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トラスロッドの話

ギターのネックには「トラスロッド」という金属の棒が入っています。
外見からは全く見えないのでわかりませんが、トラスロッドはギターのコンディションを左右するたいへん重要なパーツの一つです。
見えないパーツであるが故に、長くギターを弾いているベテランでもトラスロッドに関しては詳しくない方が多いです。

・トラスロッドの役割
まずはトラスロッドの役割について説明します。

・ネックが反らないように矯正
スケールや弦のゲージにもよりますが、一般的に6弦ギターの場合、レギュラーチューニング時、ネックには40Kgから70Kg程度の張力が常に掛かっています。
木だけでは弦の張力に負けてしまうという訳では無いのですが、湿度や温度などの影響により、木はある程度動きます。
トラスロッドにはそれをある程度抑制する働きがあります。
コンディションによって順反り気味になる場合と逆反り気味になる場合とがありますが、ネックの中にトラスロッドを仕込むことで強度が増す為、そのどちらの力からもある程度動きを抑制することが出来ます。

・工場出荷時には調整済
もちろんどのメーカーであっても、工場出荷時にトラスロッドは適正に調整され、出荷されていますので、基本ユーザー側での調整は不要ですが、工場出荷時に張られているゲージと異なるゲージに交換する場合にはロッドの調整が必要です。
工場出荷時よりも太いゲージを張った場合には、順反りに、
逆に、工場出荷時に張られているゲージよりも細いゲージを張った場合には、逆反りになり易いです。

・固定ロッドとアジャストロッド
戦前に作られたギターなど、一部の特殊なものを除くと、たいていのギターにはトラスロッドが入っております。
SQネックと呼ばれる一部の固定ロッド内蔵モデルを除くと、どのギターにも「アジャスタブルロッド」と呼ばれるアジャスト=調整可能なトラスロッドがネックに仕込まれていることがほとんどです。

・アジャストロッドの種類
アジャストロッドの中には順反り時のみ補正が可能な
①1Way(片利き)アジャストロッド
と、
順反り・逆反り両方の調整が可能な
②2Way(ダブルアクション)アジャストロッド
があります。
またアコースティック、エレキギターとも、ハイフレット側から調整するタイプのものと、ヘッドストック側から調整するものとに分かれ、ハイフレット側から調整する(Fender系に多い)タイプにはネックを外さないと調整できないものと、弦を張ったまま調整可能なダイヤル式が存在します。
(アコースティックの場合はハイフレット側でもサウンドホールからアプローチ可能)

ご自身でメンテナンスを行う場合には、お手持ちのギターに上記のどのタイプのトラスロッドが仕込まれているかを把握しておく必要があります。
また、ロッドをどちらに回すと順反り方向に作用し、どちらに回すと逆反り方向に作用するのかも把握しておく必要があります。
一般的には時計回りが逆反り方向、逆時計回りが順反り方向のものが多いですが、例外が無い訳ではありません。
レアケースですが、個人的に中国製のギターでアジャストの左右が通常のものと逆のタイプを調整した経験があります。

・弦のゲージによって調整が必要
新品のギターや中古のメンテナンスギターを購入する場合でも、今張ってあるゲージと異なる弦に交換する場合には調整が必要です。
ゲージを変えることがわかっている場合は、希望のゲージの弦を用意し、そのゲージに合わせたネック調整をしてもらってから引き渡してもらうようにしましょう。

・回し過ぎに注意
アジャストロッドは45度程度回すだけでかなり大きくネックが寝たり起きたりします。
回し過ぎると最悪ロッドが折れてしまうことがありますので、くれぐれも回し過ぎには注意しましょう。

自信の無い方は自分でチャレンジせず、プロに任せることを強くおすすめいたします。
ロッドを折ってしまってからでは遅いですからね。


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