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黒はどこだ【小説】
カナシバリの歌詞をもとにした小説を、AIを使って実験的に書いています。内容は随時更新(修正)していきます。
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『黒はどこだ』歌詞
「黒はどこだ?」
彼がそう呟いたのは、暗闇の中を彷徨い始めてからどれくらい経ったかも分からなくなった時だった。名前を ヴァイゼル。彼の足元には、無数の破片が散らばっていた。それらは壊れた記憶、砕かれた希望、そして虚構の世界の断片だった。
この都市にはもう昼も夜も存在しない。全てが灰色の霧に覆われ、太陽は黒い影をまとったまま、微動だにしない。ヴァイゼルはこの灰色の世界の「黒」を探していた。
「お前も『黒』を探しているのか?」
ヴァイゼルは振り向いた。そこには奇妙な女が立っていた。白い布で覆われた顔には瞳だけが覗いており、その光は何かを知っているようだった。
「黒……?」
「そう、真実を覆い隠す闇のことだよ。」
女は微笑んでいるように見えたが、それが何の意味を持つのかは分からなかった。
「お前は誰だ?」
「私はリュン。影を纏う者。」
リュンは片手を差し出した。ヴァイゼルは一瞬ためらったが、彼女の手を取った。
リュンはヴァイゼルを連れて灰色の街を抜けた。途中、崩れかけたビルの中で奇妙な音楽が鳴り響き、街の住人たちはみな無表情のまま踊り続けていた。
「これがこの街の正体だよ。」
リュンが指さした先には、黒く染まった太陽があった。その周りを無数の影が蠢き、歪な踊りを繰り返していた。
「あれが『黒』か?」
「いいや、あれは黒の影に過ぎない。」
ヴァイゼルとリュンはさらに奥深くへと進んだ。太陽の下には巨大な空洞が広がり、その中心に一つの異形の柱が立っていた。それは何かの心臓のように脈動し、黒い液体を吐き出していた。
「これが黒の源泉……?」
「違う。」 リュンの声は冷たかった。 「これは黒を生み出すための偽物だ。本物の黒は、君の中にしか存在しない。」
ヴァイゼルはその言葉を聞き、しばらく沈黙した。胸の奥に鈍い痛みが走る。自分自身の内側に黒があるというのか?
「見つけるにはどうすればいい?」
リュンは彼をじっと見つめ、そして静かに言った。
「お前自身の過去を壊すことだ。」
その言葉にヴァイゼルは戸惑った。だが、リュンが何を言いたいのかは理解していた。
彼はゆっくりとその場に座り込み、目を閉じた。そして、自分の記憶の奥深くへと沈んでいった。
記憶の中には、色褪せた光景が広がっていた。かつて愛した者たち、信じた世界、そして失った全て。
ヴァイゼルはその一つ一つを握りつぶすようにして壊していった。その度に胸の奥が痛み、体が黒く染まっていくようだった。
最後の記憶を壊した時、ヴァイゼルの体は完全に黒に染まった。目を開けた彼の瞳には、真実の闇が宿っていた。
リュンは彼を見て微笑んだ。
「お前が探していた『黒』だ。」
ヴァイゼルは立ち上がり、リュンに向き直った。
「これが……真実なのか?」
「そうだ。そしてこれからお前は、この世界を覆う偽物の黒を壊していく存在となる。」
ヴァイゼルは頷いた。黒をまとった彼は、もう迷うことはなかった。
黒い太陽の下で、彼の旅は新たに始まった。その足音は、かすかに響く歌声のようだった。
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