見出し画像

言葉の蛇口〜パズルのような人生~④「鎹(かすがい)となる人が必要」

パズルのピースと人間関係の話の続き。
宣教師の先生はこんなことも話してくれた。

日本には「子は鎹」という言葉があるそうですね。鎹というのは2つのものを繋ぎ止める釘のことだと教えてもらいました。
パズルのピースを思い返してください。夫婦というのは、他のピースとは違う、隣り合うピースです。バラバラになる前に組み合わさっていたピース同士が巡り合って夫婦になる、あるいは、親友になる、そういう出会いがあります。補い合える相手との出会いは特別なものです。
しかし、私たちは生きている人間ですから、夫婦であっても親友であっても、ぴったりと組み合わさっている時ばかりではありません。まるで組み合わせを間違えたかのように、うまくいかない時もあるのです。悩みや不安、恐れが大きくなったり、関心事が変わったりすることがある。ピースの凹凸の形が変わることがあるのです。
夫婦や親友であっても、どれだけ親しい間柄であっても、どうしてもうまくいかない時期、2つのピースを繋ぎ止めるピースが必要になる時期があります。そんな時には、離れ合おうとする2人を繋ぎ止めてくれる鎹の存在が必要なのです。
2つのピースではなくて、3つ、あるいは4つ、5つのピースで繋がり合ってゆく。より多くのピースで繋がりあってゆくところに人生の喜びはあるのです。 
 パズルの目的は隣り合うピースを見つけることではありません。隣り合うピースを増やしていって、全体として1つのものを作り上げることです。
私たちはパズルのピースのような存在ですから、他のピースを必要としています。上手に繋がり合うためには、鎹となるピースが必要です。他の人に助けてもらいながら、また、お互いに助け合いながら、私たちは繋がってゆくのですから。
 夫婦や親友であっても鎹が必要になるように、うまくいかない関係の人同士、敵対する人同士にも鎹が必要です。分かり合えない者同士であっても、パズルを完成させるためには、不要なピースはありません。だからと言って、無理に繋がり合うこともできないのです。
 凸と凸をぶつけ合うような関係の2人には、凹の部分で繋がり合える人が必要です。決して繋がり合えないような関係の2人でも、間に他のピースが入れば繋がれるのです。
 私たち夫婦には子供がおりませんから、子は鎹という言葉を実感することはありません。でも、私たちにはこうして語らうことのできるお仲間が与えられています。私たちに声をかけてくれる人、畑仕事を教えてくれる人、おいしいものを持ち寄って楽しく語り合える友人が与えられています。私たち夫婦は2人だけの世界ではなくて、日本の皆さんと一緒に広く大きな繋がりの中で暮らしているのです。今、私たちが経験していることは日本に来るまでは見ることのなかった光景です。皆さんと出会えたからこそ、見ることのできた光景があるのです。これは本当に嬉しいことです。
 少ないピースだけで正しい組み合わせを見つけることは不可能です。限られたピースでパズルを完成させることもできません。
隣り合うピースとなる仲間を見つけることは何よりの喜びですが、鎹となるピースとして、繋がりを作り出してゆくことも人生の喜びなのです。
 離れ合おうとする者同士を繋ぎ止めることも、
遠ざけられる者や孤立した者を繋ぎ止めることも、私たちが、鎹として担うべき大切な役割です。そうして、バラバラになったパズルを組み合わせてゆくところに、人生の喜びや意味があるはずですし、そのプロセスの中で、私たちは愛することやゆるすこと、他者のために祈ることを学ぶのです。

パズルのような人生~⑤鎹(かすがい)の役割ー離れ合う2人を繋ぎ止めるために、に続く


いいなと思ったら応援しよう!