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気象と誠実に向き合う
「気象と誠実に向き合う」ときいて、何をイメージされるだろうか。
非常に難しい問いだと思う。
私が考える「気象と誠実に向き合う」という意味と、なぜこの言葉を生んだんのか述べる。
気象予報とは
気象予報とは「人の生命と財産を守るため」に存在するものであると考える。また、「産業の振興を図るため」という役割もあるが、本質は前者にあると言える。
しかし、近年の気象会社やメディアの災害報道、さらに一部の気象予報士による情報発信において、気象・防災情報が煽るような表現で伝えられていると感じることがある。特にSNSでは、インプレッション数を稼ぐことを目的としたと思われる投稿を行う気象予報士も散見される。
例えば、3週間以上先の年末年始の天気予報を信頼度DやEの状態で発表した会社もある。冬の日本海側や北日本では、気圧配置によって晴れたり雪が降ったりと不安定であるため、札幌、仙台、新潟、金沢などの都市はほぼ信頼度Eで予報されていた。一方で、太平洋側では南岸低気圧や前線が通過しない限り概ね晴れるため、晴れ予報を信頼度CやDで出すことが可能である。しかし、年末年始という人々の移動が多い時期を対象に、これほど不確かな予報を安易に出すことには疑問がる。
さらに、ある気象会社Aが雪の可能性について言及して書いた記事を引用したライブドアニュースのツイートに対し、別の気象会社Nがまるで喧嘩を売るような文面で積雪の有無や雪の影響について引用リツイートしていた事例もある。論点をすり替えて他社を批判しているとも言えなくない。
みんな気象に誠実じゃない…
こうした事例を見ると、気象に対する誠実さが欠けていると感じざるを得ない。確かに、気象会社として自社の予報を広く利用してもらいたいという意思は理解できるが、その社会影響力を十分に考慮すべきである。一般の人々にとって、気象会社が「○月✕日晴れ」と予報すれば、「その日は晴れる」としか伝わらない。しかし実際には、その予報の裏に雨や雪の可能性が隠されている場合もある。「気象情報は伝え方によって受け取る側の解釈が異なる」ということを念頭に置き、正しい情報を正しく伝える責任がある。気象情報は人々の生活や活動と密接に関わっているため、会社の営利関係にとらわれず、誠実な情報発信を行うべきである。
気象予報士のSNSも同様である。これから寒くなる11月や12月に「今季最強寒波到来」と表現すれことで、一般の人々には「今年一番の寒気が非常に厳しいものになるのではないか」という印象を与えかねない。しかし実際には、冬になってから最も強い寒気が到来するに過ぎない。この時期は気温が下がり続けるため、ほぼ毎週「今季最強寒波」と表現しても間違いではないだろうが、それが適切かどうかは別問題である。
また、海外の予報機関がコンピュータで計算したデータをそのまま公表したり、本来は4hPa刻みで描かれる等圧線を1hPa刻みにした結果、等圧線が増えて濃密になった台風を「ブラックホール」と表現する気象予報士も居る。このような行為は、気象業務法の想定し得ないところである。
自分の意志
気象予報に関わる人間は、常に「誠実」であるべきだ。私利私欲や営利、自慢のために気象・防災情報を扱うべきではない。自分はそうした人間にならないことを誓い、「気象と誠実に向き合う」という信念を持ち続ける。