題詠100★2016投稿のまとめ
題詠100★2016投稿のまとめ(田中彼方)
001:地
ビー玉を地面に蒔いて、
水をやる。しばらくすると、
生えてくる虹。
002:欠
ほんとうに残念だけど
(御を消して)欠席します。
今回だけは。
003:超
超合金製の牛久大仏を、
今なら3体おつけいたします。
004:相当
あなたへの思いを秤で量ったら、
りんご3個に相当したよ。
005:移
「真っ赤っか」
「真っ赤いけやな」
「真っ赤いけ」
ことばが移って夕焼け見てる。
006:及
「お呼びでない。こりゃまた失礼いたしました」
と、力及ばずギャグでごまかす。
007:厳
時として厳しい父の、
時として無垢な子供の
ふりをしている。
008:製
父さんの小野式製麺機で紙を、
切ってはだめとしかられている。
009:たまたま
泣いてる娘
怒っている娘
呆れる娘
「「「ふたまたまでならゆるせたかもね‼︎」」」
010:容
「象を飲み込んだうわばみにも足らん」
包容力のたとえがおかしい。
011:平
「平凡な女でいろよ」
「オルレアンを解放しに行く。黙ってろ、カス!!」
012:卑
チョコファッション半分こって、
こっちにはチョコがないです。
卑怯過ぎです。
013:伏
くちびるの動きでわかる、
「さようなら」
目を伏せたままの君の命令。
014:タワー
手をひいて君をみちびく、
「目をあけて」
東京タワーのガラスの床へ。
015:盲
盲人に奇跡を起こす。
「服のした、
腹のなかまで透けて見えます!!」
016:察
ハムちゃんの観察日記
1日目 冷たくなって、動かないです。
017:誤解
「一介の産科医ですが、十戒は難解ですか?」
「誤解になります」
018:荷
自転車の荷台の上の箱の中
人形劇の人形は、人。
019:幅
「この幅や」
小さく前にならえして、
そのままニトリへ棚を見に行く。
020:含
含羞草も眠りについた。
砂の精が、魔法の砂をふりかけていた。
021:ハート
君はまたハートの女王のまねをして、
「首をはねよ!」
と、魚をさばく。
022:御
「徒然町」
「御徒町だね」
最終回、果たして2人は巡り逢えるか⁉︎
023:肘
肘掛を起こして、肩を寄せあえば、
たったふたりの深夜バスです。
024:田舎
「なあ、池に逆さに人が浮いとるな。
田舎暮らしも、スリリングやな」
025:膨
Amazonの箱から君を取り出して、
空気を入れて膨らましている。
026:向
モノレールの脚柱だけが。
生きていた
君と見上げた、向ヶ丘です。
027:どうして
すこしだけ意地悪をする。
「さあつぎは、
どうして欲しいか言ってごらんよ」
028:脈
「葉脈が、日光写真に写るだろう」
海藤抱壺の真似をしてみる。
029:公
「お花見の場所取りしなくて楽だよね」
「いや、違うやろ」
公園に住む。
030:失恋
痴話喧嘩もたいがいにおし。
ブレンバスターが、炸裂している「失恋レストラン」。
031:防
「新聞紙がラッキーアイテム」と書いてある
新聞紙を巻き、寒さを防ぐ。
032:村
「MIB、村いち番のべっぴんさん。
続編とかも出たみたいだよ」
033:イスラム
「ラマダンで」
イスラム教徒のように言い、
新セルベール整胃錠を服む。
034:召
塩漬けの桜の花を湯に落とす。
「花を召しませ、召しませ花を」
035:貰
気持ちだけ貰っておくよ、
ありがとう。
今日はトカゲが猫のおみやげ。
036:味噌
「脳味噌や。食べてあげるわ」
(いや、そこは背肝なんだし。俺も好きだし)
037:飽
冬が来るまえにかならず飽きが来て、
イブはいつでもひとりなのです。
038:宇
比末奈乃波和加留无也計止「於波与宇」天、
万葉仮名天加久乃波也女天。
039:迎
「すみません。よくわかりません」
と、Siriはいう。
二日酔いには迎え酒だろ。
040:咳
蜂蜜と大根おろしをなじませて、
君ご自慢の咳どめレシピ。
041:ものさし
ものさしで軽くお尻を叩くだけの
とても簡単なお仕事です。
042:臨
「ひと晩に2度行くことか?」
「キリストの再臨のこと」
ローゼズを聴く。
043:麦
もうどこもかくすことなどないのだが、
麦わら帽子をかぶってみせる。
044:欺
詐欺師ではなくってペテン師なのですよ。
天使がすこし入っているの。
045:フィギュア
またひとり少女が行方不明です。
「棚のフィギュアがひとつ増えたよ」
046:才
*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
ナょωカゝレヽもレヽゎせナょレヽτ″ょ。
( ̄▽ ̄)
「才ノヽ∋ゥ」\(^o^)/τ、
≠″ャ」レ文字⊃カゝぅ@ゃめτ<ナニ″、ナレヽ。
( ̄(工) ̄)
*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
047:軍
職歴に書いてある、
「その名は宇宙防衛軍」って
なんのことなの?
