《アンダースロー考察3》"ストレート"を投げよう
はい。こんにちは。
アンダースロー考察シリーズです。
いきなり本題です。
オーバースローのストレートの認識は、ある程度野球をしていれば共通していると思います。
進行方向に向かって、フォーシームの逆回転がかかり、重力とは逆向きに揚力が働いた状態のボールですよね。つまり、重力によって沈みにくいボールです。
では、アンダースローのストレートとは、どういったボールでしょうか?
①オーバースローと同じ
②フォーシームの傾きがオーバースローと異なる
③上記の2つとはまた別のもの
素直に考えると、上記の3つくらいが想像できるわけです。
じゃあ、3つのうちどれがストレートなのか? と言われると、ストレートの定義は他の投法と共通でいいと思います。つまり、①オーバースローのストレートと同じ。
これは呼び名の問題であって、正直どうでもいいんです。
はい。じゃあ、アンダースローのストレートについての疑問とは何でしょうか。
まずはオーバースローのストレートの投げ方を考えます。オーバースローの場合、上から下に向けて振る腕に対して、手首と指先を真っ直ぐにして素直にリリースすれば、フォーシームストレートの回転をかけることができるわけですよね。
おおー、とても普通です。
じゃあ、アンダースローはどうか?
アンダースローは上体を倒して投げるため、腕の位置と地面からの角度が変わります。ご存知の通り、上から下に向けて腕を振り下ろさないわけですね。
ということは、アンダースローのストレートってどうやって投げればよいのでしょうか?
それでは考えていきましょう。
また補足として、ストレート以外の「直進系のボール」にも触れます(②軸の傾いたフォーシーム ③ツーシーム)。
結論から言いますが、僕は3種とも投げれる状態にしておくのがベターだと思っていますので、使い分け事例とともに参考にしていただけると良いと思います。
①オーバースローと同じストレート
もう一度おさらいです。
ストレートとは、進行方向に向かってフォーシームの逆回転がかかり、重力とは逆向きに揚力が働いた状態のボールです。
このストレートをアンダースローで投げる時の調整方法は次の3点です。
ボールの握り
リリース時の手首の角度
ボールの指先での弾き方
はい。それでは一つずついきましょう。
1.ボールの握り
まずは僕のストレートの握りについて画像を貼り付けます。
画像で分かるかどうか不明なので、多少解説を加えます。
1点目は、進行方向に対するボールの中心線から、握りの中心が少しズレていることですね。
具体的に言うと、中指側にほんの少しだけズラしています。感覚的にはボールの重心をキレイに支えるのではなく、中指側にずらして支えて握るイメージです。
これはリリースの際に、中指側が地面側にある事が多いため、ブレを中指で調整するのに使います。
(嘘でやってもらえると分かりますが、手首を真横にして、中指と人差し指を意識しながら軽く投げてみてください。人差し指でボールのリリース角度を調整するのはめちゃくちゃ難しいです。下で支えている中指の先で調整する方が自然なはすです。
※手首の角度については後述しますが、中指が下の位置となる点について条件は同じです。)
2点目として、薬指(小指)の位置は親指に近づけ過ぎなくていいと考えています。
先の理由と同様になるのですが、腕振りの際に支える役目として、地面側から支えてあげたいという意図があります。
極端な言い方をすると、こんなイメージです。
まとめると、リリース時に下側になる中指・薬指(小指)で支えれる状態の握りをしておく、という感覚でオッケーだと思います。
握りには手の大きさや、指の長さなど、身体的理由を鑑みる必要があるので、方針だけ参考にして色々試してみてください。
(参考までに、僕は手が小さく指も長くないです。そして握力も強くないです。)
2.リリース時の手首の角度
はい。来ました、鬼門です。
アンダースローでストレートを投げる時、手首って結局どの角度で投げてるの? という話ですね。
大馬鹿正直にアンダースローのフォームのまま腕振りをすると、手首は地面に対して垂直ではありません。身体が傾いてるんですから、腕も傾くし、手首も傾きますよね、当然です。
じゃあ、この傾いた状態がリリース時の手首の角度なのか??
そんなことはないです。みなさんの予想の通り、手首は立てます。
「手首の角度なんて意識してないよー、ストレートになるようにしてるだけ!」ってのが、僕の本音というか、感覚の部分なんですけど、実際に手首は立ってます。
ここで、「手首を立てる」って何? って話なんですけど、これは単純に考えて良いです。肘から手首を結ぶ直線と、手首から指先を結ぶ直線が、腕振り方向に一致しないという解釈で合ってます。
極端に言うと、こうです。
いや、そうなんですよ。
そうなんですけど、この「手首を起こした」状態でのリリース時に、手首から指先を結ぶ直線と地面が垂直か? と言われるとNOです。
たぶんなんですけど、無理です。
無理というか、上体を倒した体勢では、手首から先の角度に対する地面の角度を正確に認識するのは難しいです。
じゃあ、どうしているのか?
