の同僚が言うこと。なんだろう、私は世間にあふれる「普通」にどこかで従ってしまっていて、無意識にそれが出てしまう。玲奈側の弁護士が言うような普通に。この空気。「ホモでもゲイでもない」と迅が言わないといけない空気。
村の人たちが知った瞬間の空気もそんな感じがした。でもそれは私のうがった見方だったのかな。
緒方さんの「誰を好きになってもいい」といい、迅がゲイだと告白したときの、緊張をやぶるような吉村さんの「男も女もこの歳になるとどっちでもいい」的なことば。
この受け入れに何を思おう。ってかやっぱり私自体がいろんな普通に囚われすぎているんだ。それこそ、劇場を出たとき男の人二人が迅と渚のように後ろから抱きしめて(抱きしめられて)いて、とてつもなく泣き出したくなった。
それをTwitterにつぶやいたとき男の人ってことを書けなかったこと。それってなんだ、何を気にしているんだ。それなのに「すべての恋人たちに少しでも、触れる何かがありますように。(削除したツイート)とか、「すべての恋人たちに優しい世界ならいいのに。いや、すべての人たちに」とか言ってしまうのが私だ。思いついたままのツイートしてしまうのだけど、私ってほんとどうかしてるんじゃないか、なんて思うよ。

っとだいぶズレてしまったので、映画に戻ろう。
「ありがとう。でも、ごめんなさい。」この「mellow」でもとても大切なことばが「his」でも聞けたこと。(mellowの感想はまた書こうと思います。)そんなことに「ああっ!」てなったことにばかり気を取られていたけど、あとで気づく。「ごめんなさい。」がこんなに大事なことに。渚から玲奈への「ごめんなさい。」あの離婚裁判というこんなにも互いを否定する見てる側も苦しすぎる裁判を終わらせるもの。空が導いただろう結末。

そう伝えること。ずっといつわることに慣れてきただろう渚と迅なら。思ったことを口にしてしまう(「できる」と書けない私が嫌。)空が破ってくれる普通。きっと私たちが表面上隠していたいものとか体裁とかそんなくだらないものを取り払うように。
そう感じるくらいに私はやっぱりがんじがらめになっているのだろう。

そう心で思っていると信じているポリコレを書き記しながら、いざとなったら私はどう動くのだろう。困ったな、こんなにも二人の愛に泣いた映画なのに。大号泣したときはきっとそんなこと考えてない。目の前のシーンに、それまでの流れに、ただ泣いただけ。
ドラマ「おっさんずラブ in the sky」は同性を好きになるということを登場人物が誰もおかしいとか思わない世界観でとてもよかった。そんなふうにこの社会がなる日はくるの?「his」の世界は裁判を主に辛い現実を突きつけてくる。でもその中でも村の人たちの反応とか普通を変える何かもあって。そう、私の中の普通を無意識を少しでも変えながら。なんて今日もキレイごとを記すけど、書くことで意識する、気づく何かもあるなら。

そう、玲奈が空が好きな料理がわからないこと、好きな絵本がわからないこと、とか一緒にいなかったから仕方ないよね、でもそれは攻撃対象になるよね、なんて思ってたけど、玲奈が女性だから感じてきたこと、母親なのに、的な普通に苦しんできたこと、とかに私なぞは今更気づくのだ。

裁判後、肩を震わせて泣く渚を抱きしめる迅。それを少し離れた場所でみる玲奈。
空についての悩みを渚に電話できるようになったこと。自転車。渚が見守る空の練習。玲奈が見守る練習。そしてラストシーン、三人で見守る中、空が自転車に乗ること。玲奈が「二人には秘密ですけど」って迅にささやかな秘密を打ち明けること。なんだろう、こんなささやかなことが本当はとっても嬉しいことなんだ。
エンドロールが流れる中、Sano ibukiさんの「マリアロード」最後の「お願い」にこの映画に込められただろうたくさんの想いがぐわっー!!っとやってきて、肩を震わせて泣いたんだ。
明かりがついても泣いてたけどいいの。前日に加納エミリさんのライブでミニタオルを買っておいてよかった。あふれる涙をふくのにちょうどよかったんだ。

こんなにも泣いた映画はたぶん久しぶりで。だけど、泣いているばかりじゃいられないというのも、教えてくれるのもこの映画で。
私はずっと悩んでいくのだろうし、でも出会うことで私の無意識も変わっていくかもしれないから。そう、それでも。

草川直弥と倉悠貴の素晴らしかった迅と渚。13年経って宮沢氷魚と藤原季節、二人が演じる迅と渚に出会えてよかった。
そして相変わらず松本穂香が大好き。報われないけど。って待て。恋愛がうまくいくことだけがすべてじゃないはず。それでも好きって感情を。裁判にも協力してくれる。(辛い目に遭うけど。)
「mellow」でもめっちゃ感じた(きっと感想で書くだろうけど)、好きな人を見つめる視線。何も言わなくても伝えるなにか。映像だから感じるその力を。

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