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「働くって、なに?」を、全国の農業高校生たちと。ーこれからの「働く」を考える③

夏に打ち合わせたとき、但馬農業高校の「日本学校農業クラブ全国大会」実行委員のひとりが「エヴァ好きなので、エヴァ風だとテンション上がります」と可愛く言ってくれたんだ。なのでおばちゃん見よう見まねで作ったけど、実はエヴァは「シン・エヴァンゲリオン劇場版」しか見たことないんだよ。なのでアレだその、不器用な母ちゃんのキャラ弁だと思ってくれ……という当日配布資料(↓)を用意しつつ。

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実は毎年どこかで、全国の農業高校の「甲子園」が行われている。今年は兵庫県。但馬地方の養父市の八鹿町にある但馬農業高校では、「クラブ員代表者会議」が行われるのでした。……って、読めました? 「たじま」地方の、「やぶ」市の、「ようか」町です。神戸から特急で2時間半。新幹線に乗れば横浜に着く時間をかけて、GO!

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▶「将来に希望が持てないんです」

私は、パネルディスカッションのモデレーターを任されていた。高校生が考えたテーマは「農業で稼ぐ。」 なぜ? 「親とかまわりを見ていて、農業で食っていくとか、イメージというか希望がもてなくて…」 わかった。んじゃ、農業の”外”から農業の可能性を見出し、自分で新しい仕事をつくってきたひとたちに、会ってみよっか。

ということでお声がけさせていただいた、ゲストの(パンチ効いてる)方々。(左から。真ん中は私)

★【ブランディング×農業】鵜殿麻里絵さん(株式会社エムズブランディング 代表/ひょうご観光大使/老舗料亭「松廼家」四代目女将)
★【IT×農業】眞野方仁さん(一般社団法人スマートな島ぐらし推進協議会 理事/株式会社フィールドコム 代表取締役)
★【流通×農業】光岡大介さん(ファームアンドカンパニー株式会社 代表取締役/兵庫食べる通信 編集長)
【ブランド化×農業】小田垣縁さん(八鹿畜産養豚部 オールラウンダー)

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(体育館入口。鵜殿さんのルブタンのヒールも、湯川の地下足袋も、スリッパに履き替え~)


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会場と、Sli.doでやりとりしながら、進行していく。さて、まずはみなさん、今日はどこから? 「島根」「秋田」「佐賀」「青森」「沖縄」……おおおおおー。但馬まで、ようきんさった!


▶「その時は絶望でしかなかったけれど」ーゲストへの質問①【えらいこっちゃ】:大ピンチや大失敗は?

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●「みなさん、町を歩いていて、『このあいだできた店、一年もたなかったね』ということあるでしょう? あれが、僕です」という光岡さんの衝撃告白からスタート。進むも地獄、引くも地獄。結局、半年で2,000万円の負債。でも、ずっと見ていたひとが支援してくれたのだって。

●兵庫県でいちばん古い、創業104年の老舗料亭「松廼家」は、第二次大戦の神戸空襲で砲火を浴び、阪神淡路大震災で全壊し、25年後にコロナで大打撃。その度に、不死鳥のように甦ってきた。四代目女将の鵜殿さんは昨年、明治時代の邸宅に料亭を移転。って、どの時代より立派になってるやん。

●ドローンからスマートグラスまで駆使して淡路島の農業を進化させる眞野さん。最初は、独立をすすめられた会社がいきなり掌返しで、「あいつとは取引するな」と周囲に圧力。注文入っても仕入れができない。でも、その露骨な嫌がらせがむしろ業界で話題となり、新しい取引のきっかけになった。

●祖父が養豚業を始めた小田垣さんは、業界で「当たり前」とされていた、大手メーカーが牛耳って、まるで下請けみたいになってる業界に異を唱えて独立宣言。廃業寸前まで追い込まれながら、日本最後の八鹿豚保護という観点で違う業界から注目を集め、仲間ができて、ブランド化にこぎつける。

みんな、ギリギリまでいってんなー(ちなみに湯川も、創業1年でほぼ経営破綻させてます)。それぞれ壮絶すぎて、大笑い。
でも、みんな言います。「あれがあったから、いまがある」と、ものすごく肯定的に。もちろんその時は、絶望でしかなかったけれど
そして、みんな言いました。「誠実に商売やっていたら、ピンチの時に、必ず助けてくれる人が出てくる」と。いや、ほんとに全員が言っただよ。


▶「私は秀でたところもなければ、勇気もありません。どうしたら…」ー質問②【これだけは、負けへん】は?