この点が前項からの繋がりです。ボールの握りを変えてるわけですから、重心をズラした握りと、手首を立てたリリースを組み合わせて、フォーシームストレートの回転軸を完成させます。
とても、とても注意なのですが、「手首を立てる」のは正しいと思います。しかし、極端なことはしない方がいいです。なぜならば、フォーシームストレートを起点にして、変化球を作っていこうとした場合、手首を立てまくった状態でバリエーションを考えるのが窮屈だからです。
(手首はある程度一定の状態で使える変化球が多いに越したことはないと思います。手首の変化はフォームの変化に繋がり、変化球がリリース前にバレます。球速の出ないアンダースローで変化球がバレるのは地獄ですよ、ほんとに。)
また、フォーシームストレートは球威がある方のボールですから、手首を立て過ぎることで球威が死ぬ可能性があります。(力を直線的に順に伝えていくのが難しくなるため。)
したがって、手首を立てるのは、リリース時の手首の角度を多少なりともオーバースローに近づけるため、くらいのイメージでいいです。
あとは、握りと合わせて、フォーシームストレートを投げる練習をしましょう。
3.リリース時の指先の弾き方
はい。3番目の指先で仕上げです。
前項の終盤で書いたように、フォーシームストレートって球威がある方が使いやすいんですよ。
だからですね、アンダースローでも球威があるフォーシームストレートを投げられるようになりましょう。
じゃあ、どうすればよいか?
僕はこの解決策として、中指のボールの弾き方で調整していました。具体的には? と言われると、解説は不能なんですけど、感覚的に書きますね。すみません。
僕が感じているのは、アンダースローの場合、リリース位置が打者に近けれ近いほど、手首が通常のオーバースローのように使えるので、球威が増すという事です。
まあ、当たり前のことなんですけど、この感覚ってアンダースローの場合はかなり重要だと思うんです。
遊びでアンダースローで投げていて、結局は強いボールを求め始めるんですけど、強いボールを投げれる理由は他の投法と同じなんですよね。
投球フォームで作った力を、指先のボールにいかに多く(大きく)伝えるか、という点において他の投法と同じです。
だから、アンダースローの場合でも同じ感覚を意識して、フォームで作った力をボールに伝える瞬間に、なるたけ大きな力が乗るように投げるべきです。
この感覚として大きいのが、より打者の近くでリリースする点に共通している、という意味になります。(副次的な効果として、打者の近くでリリースできれば、自然に手首は立っていきます。)
もちろん、正しいフォームあっての事ですが、感覚として、アンダースローでも指先で強く弾けた! という部分は追い求める方がいいと思っています。
ここで、じゃあ、どうしたらいいの?
という部分について、僕なりの考えを記します。
強いストレート、まず思い浮かぶのは対角線への強いストレートですよね。右投手なら右打者の外角低め──俗に言うクロスファイヤーなんて呼ばれることもあるボールです。
もちろん、対角線への強いストレートは必須だし、練習すべきです。これを抜きにするとアンダースローを極めたとはいえないでしょう。
では、それだけでよいか?
違います。全然よくないです。
右打者の内角低めにも強いストレートを投げましょう。
これがアンダースロー投手の壁の一つでもあると思います。
オーバースローの場合、前後に体重移動をするのが主ですから、内角外角についての投げ方の差はあれど目を見張るほど大きくありません。
アンダースローの場合、確かに前後に体重移動をするんてすけど、内角外角の投げ分けについては、オーバースローの感覚と異なります。
ここに穴があって、アンダースローの場合、腰の回転の強弱やリリースポイントの前後を使って、内角外角を投げ分けようとしてしまうことがあります。
確かに、腰の回転の強弱やリリースポイントの差で、内角外角の投げ分けは可能です。
しかし、問題はこの方法に頼り過ぎることにあります。
頼り過ぎると何か起こるか?
