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ケロリン桶が空を舞った日~長瀬有花エウレカライブレポート~

長瀬有花は2次元と(デジタル)と3次元(フィジカル)で活躍するだつりょく系アーティスト。平成レトロを貴重とする独特の世界観と魅力的なウィスパーボイスは多くの人を惹きつける。

2023年8月25日「長瀬有花"Eureka" at LIQUIDROOM」が開催された。

引用元:汽元象レコードX

本ライブは長瀬有花にとって初めてのワンマンライブであり、活動3年目を迎える長瀬有花の集大成となった。
本記事は現地参加した私の率直な感想を交えたライブレポートである。



長瀬有花の軌跡

長瀬有花エウレカの特設HPを見ると、ロード画面で長瀬有花の足跡を辿ることができる。長瀬有花は次元の壁を超える活動をライブを通して少しずつ行ってきた。

2021.9 Promenadeで顕現の実験をした。
2022.2 Alookでデジタル世界から私達と同じ時間を過ごすことを決めた。
2022.6 SEEKで東京の各地に現れ、私たちは"長瀬有花"を観測した。
2023.3 Formで下北沢をルーツとする自身のconceptを示した。

https://riot-music.com/eureka/

これらの活動を通して積み上げられたキャラクターと世界観は長瀬有花独特のものを作り出し、多くの人を惹きつけている。
今回のライブはそんな長瀬有花の世界観を観測するのも楽しみの一つだ。

ライブステージ

ライブは恵比寿LIQUIDROOMで開催された。
定刻を少し過ぎて、幕が上がると、ステージ上に長瀬有花の世界があっと目に飛び込んでくる。
ステージには、ライブ名「エウレカ」からイメージした古代ギリシャ風の柱やブラウン管テレビ、古びたキーボードやゲーム機器が並ぶ。
天井にはケロリンが飛んでいた。

長瀬有花のステージを見ることは開演前からの大きな楽しみだった。
こんなにステージグッズを見るのが楽しみなアーティストは長瀬有花だけで、この世界観こそ私が彼女のことが好きな理由でもある。

終演後に撮影したステージ

会場のLIQUIDROOMはすでに満員で、後ろからの圧を強く感じた。
ただ、普通であれば不快な圧も、長瀬有花さんのファンがこれだけ集まっていると思うとどこか嬉しかった。
そして、ライブが始まる。

ライブパート

Eureka!

1曲目は「fake news」。1at Albumの始まりを飾ったオープニング曲だ。
曲の始まりとともに、ステージ中央に見えるロケットのようなセットの扉に長瀬有花が映し出される。

1st live「Alook」で初めて見せた新衣装の姿だ。fake newsのノイジーな音はデジタル存在によく似合う。

駆ける、止まる

そして、そのまま1stシングル「駆ける、止まる」へ。
すると、いつも通り歌う長瀬有花に少しずつノイズが走る。
楽曲のサビに差し掛かると、突如扉が開く。

3次元の姿でも活躍する彼女であるが、フィジカルの姿を披露するのは決まっていつもオンラインライブだった。
この瞬間、普段モニターを通して見ていた彼女を初めて発見した。

長瀬有花は1stライブ「Alook」でこんなことを言っていた。

「長瀬有花はあなたの時間に顕現することによって永遠を失いました。一つの次元に留まる長瀬有花という存在を求めていたという人もきっといたと思います。それでも、次元を超えることを選んだのはみなさまと同じ時間を生きて、同じ景色を見て同じ音を聞いて同じ匂いを嗅いで……そんな同じ次元を共有することが二度と戻らないかけがえのない時間を作ることだと思ったからです。」

1st birthday live 「Alook」より

もうAlookから一年以上が経っていた。
日頃の配信活動を通して、同じ時間を共有しつつも、まだ「同じ景色を見て同じ音を聞いて同じ匂いを嗅いで……」という夢はまだ叶っていなかった。

まさに「Eureka!」。
長瀬有花と私たちリスナーの願望が実った瞬間である。
確かに長瀬有花がそこにいた。

現れた姿は宇宙服をモチーフにした白いフードに長瀬有花さんらしいオレンジ装飾が施されていた。ライブ中になると白いコートにライブハウス特有のレーザーが反射してとても綺麗に映し出されていた。

シンガロングできる幸せを

3次元に顕現した長瀬有花は、エレクトロなダンスミュージックである「白昼避行」、「ライカ」、新曲「近くて、遠くて」を歌う。
ここまで長いMCを挟まず、ノンストップでオリジナル曲を歌う姿はひたすらカッコよかった。
間奏の間にお水を飲むのはちゃんとバンド仕草で好きになった。

白昼避行

続いて披露された「アーティフィシャル・アイデンティティ」では、シンガロングパートがあり、みんなで叫ぶことができたのが本当に嬉しかった。
コロナ期間中には考えられなかったことだし、有花さんと同じ景色を見ながらみんなで歌うことは格別だった。
同じ音を聞いて、同じ空間で、かけがえのない時間を過ごす。
ライブとはやっぱりそういうものなんだ。

