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ZEMAITIS Proto Type

トニー・ゼマイティスの生い立ちとギター製作

ZEMAITIS生みの親であるトニー・ゼマイティスは1935年にイギリスのロンドンで生まれ、16歳の時に友人の紹介で家具職人を目指し修行を始め、木工技術・材料など多くの事を貪欲に学びました。 
当時金銭的に自分のギターを入手することが難しかったトニーは、友人の所有するギターを観察し、家具職人として養われた良い木材を見抜き選ぶ能力と、木材のシーズニング法、木工加工の技術を生かして自分のアイデアを加えながら見よう見まねでナイロン弦のクラシックギターを製作しました。
初期のトニーは主にアコースティックギターを製作しておりました。
エリッククラプトンが所有していた通称「Ivan the Terrible」は最近のオークションで4千万円に迫る高値で取引されました。
トニーが最初に製作したプロトタイプのエレキギターは、最終的にジョージ・ハリソンが入手し、彼のコレクションの中に含まれています。
また、トニーが最初に製作したメタルフロントギターは、イギリスのバンド「the Groundhogs」のトニー・マカフィーのために作られました。
素晴らしい彫金が施された美しいギターですが、同時にメタルによるシールド効果により、ハムノイズをなくしたクリアなサウンドのギターとして高く評価されました。
トニーは独創的なルックスで有名となったメタルフロント以外にも、ボディートップ前面に白蝶貝を張り詰めた、美しいパールフロントのエレキギターも製作しました。

彫金師ダニー・オブライエン

彫金に関してトニーは、友人の彫金師ダニー・オブライエンに、すべてのゼマティスギターのヘッドストック・プレートとメタルフロントの彫金を依頼していました。
ダニー・オブライエンは1960 年に彫刻家ケン・ハント氏指導の下、ロンドンのジライフルメーカーで彫刻家としての見習いを始めました。
そして見習い期間を終えた21歳頃、ダニーは友人を通じてトニーと知り合い、固い友情と仕事上の関係を築き始めました。
当時のトニー氏はまだアコースティックギターしか作っておらず、ダニー氏はヘッドストックのバッジを作り始めました。
1971年にトニー氏がエレクトリックを金属板でシールドするというアイデアを思いつき、ダニー氏が装飾を彫刻。
こうしてゼマイティス・メタル・フロントは誕生しました。

神田商会へのブランド継承

40年を超えるギター製作を経て引退を決意したトニー・ゼマイティス。
ちょうどその頃、私たちは縁あってトニーに会う機会があり、トニーが築き上げてきた価値ある仕事に感動すると同時に、なんとかその素晴らしいギターを後世に残したいという意思を伝えました。
我々は、単にビジネスとしてギターを作るのではなく、ロック・ミュージックの歴史に大きな足跡を刻んだゼマイティスギターの持つ高い品質とギター作りにおけるスピリットを継承する熱意を語りました。
トニーはその言葉を高く評価し、私たちは一緒に仕事をする事となったのです。
残念なことにその話し合いを続けている途中の2002年、彼は以前からの病により突然帰らぬ人となってしまいました。
残されたトニーの妻アンと息子トニー・ゼマイティスJr.は、ニュー・ゼマイティスの誕生こそがトニーの望んでいた事だと、全面的に私たちへの協力を約束してくれました。

プロトタイプの製作

私たちはまず経験豊かなギター製作者を集め、トニーが製作したギターや、オリジナル図面、資料、スペック、材料など詳しく研究、分析することから始めました。
それはトニーが製作した最高の品質を持ったギターに少しでも近づこうとする壮大なチャレンジでした。
ゼマイティスギターの大きな特徴として、美術品とも言える彫金が有名です。
トニーと一緒に長年彫金を担当してきたダニー・オブライエンが私たちのプロジェクトに共感し協力してくれることになり、ダニーがもつ独特の芸術性と彫金技術によってニュー・ゼマイティスは、さらなる価値をもつことになりました。
こうして2年間におよぶひたむきな研究と努力、そして試行錯誤を経て、ニュー・ゼマイティスが誕生したのです。
現在Kanda Guitar Baseにあるプロトタイプは全てこの時期に試行錯誤された際に作られたもので貴重なものばかりです。


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