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パネラーのみなさんに「あなたが『これだけは、負けへん』ところは?」を聞いているうち

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(小田垣さんは豚ちゃんの言葉がわかります。絶対本当)

会場の高校生からSli.doで「私は秀でたところもなければ、勇気もありません。どうしたらいいのでしょう」と質問が寄せられました。

そこで私はガバと立ち上がる勢いで言ったのでした、

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「『秀でている』って、誰かと比べとるやろ? 見てみ。ここのおばちゃん・おっちゃんら、自分を誰とも比べてないで。思い込んだらええねん」


みんな、いっぱい失ってきた。誰だって最初から格好良い経営者になりたかったさ。最初から経営を軌道に乗せたかったさ。最初から誰かを幸せにしたかったさ。

だけど、ぶち当たったんだ。世の中の不合理に。圧力に。正論が通らないことに。
そして、直面したんだ。自分の力不足に、自分の不甲斐なさに、自分のあまりのちっぽけさに。

そうして、失うものがもう何もなくなったとき、「それでも諦められない」小さく弱っちい自分が真ん中で震えていることに気づいたとき、立ち上がるんだよ。開き直るんだ。……つか、開き直るしかない。すると不思議なもので、そういうウソのない経営者のところに、人もお金も集まってくる。世間はバカじゃない。ちゃんと見てる。

だいじょうぶ。勇気なんて、必要になったら湧いてくる。だから、これから先の人生で、大失敗したり、困難に直面した時に、よかったらちょっと思い出しておくれ。「あー、しんどいなー。でもなんか、『失敗はチャンスや。開き直ったら楽しくなるで』ってアホみたいなこと言うてたおばちゃん、おじちゃん、おったなー」と。


▶「稼ぐのは手段であって目的ではないんだね」アホな大人たちー質問③【これからの夢】?

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とかく大人は教えたがる。学生相手だと、とくに。スマホの使い方だって、学生の方が上手なのにね? なのに長く生きているだけで、したり顔で、若い人にはあーせいこーせいって先輩面して言える気がしちゃう。

だから私は、「まだまだ自分がプレイヤーとして挑戦し続ける大人」に会ってみてほしかった。なので今回も、パネラーのみなさまの夢を聞いたのでした。んで聞いてみると、みんな、アホほど壮大で。(ちなみに私の夢は、「革命」です)


「ビジネス」とか「稼ぐ」というと、どうも高校生には、「アガリを取りに行く」というイメージが強かったみたい。でも実際には、地道に規模を拡大しつつ、少しずつ多くのひととより多くの幸せを実現できるように事業をしてきているひとたちにとっては、「ビジネス」=「挑戦しつづける」の方が合っているなと感じます。

アガリ(=稼ぐ)はその手段であって、目的ではない。たぶん、学生のみんなは逆だと思ってたんだろうな。ビジネスって、儲けるためにやるものだとイメージしていたみたい。ちゃうねん。ビジネス(事業)を続けるために、稼ぎもつくるねん。なぜならそのビジネス(事業)は、そのひとの夢そのものだから。


▶但馬牛1頭丸焼き、の代わりに。

ディスカッションの最後、私は会場の高校生たちに伝えました。「一緒に、対等なパートナーとして、おもろい仕事しようぜ。社会に出てくるのを、待ってるよ」と。

……と言いつつね、まあ、そんな中身は覚えてはないと思うのよ。でもね、あの日、真白な雲海たなびく篠山口を抜けて、目に沁みるような秋晴れの青空が広がる但馬の高校に行って、なんやしらんけど、おもろそうに生きてるおばちゃんやおっちゃんたちがおったなあ、と。
そんで、農業って最高やで、あんたも好きなことやりや、なんぼ失敗しても死なへんかったらぜんぶチャンスやとか、わけわからんこと言うてたなあ……と、ぼんやり記憶に残ってくれれば充分だと思うのです。


本当はこの日は、但馬農業高校が誇る、校内で100頭以上飼育する(って大規模農家以上!)但馬牛ーつまり神戸ビーフのもとが、1頭丸焼きで振舞われる予定でした。

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(但馬牛は、全国の黒毛和牛の99.9%のルーツなのだって)

が、あいにくコロナで泣く泣く中止。かわりに、A5ランクにこってりした話になってたらいいなあと願ってます。


以上、高校生の「働くって、何?」という質問に対する、5人の社会人からの答えでしたー。さ、2時間半かけて神戸に帰るぞ。ひろいな!兵庫。

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(特急コウノトリ号には明智光秀。実は「ひょうご観光大使(他はゆるキャラ「はばタン)のみ」の鵜殿さんと、実は兵庫県広報アドバイザーの湯川でしたー)

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