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異邦人:久保田早紀(ハンマー・ダルシマー) - その2 -

「異邦人」といって頭に思い浮かべるのがカミュの小説「異邦人」という人も多いのではないでしょうか。母親の葬式で知り合った女性と親密な関係になるオープニングは、その頃の私にはちょっと刺激が強すぎました。

また、さだまさしにも「異邦人」という歌がありますが、この曲も素晴らしい歌です。こちらは久保田早紀の「異邦人」が出る数年前にリリースしたアルバム「帰去来」(1976年)の中の一曲です。私はさだまさしの「異邦人」を聴いて、カミュの「異邦人」を読んだ記憶があります。たぶん・・・ちょっと記憶が曖昧です・・・。ビリー・ジョエルの「ストレンジャー」もある意味「異邦人」ですよね。

ちょっと話がずれました。久保田早紀「異邦人」の話に戻します。
ちょっとここでクレジットの紹介。本当はサブタイトル「-シルクロードのテーマ-」が入り正式なタイトルになります。

■異邦人 -シルクロードのテーマ-
作詞・作曲:久保田早紀 編曲:萩田光雄

<クレジット>
キーボード - 羽田健太郎
エレクトリック・ベース - 高水健司
ドラムス - 渡嘉敷祐一
アコースティック・ギター - 吉川忠英
ラテンパーカッション - 斉藤ノブ
ストリングス - 小林グループ
ハープ - 山川恵子
ダルシマー - 生明慶二
オーボエ - 山本洋一
ケーナ - 旭孝

■ハンマーダルシマー
クレジットを見ると、羽田健太郎、高水健司、渡嘉敷祐一、吉川忠英など、その当時の一流ミュージシャンでバックを固めています。

サウンドのキーポイントになっているのが「ダルシマー」。
聞き慣れない楽器の名前ですが、このダルシマーが「異邦人」のサウンドのキーポイントになっていると私は思っています。小さい音なので、良く聴かなければ分からないかもしれませんが、耳を澄ませて聴くとポイント、ポントでダルシマーが入ってくるのが良く分かります。

正式には「ハンマー・ダルシマー」という楽器で、台形の共鳴箱に張られた多数の弦を、ハンマーと呼ばれる木製のスティックで打って演奏する打弦楽器です。金属製の弦を打って音を出す点や音色の類似性から「ピアノの先祖」と呼ばれることもあるようです。ケルト系ダンス曲やイギリス・アメリカの民謡、各国の伝承音楽などの演奏に使用されることが多い楽器です。中世ペルシャで演奏されていた楽器が発祥で、イランで今も演奏されている民族楽器「サントゥール」が最も原型に近い楽器といわれています。

映画「犬神家の一族」(1976年)の「愛のテーマ」(大野雄二)やTVドラマ「非情のライセンス」(1973年)のテーマ(渡辺岳夫)などに使われています。ハンマー・ダルシマーはパーカッションをやっているかみさんに教えてもらいました。

実は、かみさんにススメられて、私もハンマー・ダルシマーのアルバムを持っているんですよ。ジョーミー・ウィルソンというダルシマー奏者の「Gifts III - Christmas Music From Around The World」というアルバムです。これ、素晴らしいアルバムなんですよ。Amazonで見たらもう中古でも出ていないので、ちょっと貴重なアルバムです。

前出のポルトガル民謡「ファド」で使われているポルトガルギターの音にちょっと似ています。

Salida(サリーダ)というサイトにダルシマー奏者 生明慶二のインタビューが掲載されていたのでそのまま記載いたします。

■Salida(サリーダ)インタビュー:生明慶二

Q. 久保田早紀さんの「異邦人」にもダルシマーが使われていますね。

A. あれは出だしとか間奏にダルシマーが少し入ってるだけなんだけど、最初はダルシマー入ってなかったんだよね。

「異邦人」を最初に録音した時、レコード会社がどうしてもOKを出さないもんだから、アレンジャー(萩田光雄)が僕のところにすっ飛んで来て「なんとかしてください!」って言うわけ(笑)。

もうしょうがないからとりあえず曲を確認して、ダルシマーを即興で演奏したんです。ダルシマーの音っていうのは微量でもすごく性格が強い。だからダルシマーが入っただけでレコード会社のディレクターだとかは違いに気づいてすぐOK出しましたね。

Salida(サリーダ)インタビュー:生明慶二

ダルシマーに終始してしまいましたが、「異邦人」ではオーボエやケーナ(南米ペルー、ボリビアなどが発祥の縦笛)も異国情緒をうまく引き出しています。アレンジャー萩田光雄のセンスが光る一曲ですね。その後いろいろな人が「異邦人」をカバーしていますが、やはり歌もアレンジもオリジナルが一番素晴らしいと思います。

今だったらシンセサイザーでそれらしき音を作って終わりですが、当時は各々の楽器の音の特性を良く見極めて、アレンジャーがうまく使っていました。素晴らしい技術だと思うし、時間がかかっています。一つのものを作るのに対する情熱が半端ないので、何年経っても色褪せないのだと思います。

まだまだ続きます。


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