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我が家の最強兵器

小学2年生の時。担任の先生が「地球はあと50億年でなくなる」と言いました。私はびっくりして、家に帰るとすぐに、母親に報告しました。
「ねぇねぇ、50億年すると地球はなくなっちゃうんだって!」
「あっそう」
母親は何ともないような顔で答えました。
「だから、50億年で死んじゃうんだよ!」
「大丈夫よ、その時にはあんたも死んでるから」

何でそんなこと分かるんだろう……?と思ったあの頃の私は、今よりずっとずっと、素直でピュアでしたね。
今は、一族の平均から考えてあと75年したら私は死んでるなと、50億年後のことなぞ構いもしなくなってしまいました。
私以上に、月日って残酷だと思います。

私は月日がたつに従って、他人を疑うことを覚え――というか常に疑うようになり――、素直さやピュアという言葉とはかけ離れてしまいました。
それと真逆で、他人を疑う姉とは正反対の性格を持っているのがうちの妹です。

彼女は、『狂犬病』は犬に噛まれた人間も犬になってしまう病気かと思っていた、そうです。
しっかりして欲しいです、ほんとに。それを中学頃まで信じていたそうですから。
「だって、吸血鬼に噛まれると吸血鬼になるじゃん!!」
いいか、吸血鬼は伝説だからな。

天然ぼけな妹は両親から微笑ましい娘と思われています。が、私は騙されないぞ。

「今日ラジオで言ってたんだけどね」
うちの父親が、夕食時に話し始めた時のこと。
「『3首』って言って、3箇所の首を温めるのが体に良いんだって」
「へぇー」
「手首、足首、乳首」
「そうなんだ〜」
……えぇ、もちろん手首、足首、首に決まってます。私は思わず怒りましたね。
「何信じてんの?!手首、足首、首に決まってるでしょうが!!そうなんだ〜、じゃない!!!」
「うー……だって、乳首もちゃんと首がつくじゃん」
妹よ。ラジオでそんなことを言う訳がないだろう。お前は疑いを覚えるべきだ。特に、他人をからかうことと冗談が好きな父親の発言は疑ってかかるべきだ。

あ、そういえば父親が私が実家に帰った時、「やっとシャレが分かる人が帰ってきた」と言っていましたね。
「え?それどういう意味??」と真顔で聞いて撃墜させる、我が家の最強兵器は妹ですから。

そんな妹は、あと一週間で帰ってきます。