爆笑問題・太田光の優しさ
4月23日深夜に放送された「岡村隆史のオールナイトニッポン」でのナインティナイン岡村さんの発言。翌週4月30日、相方の矢部さんによる公開説教。それを受けての5月5日「爆笑問題カーボーイ」を聞いて思った事。
それは「やっぱり太田光は優しいな」って事です。
番組内で印象的だったのが「岡村はリスナーに寄り添ったんだよ」って言葉。「つらい思いをしてるリスナーに対して何とか力づけたいって思ったんだよ」。
そう言ってる太田光自身が、岡村隆史に寄り添い、貧困にあえぐ若者に寄り添い、性暴力にさらされる女性に寄り添い、いい年して彼女もいない、結婚もできない人たちにも寄り添ってる。
聞いてる人はみんな思ったはず。
「俺の事を言ってくれてるんだ」
「私の事を言ってくれてる」
「ワシの事を言ってくれとる」
「ボクの事を言ってくれてまちゅ」
すべての人の立場に立って、すべての人に寄り添う。なんでこんなに弱者の立場に立てるんだろう?なんでこんなに弱者の気持ちがわかるんだろう?
人生の成功者、世間的に見れば強者のばずなのに。
爆笑問題とは同じ芸人としてほぼ同時期に活動を始め、途中から私の方は「お笑いをやめてミュージシャンになる!」と芸人を引退。その時に一番反対してくれたのが太田光でした。
「バーカバーカ。なんでお笑いやめるんだよ。せっかく売れたのにもったいねーだろ。音楽とお笑いとどっちもやりゃいいだろ。バーカ!ミュージシャンになったって絶対に売れねーよ、バーカ!」
彼なりの最大級の優しさ。
でもその当時は「お笑いと音楽のフタマタはかけたくない」と、はき違えたピュアさで、芸人生活にピリオドを打ちました。
そしてミュージシャン宣言はしたものの、その声は誰にも届かず、鳴かず飛ばず飲まず食わずの貧困暮らし。片や爆笑問題の方は飛ぶ鳥を落とす勢い。どころか落とされた鳥さえ飛ばす勢いで、テレビのど真ん中へ羽ばたいて行きました。格差は広がるばかり。
「もう俺のことなんて忘れてるんだろな。別の世界の人になっちゃったんだろうな」って思ってた頃に読んだのが、太田光の書いた小説でした。タイトルは「マボロシの鳥」。
読んだ事あります?
マボロシの鳥を巧みにあやつり大人気を博した芸人。とある事件からその鳥を手放してしまい、それ以降は舞台に立つことも、人前に立つこともなくなり落ちぶれていくっていうお話。
その小説の後半、人目をさけるようにバーの隅っこに座って飲んでる元芸人。それを偶然見つけた、昔彼の大ファンだった中年男。この二人の会話のシーンが忘れられません。
緊張しながらも話しかける中年男。
「ねえ…あんた、天才芸人の…チカブーだろ?」
めんどくさそうに答える元芸人。
「…昔はな」
それからいくつかの言葉を交わし、大ファンだった中年男は、言葉を選びながらも意を決してチカブーに言います。
「俺は、あなたにもし会うことがあったら、これだけは言いたいって思ってた。…もし、あなたにどこかで会うことがあったら、もう一度、舞台に立つべきだって言おうって…」
その後に添えられた一文。
『「もう一度舞台に立つべきだ」。それこそ、この落ちぶれた芸人が、世界の隅っこにしかいられなくなってからずっと、誰かにそう言ってほしかった一言だった。』
ここ読んで、涙ドバババババー!号泣!落涙!「これ俺だ!俺の事だ!落ちぶれた芸人って俺だー!」「なんでこんな気持ち分かるんだよ。落ちぶれた事もないくせに!」
その後何年かが過ぎ、ふとしたきっかけで爆笑問題主催の「タイタンライブ」を見に行き、打ち上げで再会した時の太田光の言葉がこれです。
「バーカバーカ!やっぱりミュージシャンになったって売れなかったじゃねーかバーカ!ライブなんか見に来てんじゃねーよバーカ!」
18年前とまったく変わらない言葉。まったく同じトーンで「バーカ」連呼。そして…
「ライブ見にくるんじゃなくて。ライブ出ろよ。ネタやれよ!バーカ!」
そして実際にタイタンライブに出演。落ちぶれた芸人ヒデブーは少しずつ活動の幅を広げて行くのでした…。
すべての人に寄り添う太田光。強者のはずなのに弱者の気持ちが分かる男。テレビの中では強者でも家庭の中では弱者。絶対権力者、光代社長に支配され、お小遣い0円の生活を送る男。そんな事を思いながら、改めて「爆笑問題カーボーイ」を聞き直してみました。
「いい年こいて、50にもなって結婚できない、そんなヤツもいっぱいいるんだよ!」
あ、これ俺だ!俺の事だー!
太田光は…優しい。
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