アーティフィシャル・アイデンティティ

そして、次に彼女で最もヒットした「とろける哲学」が流れる。
猫のポーズと有花さんの抜けた声が特徴的な一曲で、眼の前で踊るダンスに目が釘付けになった。
アウトロにかけてのギターソロアレンジも、CDで聞くのとは異なるライブ仕様を感じさせれくれて非常にカッコよく、拍手が止まらなかった。

とろける哲学

長瀬有花らしい多様なサウンド

「ハイド・アンド・ダンス」を挟み、彼女が好きなお菓子であるチロルチョコとのタイアップソング「むじゃきな気持ち」が歌われる。

長瀬有花さんはチロルチョコの包み紙を収集するのが趣味で、大切にファイリングしている。配信では開幕と同時に「今日のチロル」としてお菓子を食べるのが恒例となっている。ダンスが非常に可愛くて、有花さんの表情も朗らかに見えた。

「むじゃきな気持ち」が終わると、しばらくゆったりとした静寂が訪れ、「アフターユ」の一節がアカペラで歌われた。一瞬で会場を包み込むボーカルに圧倒されつつ、彼女のボーカリストとしての才能を改めて感じた。
音程の上下が激しく、難易度の高い曲を生バンドセットに合わせて歌う凄さよ。

アフターユ

続いて披露された「やがてクラシック」はサックスアレンジが非常に印象的で、思わず聞き入ってしまった。その次の「異世界うぇあ」でも、コントラバスの音色が取り入れられていて、CD音源では聞いたことがない音を鳴らしていた。「異世界うぇあ」にコントラバスサウンドを合わせようという発想が凄い。
今の長瀬有花はロックやエレクトロチューンの曲が多いけれど、クラシックサウンド的な楽曲も相性が良いのかもしれない。
そう思わせられる演奏だった。

やがてクラシック

そして、次は「SEEK」のテーマソングである「微熱煙」。
コントラバスの重厚な音色から始まり、綺麗なピアノのイントロが響く。
この楽曲は本当にライブ映えする楽曲だ。

印象的なロングトーンを境に力強いギターサウンドとドラムが混ざり、会場は一気に最高潮に。ラストはみんなで叫ぶ「LaLaLaLa……」。
本当に楽しかった……

微熱煙

今日とまだバイバイしたくないの。

熱気に包まれた微熱煙の後は、長瀬有花らしい”だつりょく系”のポップスが続く。
新曲「宇宙遊泳」や「みずいろの君」は気の抜けた声がとても長瀬有花らしさを感じさせてくれて、会場に漂っていた熱気を和らげてくれた。

そして、リスナーの中ではエンディング曲的位置づけの「今日とまだバイバイしたくないの」が披露される。
頭の中では「ここまでなのかな……」という気持ちを抱えながら、大きく手を横に振って「今日とまだバイバイしたくないの」とみんなで大合唱。

今日とまだバイバイしたくないの

有花さんが扉の向こうに言ってからも、長くシンガロングは続く。
今振り返るとこのパートは実質的にアンコールパートになっていて、自然とみんなで声を上げながら有花さんが改めて出てくるのを待っている構図が出来上がっていた。

アンコールのあとに

自身を歌った曲である「オレンジスケール」のイントロとともに、エウレカライブTシャツを着て、長瀬有花はロケットの中から登場。
アンコール後にライブTシャツを着て出てくるという鉄板をやってくれるだけで嬉しかった。

オレンジスケール

そして、個人的に最高に盛り上がる曲だと思っている「ブランクルームは夢の中」へと続く。サビのガチャ感が凄い好きで、ここで大きく手を降った。レーザー光線も多種多様な色で会場を照らし、会場のボルテージが上がっていく。同時に、その盛り上がりとともに着実にフィナーレへと向かっていることを感じさせた。このへんでもう泣きそうだった。

最後はいよわさんの提供曲「ほんの感想」を披露。
この楽曲は6ヶ月連続リリース企画の最後を飾った楽曲で、エンディング曲としてぴったりだ。多くの音が入り交じる難易度の高い楽曲で、バンドメンバーの技術力を感じさせられた。

ほんの感想

途中、歌っている有花さんの声から感極まっている印象を受けたのは自分だけだろうか。いよわさんらしいカオスなサウンドの中に、エモーショナルな雰囲気が交じる。こんな現象は長瀬有花だけだろう。

最後有花さんがみんなに手をふる中で、私も大きく手を振った。
そして、「ありがとう~!」と声をあげた。
画面越しではなくて、ちゃんと対面で伝えたかった。
それが、今回のライブの目的の一つでもあったから。