048:事情
携帯を見つけるためにワン切りをすれば「顧客」と出てくる事情。
049:振
「振り出しに戻る」が六つ並んでて、
「七」が出ないと上がれないです。
050:凸
詩の題が「表彰台」で
「凸」の字をひと文字書いて、
怒られている。
051:旨
「すみません。よくわかりません」
と、Siriはいう。
旨かったから、牛は負けたの?
052:せんべい
江ノ島で、たこせんべいを食べている。
残酷やけど旨いなという。
053:波
色帯の緑が多いのが君で、
赤は僕です、岩波文庫。
054:暴
リモコンの「つんでれボタン」を押すだけで、
暴れん坊が甘えん坊です。
055:心臓
玄関に入ると部屋へ行くまでに、
心臓破りの階段がある。
056:蓄
蓄膿の国語教師が言うときに、
「明日」という語が「蓮」に聞こえる。
057:狼
銀製の指輪を君が外すまで、
まだ狼に変われないです。
058:囚
ボーダーのパジャマが囚人服みたい。
口をすべらせ、おあずけを食う。
059:ケース
背をむけて膝をかかえて黙り込む。
ギターケースの形をしてる。
060:菊
「菊水の缶と、ワンカップのビンは、
キ、チ、ン、と、分、け、て、
捨ててください」
061:版
手書き版の詩集に君が付いてきて、
5分にいち度つぶやいている。
062:歴
歴史的現在で書く。
なにもかも昔むかしのことなのだけど。
063:律
行く末のことや、子供のことなどに
触れないという不文律です。
064:あんな
父さんはカレーの時はいつだって、
「あんなカレーにな」って言います。
065:均
「100均のつっぱり棒が不良品や」
「なかなか上手いことを言うねぇ」
066:瓦
「割き瓦頭突きし互い板割り合う」
誤変換して、結ばれました。
067:挫
分かりあうことに、早くも挫折する。
「ねこのきもち」を読んでみようか。
068:国歌
陽だまりと
エノコログサと
またたびと
箱を讃える猫の国歌だ。
069:枕
「水枕、タイタニックが沈んでく」
「とうとう熱で、頭いかれた?」
070:凝
「煮凝りは魚のゼリー」
そういわれ、
なんだか楽しそうに食べてる。
071:尻
6人の少年たちが、
「俺の尻をなめろ」
と歌う僕の葬式。
072:還
さまざまな分子に還り
今、君はたぶんここにも
居るのだろうね。
073:なるほど
そうなんだ
なるほど
ほうほう
わかります
うわぁすごいね
ところで落ちは?
074:弦
弦の張り方が逆だと怒られて、
ふくれっ面のキューピッドです。
075:肝
生き肝の鍋さえ君は欲しがらず、
聖書を読んでほしいといった。
076:虜
ベビースター、
チップスターと、
カップスター。
味の虜になったのどぉれ?
077:フリー
「そのときの雪女って、私です」
僕は思わず、フリーズしてる。
078:旗
「醤油鯛、バラン、プラ菊、ランチ旗。音ゲーみたいな感じでやって」
079:釈
冷やし飴(5倍希釈)を
それぞれに、
大切そうに注ぎ分けてる。
080:大根
健さんになれずに、
僕は人生という名の舞台の
大根役者。
081:臍
「へそピってなんなの?」
「臍にするピアス」
「へぇ、そぅ」
「ぜったい言うと思った」
082:棺
あるだけの菊水呑んで、
棺のそと、
自分の生前葬をしている。
083:笠
夜目遠目笠の内。
あとプリクラと、
プロフィール写真にご用心。
084:剃
夜君が脇毛を剃った剃刀で、
髭を剃ってる朝だ、おはよう。
085:つまり
「TKG。つまりは、玉子かけご飯」
「3Mやな。マジでもう無理」
086:坊
坊さんが棒高跳びで亡命し、
茫然自失の防波堤です。
087:監
「じゃあ君は看守で、僕は囚人ね」
監獄ごっこがはじまりました。
088:宿
仮の宿
仮の恋人
仮の朝
仮の暮らしと、
本当の死と。
089:潮
「この部屋で君と」
「沈黙」
「さくらえび」
新潮文庫の100冊を、詠む。
090:マジック
「ハルキ君。このきのこ鍋、美味しいね」
「マジックマッシュルーム入りだよ」
091:盤
「オリオン座は今、太陽のうえあたり」
星座早見盤をまわして。
092:非
非常用持ち出し袋で、
エベレスト登頂ごっこを
してはダメです。
093:拍
しん とした音がしました。
うれしくて、
ひとりの部屋で ハイタッチを拍つ。
094:操
中指の指紋で君をアンロック。
貞操帯を ゆ っ く り 外した。
095:生涯
恥ずかしい僕の生涯。
そう書けば、
言葉が嗤う、僕を嗤うよ。
096:樽
約束の時間はとうに過ぎている。
必死で樽を飛び越えている。
097:停
子どもたちは台風みたいと喜んで、
スマホの灯りをかこむ停電。
098:覆
「作風を変えたい」
「いいや、このままで」
自我が芽生えた覆面歌人。
099:品
手品師は指を鳴らして、
観客をひとり残らず
消してしまった。
100:扉
もうずっと歩きつづけているのだが、
回転扉から出られない。