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不確かじゃない「君」と「花譜」がそこにはいて  古参観測者の視点から見た「不可解弐Q3-魔法の無い世界-」

先日、不可解弐Q3-魔法の無い世界-というライブが6月11日、12日の2日間に分けてありました。もちろん、この記事を読んでいる皆さんならご存知のことでしょう。

ただ、公式ライブレポが花譜の語りで終わっているように、多くの観測者にとってポエトリー・リーディング①、②はよく分からないポエムとして消費されてしまっているように思います。

また、多くの人がポエトリー・リーディング②が不可解パンフのセトリと順序が異なっていることに気づいていないでしょう。パンフレット作成後にセトリを変える……並々ならぬこだわりが運営陣にあったことが伺えます。

花譜「不可解弐Q3」ライブレポ 辿り着いた「たとえ魔法が無くても」の解

しかし、僕にとっては非常にに大きなことでライブに終わった後、Q3のエンディングの間ずっと頭を抱えていました。まさに運営が望んだように、セトリの順序を変えたことで僕に衝撃が走ったのです。

今回はライブレポートというより、一人の観測者から見た「君」と「花譜」の物語です。花譜が作詞したポエトリー・リーディング①、②の解説になります。
つまり解釈論であり、正解はないです。

なぜ僕が衝撃を受けたのか――僕の花譜観と共に語ります。

花譜と僕との出会い

みなさんにとって花譜とは何でしょうか?

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神椿のメンバー、多くの楽曲がある歌手、かわいい、語彙力-53万……多くの答え方があると思います。

僕にとって花譜は「君に恋をしている僕が好きな女の子」です。
「は?」と思う方もいらっしゃるでしょうが、僕にとってはずっとこれなんだ、ということを最近気付きました。

多くの人が学生時代に恋をしたことがあるでしょう。
実際に付き合ったことはなくても、中学生・高校生のときにクラスメイトに淡い恋心を抱いていたことはあるはずです。
しかし、現実とは非情なものでその人には既に恋人がいませんでしたか?

僕はそのような経験がありました。小学生のころからずっと好きだった幼馴染がいて、高校が同じでした。高校一年生のとき、僕が好きな幼馴染に恋人ができました。幼馴染は楽しそうに毎日彼との恋愛を語ってくれました。

花譜も同じでした。僕が出会った頃の花譜はオリジナル曲もないし、デカいタイアップもないし、神椿もないし、PIEDPIPERもいません。不可解のような凄いライブもありません。

ただ、君に恋い焦がれる女の子でした。そしてそんな彼女を僕は好きになったのです。(当時のインスタグラムでは永遠と君へのメッセージが投稿されていました)


まるで教室の隅にいるちょっとシャイな女の子が自分を奮い立たせるために歌っている――そんな印象すら受けました。僕が初めて聞いた楽曲は「さよならミッドナイト」でしたが、あどけない少女が一生懸命背伸びして恋愛について歌っているというのが僕の第一印象でした。その恋心は純粋無垢で私の学生時代の思い出を想起させました。

そんな女の子がオリジナル曲を出す、と。
それは僕が好きなクラスメイトの女の子が学園祭でバンドをするような感覚と思ってくれて間違いありません。なにしろ、その当時の僕はカンザキイオリが作曲するということも知らなかったのですから。

出された楽曲は「糸」。そして糸の歌詞にもはいました。

もしも過去を全部やり直せるなら
出会えるあの日に戻って
君の首を締め付けるさ
嘘だよ
そんなことできないから
今だって消えない痛みを紡いでいるの

花譜が君とずっと会えていない様子なのはインスタグラムの投稿から分かっていました。花譜は永遠に君を待ち続ける女の子でした。

そして、次の「心臓と絡繰」。

騙されたって良いよ
奪われたって良いよ
この傷もこの涙も
この気持ちは全部私のものだ
少ない脳で答えを知った
仕掛けられた罠に揺れ動いた
戸惑いも繰り返し恋をしてみよう
君の優しさの全てが美しかったんだ

花譜から君へのラブレターそのものです。少なくとも当時の僕はそう考えていました。

休詩前の「忘れてしまえ」

ホオズキの花が咲いたら
君を連れて街の風になろう
あの日の意味もまやかしも全部忘れないように
君と笑う夏の日々を
何十年だって思い出すんだよ

真実をまやかして
気づいてしまうから

僕は君への愛を歌う花譜が好きでした。
それはきっと、僕が学生時代に好きだった幼馴染に重ね合わせていたのかも知れません。好きな人について歌う女性は魅力的です。例えその相手が自分じゃなくとも。

当時のファンはこのような自身の淡い恋心を花譜と重ねていたファンが多かったように僕は考えています。ミステリアスで神秘的と評されることが多い初期花譜ですが、実態は等身大の女の子であり、純粋無垢な「ぼく」であったわけです(花譜の最初の一人称はぼくでした)。

