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#大江健三郎

【読書会後】一見無造作な物語の中の権力構造、エロティックさーーー大江健三郎・シュルレアリスム

大江健三郎の『死者の奢り・飼育』を読んで、読書会をした。 シュルレアリスムの展示を観たといっても、我々の読書会は読書をするだけではない。 まず行った先は板橋区立美術館。芸術も愉しむのである。 館蔵品展として「もっと魅せます!板橋の前衛絵画 シュルレアリスムとアブストラクト・アート」をやっていた。 板橋区立美術館では今年2024年3月〜4月にかけて「『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本」という企画をやっており、その続きとして今回の展示をやっているようだっ

スマホと弁当:大江健三郎の『死者の奢り・飼育』を読んで

会社の昼休みに弁当を食べる。箸をにぎった手でそのままふたを開け、箱につめられたご飯を箸の先でちいさく区切り、ひとつを掴んで口に運ぶ。 同時に、左手でスマホを開き、ツイッターを見始める。何を見ようとするわけでもなく、目に飛び込んでくるツイートを流し読みする。 ご飯を箱の半分ほど食べたところで、ふと米粒のかたまりが、箱の外に落ちているのに気づく。 新潮文庫の『死者の奢り・飼育』(1959)は、大江健三郎の最初期の短編を集めた作品集である。 読書会のために、読んでみた感想をまとめ