月の旅路

ころんと。月が、転がっていた。

なんとも愛らしく、ころころと右に左に揺れる様に、私は興味を持った。

見ていると、ずっとその様に揺れているのだ。なぜだろう。

見ていると、触りたくなった。

さぁタイミングを図って、今だと指を伸ばした。

少しひやっと、つるっとが感覚として残った。

見ていると、私の手でも転がるのか試したくなった。

今だ。とんっ 軽く手と接触して月はころころと転がっていく。

どこに行くのだろう? それは止まらない。

追いかけて行くと、月はとうとう海に落ちてしまった。

ぽちゃんと、だ。

見てても沈んで浮かばなくて、私はとうとう家へと帰った。

次の日。夜空の月と出会った。

なんだ。帰ったのか。

ん?そういえば、月が愛らしく転がっていた時は、ここはまだ昼間だった。

もしや海に沈んで、反対側へと着いて、夜空に帰り、またここへと月は来たのかい?

そう思うと、そりゃ随分な旅だったねぇ。

見上げると、月は素知らぬ顔でぼんやりと光っていた。

はて。あの愛らしさは、どこへやら。

end

読んで下さった方が自然にサポートしてみたい、と思ってもらえる様な文を日々書いていきたいです。頂いたものは彼方が日々生きるのに有り難く使わせてもらいます。