『数学ギョウザ』

“この皿の中には一つだけ数学ギョウザが入っていました。誰が食べたか当てたら、お代は無料!”
 と、4人で食べたギョウザの皿の底に書いてあった。

 ギョウザは全部で6つ。
 数学ギョウザを食べたのなら、ほんのり数学の香りがするはずだ。

 僕らは順に口臭を嗅ぎあった。

 まずはA君の口臭を皆が嗅ぐ。
「んー、なんともないな」
「うん、確かに臭わない」

 次はBの口臭を皆が嗅ぐ。
「普通だな」
「チャーハンの匂いがする」

 そしてCの口臭を皆が嗅ぐ。
「醤油ラーメン」
「コショウ振り過ぎ」

 最後に僕の口臭を皆が嗅ぐ。
「臭い!」
「わっ! ほんとだ! 臭いぞ!!」
「こりゃ臭いな。Dで決まりだ」

 僕は6つのギョウザのうち3つを食べていたから、数学ギョウザを食べた確率は一番高い。それに、ギリシャ文字のξクサイは数学でよく使われる。

 僕らは自信満々にレジへと向かった。
「数学ギョウザを食べたのは僕だ!」
「残念、違います」
 僕は何も言えなくなった。




(おしまい)

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カナヅチ猫
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