浅草芸人列伝　この芸人はスゴイ！〜青空球児師匠

2020年6月10日 16:10

【漫才協会所属。誰よりも舞台袖で他の芸人のネタを見てきた男が綴る意外な芸人のスゴイところ】

さて本日ご紹介するのは青空球児師匠。言わずと知れた漫才協会会長。漫才協会のトップ。ミスターゲロゲーロ！

師匠には浅草東洋館での舞台後、よく飲みに誘われてご一緒するのですが、これがまあ、めちゃくちゃ優しい。

「おい金谷、コノヤロー、何飲む？何飲む？遠慮すんじゃねーぞ、バカヤロコノヤロ、好きなもん頼めよコノヤロー、何食う？何食う？ここはポークソテーが美味ぇーぞコノヤロー！マグロ食うかマグロ食うか？」

言葉使いと内容のギャップがスゴイ。まさしくギャップ萌え。
口調はアメとムチのムチの方に聞こえるけど、舐めてみたらムチが甘い。
アメで出来たムチで優しく叩かれてるよう。

そんな優しい球児師匠も昔は相当ヤンチャだったみたいです。

1965年に青空球児・好児を結成し、コンビ歴は今年で55年。
しかしそれ以前の経歴がスゴイ。

1960年代に活躍したお笑い第一世代。特に人気があったのは「脱線トリオ」から「てんぷくトリオ」と続く「トリオブーム」の人たち。その中で「ナンセンストリオ」「トリオ・ザ・パンチ」「トリオスカイライン」という3つのグループに在籍していたのが球児師匠なのです。

今で言うなら「四千頭身」と「ハナコ」と「ネルソンズ」にいた球児師匠。スゴくないっすか？

「俺がいる時はどのトリオも売れねーでよー、俺が辞めると売れるんだよ。嫌んなっちゃうよコノヤロー」
辞めた理由は全部金がらみ。
「前借りさせろって言ってもさせねーんだもん。そりゃ辞めるよバカヤロー」「だって前借りしなきゃギャンブルできねーじゃねーかコノヤロー」

だんだんヤンチャっぷりがあらわになって来ました。そうです、球児師匠はかなりのギャンブラーなのです。貰ったギャラは全額ギャンブルにつぎ込み、仕事しないうちからギャラを前借り。あればあるだけ使っちゃう。

「あるとき師匠のコロンビア・トップの衣装をよー、質に入れてその金ギャンブルにつぎこんじゃったんだよー。そしたら破門だよバカヤロー」

♬師匠の衣装を少々使用～。これがラップだったら韻を踏んでテンションも上がるところですが、実際にやったらそれはクズ。マンガ家の福本伸行作品で言うならリアル・カイジです。球児・好児ではなくキュウジ・カイジです。地下帝国行きです。

マンガ同様、破門されたキュウジは名古屋へ。そこでほとぼりがさめるまでテキ屋生活。こんどは車寅次郎の匂いがしてきました。

「そん時の仲間が今出世してよー。偉いさんになっちゃったんだよ。だから名古屋行くとみんな頭下げるよー」各方面で愛されるキュウジ。ざわざわざわ。

さあこんな全身ギャンブラー、ナチュラルボーンギャンブラーな球児師匠ですが、こと女性に関してはマジメ。奥さんひとすじ。

「帰ってからカミさんと焼酎飲むからよー、ビール3杯までって決めてんだよ」愛妻家です。

「バカヤロ、コノヤロ！好児と一緒にするなよ。あいつは女好きでどーしょもねーんだから。ネタの稽古しててもイイ女が通るとスーって目がそっち行っちゃって稽古になんねーんだよ」

若い頃ホリプロにいた球児・好児師匠。女性関係のマジメさをホリプロの社長にも信頼され、アイドルたちの話相手になっていたそうです。

「（山口）百恵とか（森）昌子とかよー、『球児さん、球児さん』って懐いてよー、めんどくさかったよバカヤロー」羨ましい限り。ジャニーズの手越君を先取りしたキャバクラ球児だ。

「好児師匠はめちゃくちゃ女好きなのに球児師匠は全然そーゆうのなかったんですか？」「ねーよ」「え、何でですか」「そりゃ俺はよー、あそこが小せえんだよ」「え？」

「俺はチンコがちいせーんだよ！コノヤロー！だから自信がねーんだよー！」

ギャンブラーなのに後輩の私に手の内見せまくる球児師匠。隠し事いっさいなし。オープンリーチ。正直すぎて後輩の目から見ても可愛い。

師匠を見てると「最終的に芸人に必要なものって、可愛気、愛嬌だな」って感じます。

最後に球児師匠がいない時に聞いた、55年間コンビを組んで来た相方、好児師匠の言葉。

「球児さんとはさあ、まあ色々あって苦労したけど、コンビ組んで良かったと思ってるし、文句言った事もないよ。だって…芸はあの人の方が上だもん」芸人として先輩である球児師匠を今でも尊敬し続ける好児師匠。

そう言いながら自分の首を上着の中に引っ込め「でも球児さんのアソコはこうなってるの」と嬉しげに語る好児師匠。

コンビって…スゴイ！

金谷ヒデユキ

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