最後は「気をつけて帰ってね~」という気の抜けた言葉とともに、扉の中へと帰ってしまった。終わり方があっさりで、なんだかとても長瀬有花さんらしくて笑ってしまった。

まとめ

長瀬有花の世界観に満たされたライブだった。
演奏の巧みさもそれを押し上げていて、ライブならではの特別感が演出されていた。加えて、長瀬有花さんがリアルに顕現する際に発した目標である「同じ景色を見て同じ音を聞いて同じ匂いを嗅いで」ということが達成できたライブであったと思う。
本当に二度と戻らないかけがえのない時間を過ごすことができた。こんなに幸せで良いのかと思った。今まで応援してきて良かったと思った。

不思議なことに、ライブ後も喪失感はなかった。
「良いものをみた!」とは本当に思ったけれど、変に刺激を受けたり、感傷に浸る感じではなかった。不思議な心地よい感覚と「明日からも頑張るぞ!」と思えるようなライブだった。この感覚こそが長瀬有花がだつりょく系アーティストである真骨頂なのかもしれない。

また明日からはいつもの日常に戻って、毎週月曜日の「たれながせ」を楽しみにしつつ、「今週も頑張るぞ!」と思える日々がやってくる。
特別な日ではなくて、長瀬有花とゆったりと過ごしていけるような日常がやってくる。

「長瀬有花はこれからもあなたの日常のそばにあり続けます」

長瀬有花EurekaのMCにて

そう思えるアーティストを私は応援している。長瀬有花はいいぞ。


セットリスト


レポートに入りきれなかった散文的な感想

長瀬有花さんのパワフルさ

現地1stライブにも関わらず、オリジナル曲だけで完走してしまった。それにまだまだ歌っていない曲もたくさん残っている。

最近の有花さんの楽曲リリースペースは本当に凄い。シングル6ヶ月連続リリースだけでも凄いのに、アルバム「OACL」やミニアルバム「ランチボックス」も平行して動いていた。
それだけ業界としても注目を浴びているということの証明だと思うし、これからの活躍が本当に楽しみになってくる。

また、今回のエウレカも全部の楽曲にライブアレンジとダンスが付いている。サックスやコントラバスを交えた編曲はもちろん、微熱煙のようなライブ特有のアレンジも会場を盛り上げてくれた。
現地でかわいい振り付けがたくさん見られて本当に楽しかった。

演奏エグくない?

今回長瀬有花バンドとして出演したバンドメンバー、みんな巧すぎた。
バンドメンバーは、ドラム、サックス、ギター、ベース、コントラバス、キーボード、と珍しい構成で、通常のバンドサウンドとは異なる重厚な音色も混じっていて最高だった。楽器を兼任できる人凄いよ……

コラボカフェや長瀬有花概念について

ライブの前日くらいに韓国人の方から、「SEEKやFROMの聖地を教えてくれませんか?」というDMをもらった。喜んで返信をしつつ、せっかくなのでライブ当日の行動を一緒にした。

タワーレコードやコラボカフェ、改良湯へ行ったり、ライブ後打ち上げに行ったりと……
長瀬有花さんの配信は外国人も多いのは知っていたけれど、現地で出会うとやはり感慨深いものがあって、長瀬有花さんの存在が世界に広まっていることを感じられた。その他、地方勢も含めて平日にも関わらず、多くの人と出会うことができた。
長瀬有花リスナーとちゃんと交流するのは今回初めてだったんだけど、「長瀬有花っぽいよね」という概念がちゃんと通じ合えるのがとても楽しくて色々話し込んでしまった。これが長瀬有花概念か~って。

LIQUIDROOMで1st liveをする凄さ

私の中でLIQUIDROOMというライブハウスは下北沢で頑張っているバンドが一つの目標として目指す場所、大きな記念ライブのときに行う場所、という認識だ(LIQUIDROOMは東京でzeppの次に大きいライブハウスの一つだ)。
コンセプトライブが下北沢で行われたように、今まで下北沢カルチャーに根付いてきた長瀬有花だけれども、1stライブがLIQUIDROOMで行えたこと(加えて満員にしてしまったこと)は一つのカルチャーとして非常に意義深いものであると思う。

これから長瀬有花さんが下北沢カルチャーとどう関わっていくのか未知数であるけれども、個人的にはいつか下北沢でライブする長瀬有花さんが見たい。下北沢のフェスで「長瀬有花タオル」を大きく広げてカメラに抜かれたい!!!

2次元(digital)と3次元(physical)について

最近の長瀬有花さんが「デジタルとフィジカルの両軸で活動する」という表現を使っているのがすごく好きで、この表現は長瀬有花さんにぴったりだと思っている。Vtuber業界はどうしても中の人とアバターの存在を分けて考える風潮が強い中で”長瀬有花は長瀬有花なんだ”ということを教えてくれる。

今回現地で初めて出会ったときも「長瀬有花だ!」と思った。
どんな姿でも長瀬有花は長瀬有花。
だから好きなんだ。

最後に長瀬有花はいいぞ!!!!

ライブアーカイブは9月10日まで配信中!!!






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