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お探しの眼鏡、おでこに載ってます。 (書架こぶね)

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読書は孤独。  ひとり揺れる 身の丈の舟。  言葉の海に 漕ぎ出す こぶね。
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#短篇小説

スタインベック 『朝めし』

三寒四温の頃  なぜか無性に読み返したくなるのが  スタインベック著・『朝めし』 5ページの名作掌編です。 冷気が身にしみる 谷間の夜明け。 灰色のテントのそばの  古錆びた鉄ストーブの裂け目から噴出す オレンジ色の炎。 赤ん坊に 乳を吸わせながら しなやかな動きで 朝食の支度をする若い女。 ジュージュー音をたてて 縮み上がるベーコン。  オーブンから出されたばかりの 褐色の分厚いパン。   熱く苦いコーヒーに 砂糖を入れて始まる  ささやかな朝食