うちにおいでよ 赤坂の話がしたい 8
「赤べこ」の2階には、座敷もあったが、まず6人掛けのボックス席に座った。「まあ、飲め」攻撃がすごい。カズマ以外、名前も顔も知らないのに。飲むしかない。
乾杯のたびに、繰り返す。
・福岡から来たばかりなんですよ!
・単身赴任です!
・勝海舟が大好きで!
……ほかに話題がない。
同席の人が、どういう人なのかもわからない。だが、「よく来た!」と肩を組んできたり、かなりフランクなのだ。完全に密閉・密集・密接。飲むしかない。乾杯!
赤坂に来てまだ数日、僕はほとんど自炊できないので、外食するしかない状態だった(ジャーもない)。ところが、どの店も高そうなので、ウロウロする。昼飯で1000円以下のお店は見当たらない。
そう、思い出したが、一番初めに入ったのは、赤坂見附のリンガーハットだった。なぜ赤坂に来て、長崎のチャンポン? まさに「田舎者あるある」だ。
数日で、一人で食べることに飽きていた。確かに、人寂しくなっていたのだけど、これは落差が激しい。はい乾杯!
「どの店も高そうで、どこで飯食ったらいいのかわからんのですよ」と言うと、聞きつけた4~5人が手を挙げて、「何だよ、うちにおいでよ」と声が上がった。
「焼き鳥やってるよ」と言ったのは、イハラさんだった。
「おれ、東福岡高校の出身だよ」
うわー、地元だ。「Birds」という焼鳥屋だという。
同じテーブルのニムラさんという女性も「うちに、おいで、おいで」。近くで「紫月」というお店をしているらしい。
やたらに元気なタマキさんは「タマキコウジです」と名乗った。冗談かと思ったが、「幸二」という漢字違い。名刺を見ると居酒屋「花丸」とあった。
テンション高く乾杯を繰り返していると、「あれ、神戸さん?!」と、声がかかった。
(2020年5月23日 FB投稿)