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わだちを踏むように

札幌演劇シーズン2024
ラスト2本でございます。

長い夏が終わりますね。
ライジングも終わりましたが、演劇はまだまだ引っ張ります!

撮影OKだった舞台セット。

演劇家族スイートホーム
2019年に3日間上演された演劇です。

わだちとは「同じ轍(わだち)を踏まない」と慣用句で用いられます。

家族というDNAの楔を断ち切って、親の真似などしたくない!!
父のわだちを踏むものか!
そんな思いからこのタイトルはあるようです。

以下 ネタバレを含みます。
ネタバレを読みたくない人は読むのは止めましょう。

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舞台は函館に近い民宿。花火大会がある為に宿泊客が集まってきます。
その中、東京から5年ぶりに帰省した民宿の娘。お腹がふっくらとしているのですが父は「太ったな」と言うだけです。
その父には妹が居ましたが、結婚して息子と夫を残して亡くなってしまったようです。
その残された夫には結婚したい元教え子だった恋人がいるのですが、息子に相談すると「きっも!騙されているでしょう」と反対の様子。妹のお兄さんに当たる「民宿たかの」の主に相談して息子と恋人がさりげなく仲良くなって結婚に賛成してもらえるように同じ屋根の下で過ごして花火大会を楽しもうと計画を立てたようです。
そこに花火大会を撮ろうと飛び込みのカメラマンが宿泊しに来ます。実はそのカメラマンは娘と結婚を許してもらう為にやってきた娘の男である訳で。劇中に未婚のカップルがドタバタし、そして結婚関係にある民宿の主とその妻、元教え子に恋する民宿の息子。主のお母さんであるおばあちゃんも姿は出てこないまでも話の重要な部分に刺さってくるので、人間関係が複雑化してしまいますが、舞台に立つのは一つのカップルづつ演じられているのですんなりと見ている側は話の整理が出来るようになっています。

許してもらえそうにない結婚をなんとかしようと奮戦します。

このお芝居は「海組」「花火組」と別れていてマルチエンディングなのだそうですが、私が見たのは「海組」で基本丸く収まったエンディングでした。

もし私が脚本を書く側になるのならば、もう一方はバットエンドか別なカップルが生まれるように話を作るでしょう。

認知症のおばあちゃんは病院に入っていてお父さんに暴力を働いてしまったので、結婚を認めてほしい娘はおばあちゃんに会いに行くのを止められます。自分を見ても息子だとわからなくなってしまった父はそのことで傷ついてしまっているので、娘にも同じ轍を踏ませまいと止めたのです。
娘は何故か反対されると思い込んでいるので、必死に隠そうとしますが、出産に待ったなし。

家族ってどこから?

結婚したら家族。
子供とはしばらく会っていなくても家族。
子供の顔を思い出せなくなっても家族。
まだ子供に認めてもらえなくても、婚約者も家族っぽい。

ホームドラマの脚本としてはバタバタコメディですが、北海道を舞台に地方と都市との距離感がリアルなので観客は感情移入が優しいようでした。

演劇家族スイートホームは現在(2024年8月HPより)9名の団員から構成され、私がこれまでの演劇を観た中では「博士と過ごした無駄な毎日」で本庄一登さんが出演されていたようです。旗揚げは2016年。全員参加型稽古が基本。家族みたいに言い合いながら演劇が出来たらとこの名前になったそうです。
劇団名から生まれた今回の「わだちを踏むように」。
家族をテーマとしたものでしたが、観客も自分の家族の晴れ舞台を観ようと駆けつけたであろう方々で溢れておりました、「私の息子をよろしくお願いいたします」と「民宿たかの」の主を演じた演劇ユニットサンデーボーイズ米倉拓斗さんのお父さんが客席から挨拶。

一番、ほっこりしてしまいました。

認知症になっても皆さん、病院や施設に家族に会いに来て下さいね。
スタッフとして入居者さんと首を長くして待ってますよ。

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