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【江戸ことば その22】塩断ち、塩物断ち

≪ 2011年、Facebookへの投稿 ≫
講談社学術文庫の『江戸語の辞典』(前田勇編)は1067ページもある大著で、約3万語を収録しています。
私は4年前(注:2006年秋)に「端から端まで読み通してみよう」と一念発起し、4か月半かけて何とか通読しました。今も持ち歩いては、「江戸の暮らしが目に浮かぶ言葉」「現代語の知られざる語源」「色っぽい言葉」を楽しんでいます。
1日に1語程度、ツイッターで紹介してきた江戸語を、Facebookのノートにまとめて採録してみます。
なお、カッコ内は私の感想・コメントで、編者の前田勇さんとは関係がありません。

「塩断ち」「塩物断ち」

神仏に願掛けして、ある期間、塩気のある飲食物を口にせぬこと。

(…近代科学のない時代。子の命を救おうと、人々は切ないまでに祈った)

天保9年(1838年)
「(天然痘の)ときなんぞは、おっかさんは塩物断ちをなさって」
2011年2月11日 Twitter投稿

何かを断って願掛けする。「何か」を断てば、苦行になります。塩味のしない食事は、ほんとに辛いでしょう。
例えば、家族の快癒を祈って、自分も苦しみに耐えることは、その人に寄り添うことでもあったでしょう。全く科学的でない、前近代的な心情に、私は心惹かれます。

実家のおっかさんが急な病との手紙をもらったおかねさん。
その日から塩物を絶ち、祈りを捧げたが、三日もせずにおっかさんは床を払えたってのに、ぐうたら惣領の兄は連絡を寄越さなかった。
知らずに半月も塩断ちしていたおかねさんは、腹を立てたのなんの。

写真は、ご先祖さんのお墓です。
「石祠型」という墓石の形式です。

22塩断ち


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