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【江戸ことば その24】茶にする

≪ 2011年、Facebookへの投稿 ≫
講談社学術文庫の『江戸語の辞典』(前田勇編)は1067ページもある大著で、約3万語を収録しています。
私は4年前(注:2006年秋)に「端から端まで読み通してみよう」と一念発起し、4か月半かけて何とか通読しました。今も持ち歩いては、「江戸の暮らしが目に浮かぶ言葉」「現代語の知られざる語源」「色っぽい言葉」を楽しんでいます。
1日に1語程度、ツイッターで紹介してきた江戸語を、Facebookのノートにまとめて採録してみます。
なお、カッコ内は私の感想・コメントで、編者の前田勇さんとは関係がありません。

「茶にする」

相手の言うことをはぐらかす。
愚弄する。

(…「茶」は冗談・無駄口のこと。ここから「ちゃかす」が生まれた)

文例・明和7年(1770年)
「何のかのと茶にしやぁがる」
2011年2月13日 Twitter投稿


『江戸語の辞典』を開くと、「茶」には冗談や無駄口という意味がありますが、どうしてだろうとページをめくってみました。
すると、「茶人」の項には、①茶の宗匠、愛好家のほか、②一風変わったものを好む人、ものずき、変り者という意味もありました。おそらく、このあたりから「茶」にあまりよろしくない語感が生まれ、「茶かす」と動詞化したり、「茶化し」と名詞化したりしていったのかな、と思いました。両方とも、辞典には出ています。

さらに、「茶る」という言葉もありました。「おどける、ふざける」という意味です。また、「ちゃら」は「ごまかし、でたらめ」を意味するのだそうで、「ちゃらかす」も辞典に出ています。

おそらくは「茶」から始まった語感が、今に残る「おちゃらかす」、「おちゃらけ」などに展開していったのだろうと想像しました。


「何度言ったらてめぇは……」
道楽息子に説教するのは、もう飽き飽きだ。庄兵衛は膝のこぶしをぎゅっと握った。
「まあまあ、おとっつぁん、そんなに怒ると血道が上がるぜ、大事にしねぇと」
言われて逆にかっとした庄兵衛は、「茶にするのも、いい加減にしろぃ」と大声を出した。

写真は今年5月、自宅の下を流れる川を父が撮影したものです。

24茶にする


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