右投手が右打者の内角に投げる場合、
腰の回転を弱める
リリースポイントを早くする
さて、この二つを素直に実行すると、どうなるでしょうか? そのまんまです。コントロールは可能になりますが、球威が落ちます。
したがって、長々と書きましたが、フォーシームストレートを投げる場合は、内角も外角も同じように強い球威で投じれるように練習する必要があると思っています。
意識する部分は、オーバースロー等と同様に、フォームで作った力を、リリース時の指先に、内角外角関わらず伝えられるか、ということです。
練習方法は? と問われると種々あるのですが、一点はクロスステップする手があります。しかし、極端なクロスステップだと外角の制球時にめっちゃ身体がキツイです。ベストなステップ位置を探しましょう。
またステップ幅が小さくなり過ぎないように気をつけて下さい。ステップ幅が小さすぎると腰の回転とリリースポイントの調整に頼ってしまいがちになります。
アンダースローは、大きく踏み出して、体重移動が完了するギリギリまで上体を粘る、腕振りはオーバースローと同じように大きな力をボールに伝えること! です。
はい。
この辺を解説しだすと長くなるので、練習方法をまとめた記事を別途記載する予定です。意識する点として、まずは今回挙げた3点を覚えておいていただけると良いと思います。
まずは、内外角の投げ分けの際に、フォームとリリースポイントに大きな差がないか。そして、しっかりと打者の近くでボールを弾けているか。
この二点を意識して投球練習しましょう。
一応、この項の最後に一つ言っておきます。
いえ、断言しておきます。
アンダースローでも強いストレートで三振は取れます。
通常のフォーシームについての考察をひと通り終えたところで、直進系のボールの補足に入りましょう。
②軸の傾いたフォーシーム
これに関しては、「投げてもいい」が僕の見解です。①のストレートが投球可能になったら、手首を立てずにリリースすれば簡単に投げることができます。(何も矯正・意識せずに投げれる場合も多いと思います。)
ただし、超ただし──投げるのは難しくないんですが、正直、打つのも難しくないと思っています。なぜならば、軸は傾いているが「あまり大きく変化しない」特長が出る場合が多いからです。
これは僕も不思議なんです。フォームシームの軸が単純に傾いただけのボールでは、急激な変化が起こりにくいようです。流体力学や物理に詳しくないので、申し訳ないのですが、過去の体験と見聞から事実と考えてよいでしょう。
(おそらくですが、①のストレートを磨けば磨くほど、フォームシーム自体の球威が増します。一方で、変化球としての特性を失っていくからだと思います。)
もし、軸の傾いたフォーシームを使うとしたら、次の場面です。
(全て右投手を想定して記載します)
右打者のインコースで詰まらせる(あるいは三塁線にファールを打たせる)
右打者の外角に逃げていくように見えるが、実はボール球にならないコースに投げる(左打者のインコースでも同様)
逆に注意点は次のとおりです。
変化が小さいので空振りは取れない
右打者の外角甘めに投げると、変化してど真ん中に入りやすく、痛打されやすい
フォーシームストレートを知っている打者にしか使えない
はい。この三項目はめちゃくちゃ重要です。
フォーシームストレートを知らない打者からすると、(特に右打者には)自分側に軽く入ってくるストレートは打ちやすいだけです。
したがって、軸を傾けたフォーシームを投げる場合は、前後に通常のフォーシームを見せ球として使うなどして、フォーシームストレートとの違いを利用することは必須と考えます。
それでは、最後にツーシームの話に少しだけ触れましょう。(少しだけ、と書いたのは、僕はツーシームがとても好きなので、いつか特集として丸々ツーシームについて書きたいからです。)
③ツーシーム
ツーシームの定義を知らない方は調べてください。言葉で書くと、進行方向に対して逆回転をしており、回転方向に対して通り過ぎるボールの網目(シーム)を、通常の4つではなく2つにするボールですね。
はい。
ツーシーム、使えます。めっちゃ使えます。アンダースローの場合は武器にもなるし、バリエーションが増やしやすいです。
アンダースローの特長がより容易に使用できるのがツーシームだと僕は思います。
ごちゃごちゃ言わずに、僕が投げていたツーシームを列記します。
ⅰ 通常の縦回転のツーシーム
ⅱ 軸を傾けた回転のツーシーム
ⅲ 軸を地面と平行にした回転のツーシーム
ⅳ ⅲの回転数を落とした状態のツーシーム
4種類ですね。投げ方はこれまでの内容を読んでいれば分かりますが、念の為それぞれの投げ方と変化の特長をまとめておきます。
ⅰ 通常の縦回転のツーシーム
【投げ方】①通常のフォーシームから握りをツーシームに変えるだけ
