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浅草芸人列伝 この芸人はスゴイ!〜コント山口君と竹田君

【漫才協会所属。誰よりも舞台袖で他の芸人のネタを見てきた男が綴る意外な芸人のスゴイところ】

今回ご紹介するのは、コント山口君と竹田君。芸名が山口君と竹田君なので先輩なのに君付け。たとえ年上の先輩でも「木村君」「中居君」と呼ぶジャニーズ事務所と同じシステムです。

お二人を初めて見たのは日本テレビで放送されていた「お笑いスター誕生」。舞台のセンターに立ち「竹田たかとし。27才。会社員」と自己紹介していた竹田君が今や「竹田たかとし。40才…くらい」と自己紹介しています。いつの間にかボクより年下に!

とにかくこの竹田君、天才です。
まず体型がすでに面白い。胴体に比べて極端に短い手足。胴体に比べて極端にデカい顔。胴体に比べて極端に噴き出す汗。すべてが面白い。見た目が天才です。

舞台上では相方の山口さんに突っ込まれ、いつもアタフタしてますが、舞台を降りてもアタフタしてます。ある日楽屋でアタフタしてるので「どうしたんですか?」って聞いたら「いやー、今日新しいボケを三つ入れなきゃいけないんだけど覚えてられるかなー、大丈夫かなー」とアタフタ。

舞台を終えて帰って来ると「いやー、新しいボケ三つ言えたけど、元々あるボケを五つ入れ忘れて、時間早く終わっちゃったー」天才です。

去年の正月に一緒にイベントに行ったときも「写真撮るの?じゃあ帽子取らなきゃ。あ、帽子じゃないや、間違えた。マフラーだ、マフラー外さなきゃ」と言いながらマスクを外してました。天才です。

ある日の浅草東洋館。他の芸人たちと談笑してると隣の楽屋から大声が。「何やってんだよ!」「そんな言い方しなくたっていいじゃないですか!」ケンカだケンカだ!誰だ誰だ?おぼんこぼん師匠か?

あわてて駆けつけると山口さんと竹田君がネタ合わせしてました。「いやー、本気で声出さないとネタ合わせ出来ないんだよねー」常に全力。何をやっていても山口さんが「竹田、ネタ合わせやるぞ!」と言えば「ハイ!」と付いていく忠実な犬、竹田。

そんな二人が出会ったのはストリップ劇場。
山口さんが他の人とやっていたコントをお客として見に行っていた竹田君。
ある時、楽屋を訪ねたそうです。

まだ自分のオモシロ体型やオモシロ顔に気づく前の竹田君。まったく似合わない長髪姿。その風貌のまま、目いっぱいカッコつけた口調で山口さんにこう言い放ちました。

「君たちのコント面白いねー。ただひとつだけ君たちに足りないものがある。それはボクという存在だ」ド素人が上から目線の入団希望。

この発言にカチーンと来たものの、竹田君の中に隠されたオモシロ成分を嗅ぎ取った山口さん、入団を了承。そして竹田君初舞台の日、ある計画を決行します。まず竹田君を先に舞台に登場させ、次にきっかけとなるセリフを言ったら山口さん登場。その段取りを無視し、いくら竹田くんが助けを求めても舞台に出ない。竹田ひとりぼっち。

あせりだす竹坊。今ならキャラクターも浸透して、アタフタしてるだけで笑いになりますが、当時はただの素人。何も出来ず、ただただ舞台の恐ろしさを知ったそうです。そして山口さんがいないと自分は何も出来ないという事も。二人の主従関係が決まった瞬間です。

「竹田ネタ合わせるぞ」「ハイ!」「竹田帰るぞ」「ハイ!」時々「ハイ!」の声が「ワン!」に聞こえる時さえあります。忠犬タケ公です。

自粛期間中もリモートでネタ合わせ。山口さん曰く「普段はネタの事しか話さないんだけどさ、この期間で色々他の話もしたんで、お互いの距離が近くなった気がするよ」ああ、何というペット愛、いやコンビ愛!おぼんこぼんに聞かせてやりたい!

そして自粛明けの浅草東洋館。飛沫防止のためフェイスシールドを付けてコントをやったお二人。開始早々、竹田君のハアハア言ってる息でフェイスシールドが曇って、顔が全然見えない。それがめちゃくちゃ面白い。口から吐き出される息さえ天才だ!

竹田君は…スゴイ!



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金谷ヒデユキ
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