進学、そして


ライフステージの変化は誰しもあるものです。
代表的なものは進学・就職・転職などでしょうか。

花譜も中学を卒業し、高校生になりました(もうすぐ高校卒業なんて時が経つのは早いものです)。

ライフステージが変化すると人間関係も大きく変わります。中学校の頃に仲が良かった人がいても、高校入学後疎遠になるなんてことは良くあることでしょう。実際に僕の幼馴染も高校卒業後、大学で新たな彼氏を作ったようでした。

4/24日、以下のメッセージとともに花譜の静止画のインスタは更新されなくなりました。

もちろん、終わったと運営からアナウンスがあったわけではありません。
しかし、この後、静止画のインスタグラムは殆ど更新されていません。
昨今は花譜がバーチャルインスタグラマーを名乗っていたことを知らない人も増えてきていますが、仕方のないことでしょう。

このとき、コンテンツの根幹であったものの一つが止まったわけです。

そして、花譜は過去を喰らいつくし、不可解な花へと成長していきます。

少女はいつまでも少女のままではない、そんなことは当たり前です。不可解までの期間、花譜は大きく成長を遂げました。CF開始時5万人程度だった登録者数は不可解の日までに12万人を超えていたようです。ほんの数ヶ月の出来事です。

ただ、僕は一抹の寂しさを覚えていました。花譜は君のことを忘れてしまったのか、と。僕は散々花譜が君について話すのを聞いてきました。重いほどの愛を語る花譜が好きでした。そして、その記憶は僕自身の青春の1ページと紐付いています。まるで僕の青春時代の淡い記憶を探るような体験です。僕は君について話す花譜がなにより好きでした。

後にPIEDPIPERから花譜のインスタグラムは花譜自身が執筆していたことが明かされます。神椿のコンテンツとしてではなく、14歳の花譜が描いていた物語であったわけです(もちろん、糸などはカンザキイオリの作詞ですから、当時何らかの方針はあったと思いますが)。

その後、しばらく更新は全くなくなり、僕にとって花譜のインスタグラムは"花譜という僕の青春の1ページ"になりました。あの頃はそんな気持ちがあったなあ、と学生時代を懐かしむような感覚です。

ただ、僕は花譜の歌声が大好きだし、神椿の表現も好きなので現在も追いかけています。けれど、思い返してみれば花譜にハマった本当の原点とは違う部分が結果的に好きになっているだけです。

僕が好きになった花譜は時期的にオリジナル曲もないし、神椿もないし、不可解のような凄いライブもない。歌声も今より全然下手です。僕が好きだったのは、ただ歌が本当に好きな女の子が君への愛を歌い続けている様子だったのかもしれません。

不可解Q3


今回のライブは予め花譜自身が作詞したポエトリーが披露されることが公開されていました。花譜が自ら綴るポエトリーリーディングから産まれる世界観に注目!というダサい告知もありました。

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その花譜のポエトリーが「君」の物語でした。

何年ぶりの更新ですか……ずっと待ってました!

会場でそのことに気づいたとき、興奮と驚愕、そして僅かな安堵が湧き上がってきてよく分からない感情になりました。花譜が「君」の物語を忘れていなかったという事実だけでまず嬉しいのに、内容の充実さに釘付けになりました。

タイトルは「魔法のない世界」。
「君」の物語
もまだ花譜が魔法にかかっていなかった頃のお話。

魔法のない世界
夢なんて叶うわけない
魔法なんてない
そんな世界でぼくは生きてる

魔法のない世界① 一部抜粋

「ぼく」という表現から花譜が「わたし」でもない、「かふ」でもない、花譜を表そうとしていることが分かります。

ちゃんと心が動くことを確かめた
独りよがりじゃないよ
そこには君がいてくれたから

そろそろ旅立つ季節なんだ
何をもっていこうかな
ぼくに魔法はないけれど
白線だけ踏んで家に変える

魔法のない世界② 一部抜粋

そして、花譜は花譜自身で紡いだ物語を終わらせてくれました。魔法のない世界を読んで、少なくとも僕はそう解釈しました。
花譜自身が自分の物語にちゃんと幕を降ろしてくれました。

そのような意味で今回のライブは救われた観測者が多かったのではないかと思います。僕の周りには「君」の物語を待ち続けていた観測者はたくさんいましたし、途中で引退していった観測者も多かったです。
実際、僕はある元観測者に終わったよとだけ報告しました。

「君」の物語は誰もが感じる青春の1ページです。
だから、僕は「学生時代好きだった女の子のインスタをたまに覗く感覚」でまた花譜を観測してしまう。そのような古参観測者はたくさんいます。

僕はこの物語を見届けることができ、幸せでした。

花譜、ありがとう! 






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