【球質】フォーシームに似ているが、重力と風の影響を受けやすい。またリリースの状態によって、ナチュラルスライダーかナチュラルシュートする。
【使用できる場面】風の強い日に使うとなおよい。ナチュラルスライダーとナチュラルシュートの変化が読みにくく、打者が迷いやすい。芯を外すのに使う。
【注意点】ナチュラルに変化する先が自分でも不明な時があるのでコントロールしにくい。そもそもナチュラル系の変化なので、打者はミート可能。
ⅱ 軸を傾けた回転のツーシーム
【投げ方】②軸を傾けたフォーシームから握りをツーシームに変えるだけ
【球質】ナチュラルシュートする。軸を傾けきっていないため、球速と球威も落ち切らず、投げる人によってはカミソリシュートする。
【使用できる場面】(右投手の場合)
・右打者の内角に投げると面白いくらい詰まる。
・右打者の外角に投げると見逃し三振を狙える。
・左打者の外角に投げると空振りを狙える。
【注意点】右打者の内角でめちゃくちゃ変化した場合、デッドボールに注意。打者は避けれない。右打者の外角から真ん中で使ってしまうと、中に入る変化をするとタイミングがズレていてもバットで捉えやすい。
ⅲ 軸を地面と平行にしたツーシーム
【投げ方】①‐2で解説した「手首を立てる」ことをしないで──むしろ、手首を寝かせた状態で、ツーシームの握り方で投げる。
【球質】進行方向に対して、縦回転が加わっていないため、重力とは反対方向への揚力が少なく、沈み込みやすい。
【使用できる場面】(右投手の場合)
・右打者の内角に食い込むように投げると、笑えるくらいファールボールになりカウントが稼げる。
・右打者の低めに投げ、ワンバウンドになる程度にコントロールすると内野ゴロを狙える。(左打者も同様)
【注意点】高さを真ん中から高めに投じてしまうと、笑えるくらい変化しない。素人のソフトボールの投手の感じになって、バッターからするとトスバッティングをしているようなもの。つまり、めっちゃ打たれやすい。
ⅳ ⅲの回転数を落としたツーシーム
【投げ方】ⅲの投法と同じだが、ボールを握る際に指先を浮かす。また、リリースの際に「抜くように」投げてもよい。
【球質】シンカーする。風雨が強いとめっちゃ落ちやすい。
【使える場合】ⅲとほぼ同様であるが、空振りが取りやすい。また、球速が落ちているため、他の変化球に紛れて使うと、打者を惑わすことができる。(浮いてから沈む、アンダースロー独特の軌道のボールになる。)
【注意点】ⅲとほぼ同様であるが、スッポ抜けるとバッティングピッチャーの気持ちが味わえる。ホームラン級の当たりを生むこと間違いなし!
以上になります。
ここまで読んでいてお気づきかもしれませんが、アンダースローはツーシームを使いこなすだけで投球の幅がグッと広がります。
だって、今回は「ストレート」を題材として書いていたんですが、挙げた球種は既に6種類ありますからね。しかも、アンダースローの特長を使える球種も混ざってます。
とはいえ、説明の順番を今回のようにした一番の理由は、アンダースローでもフォーシームストレートを大事にした方がいいと僕が思っているからです。
メジャーリーグでは気持ち悪いストレートが重宝がられたりすることもありますが、僕は日本趣味野球プレイヤーだったので、ちょっと感覚が違うんです。
フォーシームストレート程度が投げられなければ、他のボールなんて手中に収めることができぬわ! と思っています。
関連した余談として、たまに、サイドスローやアンダースローに転向する理由として「オーバースローでストレートが投げられない」を挙げる人がいますが、個人的には理由にならないと思っています。むしろ、致命的なんじゃないかと思います。
僕が言っているのは「ストレートは綺麗なフォーシームストレートでなければならない」ではありません。「フォーシームストレートを自身で投球可能な程度には、ボールに回転をかける方法が分かっていないと、他の変化球を投げる工夫に苦労するよ」という話です。
はい。最後に、今回はやたらボールの回転の話をしましたが、自分が投げたボールの回転を目視するのは難しいです。
最近はすげえシステムのボールもあるようですが、趣味野球の程度であれば、ボールの網目にマジックで色を塗っといてください。めっちゃ回転が見えますから。
あ。でもでも、油性マジックで塗りたくると、ボールが変に重くなるから注意してくださいね。リリースの時に気がつくはずです。もし気づかないのであれば、気付けるくらいにはリリース時の指先の事を考えてみてください。
長くなりましたが、以上で終わります。
本記事は僕の経験と知見に基づく単なる考察記事であり、身体的特長の考慮に乏しいことや、学術論文を参照していない点をご承知おきください。
おしまい。またね。
僕の書いた文章を少しでも追っていただけたのなら、僕は嬉しいです。