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不動産投資のお話 -インパクト投資とは

金澤幸雄です。

近年、不動産投資の世界でも「インパクト投資」という言葉を耳にするようになってきました。
インパクト投資とは、金銭のリターン(投資回収金額と投資金額の差、いわゆる経済的な利益のこと。財務的リターンとも言い換えられます)を得ることと同時に、社会的・環境的な多くの課題に対してポジティブあるいはネガティブな影響や変化(=インパクト)をもたらすことを目的とする投資行動のことを言います。

「インパクト」と聞くと、何かセンセーショナルな出来事や衝撃的な事柄などを想像してしまいそうですが、不動産を含む投資におけるインパクトとは「短期か長期かを問わず、人や地球に対する影響や変化」のことです。一般的に言われるような、ショッキングな何かではありません。

このインパクト投資という言葉は、2007年にアメリカの慈善事業団体・ロックフェラー財団が主導して開催した国際会議で初めて使用されたといわれています。その後、2015年9月に国連総会で設定された「SDGs(持続可能な開発目標、Sustainable Development Goals)」などによって、環境的、社会的な課題が世界レベルで意識が高まっていくこととなりました。そのほか、2015年に採択されたパリ協定に基づく気候変動問題からのエネルギー源の脱炭素に向け、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」を掲げた取り組みが加速していることなどがきっかけで、インパクト投資への注目が高まっています。

つまり、インパクト投資とは、企業・団体などへの投資で、リターンを得ながら社会的・環境的なインパクトを生み出すものを指します

インパクト投資は、主に以下の4つの要素を満たしたもののことを言います。

(1)インパクトを生み出す意図があること
投資家自身が、投資を通じて社会的・環境的なインパクトを生み出すという意図をもって投資を行っていること。これは、インパクト投資の最も重要な要素です。

(2)財務的リターンを期待する投資であること
社会的・環境的なインパクト創出はもちろんですが、一般的な投資と同様に財務的リターンを生み出すことを目指している点で、インパクト投資はリターンを求めない寄付行為や助成金などとは全く異なります。リターンの割合は投資家によって判断が異なりますが、少なくとも元本の回収を最低限の目標としています。

(3)投資対象となるアセットクラス(各金融資産の分類)の範囲が広いこと
インパクト投資の対象となるのは、伝統的4資産と言われる国内株式、国内債券、外国株式、外国債券に加え、不動産投資信託(REIT)、保険、リースなど、多様な金融資産にわたります。

(4)インパクトの評価を行うこと
インパクト投資は、(1)インパクトを生み出す意図があること とあるとおり、その投資が社会的、環境的なインパクトを生み出せたかどうかを測定し、可視化し、表明していく必要があります。世界に目を転じてみると、評価の共通化に向けて世界銀行グループの一員である国際金融公社(IFC)、グローバル・インパクト・インベスティング・ネットワーク(GIIN)及び主要なインパクト投資家が、共通インパクト指標(Joint Impact Indicators - JII)を公表するといった動きも出てきています。

金澤幸雄

Photo by Unsplash Blake Wheeler

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