「男が痴漢になる理由」感想
こんにちは。
今回斎藤章佳さんの書かれた「男が痴漢になる理由」読み終わったので感想を書いていきたいと思います。
痴漢をする人ってどんな人なのか
皆さんは痴漢と言われて何を思い浮かべますか?
冤罪?欲求不満?女性をモノとしか思わないクズ野郎?
本書では痴漢を犯して逮捕された人たちを治療する施設で働く著者だから見える本当の痴漢とはどんな人なのかを教えてくれます。
私の中で痴漢をする人は欲求不満で露出してる女性を見たら性衝動を抑えきれなくなる猿のような人間だと思っていました。だけどそうではなく、本書では彼らは日頃のストレス解消や平凡な人生に刺激を求めるために痴漢をしている、と書かれていて非常に驚きました。
もちろん何の罪もない女性をストレスのはけ口にするなんて虫唾が走りますが、痴漢をする人はただのイカれた変質者ではなく、私たちと同じようにストレス社会にまみれている人間であり、そしてそのストレスを間違った形で解消してしまっている可哀そうな人達なんだと気づけました。
痴漢はどうやったら減るのか
私が一番驚いたのは、「痴漢はアルコール中毒や薬物中毒と同じで依存症であり治療が可能」という部分です。
痴漢は依存性のある行動で、実際にやめたくてもやめられない人も多数いるのだそうです。そこで何が大事になってくるのかというと、ちゃんとした治療を受け、再犯をしないように努力していくことです。
ですが痴漢をする人が自ら治療を受けに診療所の門を叩くわけもなく、逮捕されてから治療に来るケースがほとんどのようです。
治療は薬物治療(性的機能を低下させて性衝動を起こしにくくする)や患者同士(性犯罪を犯した人たち)のグループワークなどにより、偏った考えを時間をかけて矯正していき、最終的に再犯をなくしていくというプログラムで行います。
偏った考えとは、「女性も痴漢をされて喜んでいるはず」「露出の多い服を着ているのは男に触れてほしいから」などといった痴漢を正当化するような考えのことです。
そのような考えをグループワークでの会話やお医者さんとの面談でゆっくりゆっくり少なくとも三年以上かけて矯正していき、また満員電車などの痴漢をしてしまう環境を避けたりなどの工夫をしながら成し遂げていくとても気の遠くなるような治療です。
また、著者は本の中で「示談金をもらって解決するのは痴漢をした犯罪者に『お金を払えば逮捕されない』という間違った考えを植え付けるだけで必ず再犯するので意味がない」と度々繰り返しており、相手に治療を受けさせることでしか再犯を防ぐことはできないとこの本を通じてひしひしと感じました。
あとがき
私も女性である身、痴漢を経験したこともあります。
正直声なんて、助けなんて出せません。
勇気を出して助けを求められる人は本当にすごいと思います。
今は痴漢を周りに知らせるアプリなども普及しているし、痴漢防止のポスターもたくさん見かけるようになりました(著者によるとあのポスターはまだ改善の余地があるそうですが)。
もし次、運悪く痴漢に出会ってしまったら、必ず捕まえろとは言いません。
ですがもしできるなら、周りの人の助けを借りて、その人に治療を受けさせることが未来の被害者を減らすことに繋がります。
「痴漢をしたら人生終わり」なんてよく聞きますし、終わりってわかってるならなんで痴漢するんだろうとも思います。
加害者に治療を受けさせるという行為はその人の人生を終わらすものではなく、むしろもっと明るい未来へと導く勇気ある行動だと私は思います。
その勇気が私にはあるかわかりませんが、不運にも痴漢にあってしまった、痴漢を目撃してしまった時、周りの人が痴漢について間違った知識を持っていた時には勇気を出して彼らを正しい方向に導いていけたらいいなと思います。
読了ありがとうございました。