網膜芽細胞腫という小児がんについて
2014年6月6日に誕生した息子が同年11月26日に診断された「網膜芽細胞腫」
みなさんはこの小児がんの名前を知っていますか?
2015年9月1日
この日、私の息子は左眼をお空に返しました。
今回noteを書いたのは少しでもこの病気を多くの人に知ってほしかったから。
他人事だとはおもわずに、どうか最後まで読んでみてほしい。
乳幼児のいるご家庭はもちろん、これから出産される人、そして将来自分のお子さんが結婚し出産する時に、少しでもこのnoteの事を思い出して欲しい。
そんな想いでnoteを書きます。
網膜芽細胞腫とは
近年では24時間テレビに取り上げられた事もあって少し認知が広がってきているようですが、それでもまだまだ知らない人が多いのが現状です。
それもそのはず。
網膜芽細胞腫は15000~20000人に1人の発症率。
5歳未満の小児の年間発症率は100万人あたり10~14人と言われています。
また遺伝性と非遺伝性があり、親族に罹患者がいる場合は出生時から眼底検査を定期的に行います。
これにより早期発見・早期治療が可能になっています。
しかし遺伝性でない場合、この病気に対する知識を有する人は多くなく、また体調不良などで乳児が自ら訴える事も無いため、場合によっては早期発見が難しい病気だと私は自分の経験から感じました。
早期発見の重要性
遺伝性は出生時からすぐに検査をすることで早期発見が可能です。
しかし非遺伝性の場合は親が自分で異変に気づくしかありません。
乳幼児健診もありますが、私は自ら異変を感じる直前に受診した4ヶ月健診では見つけてもらえませんでした。
もちろんそれ以前の健診でも同じです。
この病気は稀少がんであることから、医療者も知らない人間がいると診断したドクターが言っていました。
健診を受けていれば大丈夫という気持でいれば、私のように後悔することにもなりかねません。
◆どうやって異変に気づいたのか◆
私達が網膜芽細胞腫を見つけるポイントは目視以外にはありません。
腫瘍が影響して赤ちゃんの機嫌が悪くなるとか、ぐったりしてしまうといった事がまず無いからです。
もちろんそれは眼球内に腫瘍が留まっている場合にのみ言えることで既にほか臓器に転移していたら様々な不調が現れるでしょう。
しかし眼球の一番外側の強膜はとても強く、網膜芽細胞腫は大体が眼球内に留まった状態で発見される事が多いと言われています。
※眼球外に浸潤している場合は命の危険もあるため一刻も早い受診が必要です。
私が異変に気付いた方法
眼球内に腫瘍が留まっている状態で異変に気づいた方法です。
・斜視
・白色瞳孔
・結膜の充血
・眼瞼腫脹
・眼球突出
この5つが網膜芽細胞腫を疑う症状です。
私はこの内の白色瞳孔で見つける事ができました。
でも字を見ると「白く見える」と思いがちですがそうとも限りません。
実際息子は白く見えることは一度もありませんでした。
息子の場合はごくたまにビー玉のような瞳孔でした。
それもいつでもではなくほとんどが普通の瞳孔です。
それでも数回光った?と感じたことをきっかけに眼科を受診してがんが発覚しました。
そしてこの時点で眼球内に留まる病状で最も進行が進んだ状態でした。
でもある日、治療が終わってからあることをして気づいたんです。
これをあの時にしていれば数ヶ月前に異変に気づくことが出来たと。
気づいたのは息子の左眼をお空に返した後。
壮絶な治療の末に眼球の温存を諦めた後。
後悔しかなかった。
そして、そのあることとは、写真を見ること。
ただそれだけです。
同じ日に撮影しても写っている時もあれば無いときもある。
でも右の写真にはハッキリ腫瘍が見えます。
当時の私は初めての出産育児。実家の東京から離れた神戸で主人も数ヶ月の出張と全てがいっぱいいっぱいで撮影した写真を見返す余裕も無かった。
5ヶ月目で発見された腫瘍は3ヶ月の時点で写真に写っていたんです。
※写真は4ヶ月ちょっとの頃です。
あの時、写真を見ていたら。
しばらくは写真を撮るのもみるのも怖かった。
網膜芽細胞腫の治療
網膜芽細胞腫の治療法はVEC療法と呼ばれる全身化学療法と腫瘍に直接治療する局所治療があります。※VECは3種類の抗がん剤
息子の場合は神戸の病院で全身化学療法を6クールまで行いました。
その後、小さくなった腫瘍を局所治療するために毎月東京の国立がんセンター中央病院に通いました。
※当時もそして現在も網膜芽細胞腫の局所治療が出来るのは国内ではここだけです
局所治療はレーザー、冷凍凝固、アイソトープ、そして眼動注と呼ばれ鼠径部からカテーテルを通して眼球に直接メルファランを投与する治療法です。
※メルファランは抗がん剤
いずれの治療も眼球に大きなダメージを与え、また最初の腫瘍が大きかったことからすでにギリギリのコンディションだった息子の眼は再び網膜剥離を起こしました。※1度目は腫瘍発見時にすでになっていた
眼球に腫瘍がある場合、多臓器への転移につながる恐れがあるため網膜剥離を外科的な方法で治療することが出来ません。
しかし自然治癒するまで何もしないで待つということは眼球外に浸潤する可能性を高める行為であり私達は選択することは出来ませんでした。
光よりも命を
いのちを守るために、私達は息子の左眼を1歳3ヶ月を迎える直前の9月1日にお空に返しました。
手術の前日に入院して眠りにつくまでずっと愛くるしい息子の左眼を見ていました。
たった1年と3ヶ月だったけど、息子にきらきら輝く太陽の光を見せてくれた大切なおめめ。
眼球摘出手術当日は息子が目覚めるまで涙が止まらなかった。
目が覚めたら絶対に笑っていようと決めていたから、その時まで数時間泣きました。
そして目覚めた息子は麻酔も効いていて痛みもあまりなかったようでニコッと笑ったんです。
ああ、なんてこの子は強いんだろうって思いました。
それから5年後、今に至ります。
通院は続きますが今はとても元気で体も大きく育ちすごくパワフル。
本当に本当に本当に大切な息子です。
でも治療後に知ってしまったもっと早く腫瘍を見つけられたという事実。
私はそれを伝えたい。どうしても知ってほしい。
網膜芽細胞腫は悪性腫瘍です。
そして子供のがんの進行は恐ろしく速い。
これからお父さん、お母さんになるひとへ。
お孫さんが生まれるおじいちゃん、おばあちゃんへ。
そして将来誰かと結婚していのちを授かるであろうひとへ。
私の息子の網膜芽細胞腫は遺伝性ではありません。
だから発見が遅くなった、という言い訳はしたくない。
でも知らなかったから。
はやく見つけられなかった。
見つけてあげられなかった。
こんな後悔を誰にもしてほしくないから、息子の左眼をお空に返したこの日に私は毎年何かしらの手段で網膜芽細胞腫について発信し続けています。
今年はnoteをつかって、Twitterから想いを届けさせてください。
最後まで読んでくれてありがとう。
かなたん