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時間切れ!倫理 90 古代インド社会

1 古代インド社会

(ア) インド世界
 仏教は馴染み深いからわかりやすいです。まずはインドの話から。
 紀元前15世紀頃、インダス文明が滅びる頃に、西からアーリヤ人と呼ばれる人々がインドに侵入してきました。ここでいうインドは現在のインド国に、パキスタン、バングラデシュ、ネパール、スリランカを含めた地域で、現在のインド国よりももっと広い。いわゆるインド世界のことです。南アジア世界ともいう。パキスタンやバングラデシュがインドと別の国になったのは20世紀になってからですからね。
 インドには様々な民族がいます。公用語だけでも20近い言葉がある。複雑な世界です。 アーリヤ人は現在のヨーロッパ人やイラン人と同じ先祖を持つ人々です。インド世界に侵入してきたアーリヤ人は、もともとインドにいた人たちを征服しながらインドに定着しました。この征服の過程で生まれたのが、カーストという身分制度と、バラモン教です。

(イ) 身分制度・カースト
 カースト制度は、上からバラモン、クシャトリヤ、ヴァイシャ、シュードラの4つの身分からなります。バラモンは聖職者、僧侶。クシャトリヤは武人、戦う身分。ヴァイシャは庶民、商人や職人、農民です。シュードラは隷属民。(正確にはこれらの身分のことをヴァルナといいます。)また、この四身分の枠外に不可触民と呼ばれる人々がいます。
 この身分制度はインドに根付き、現在も続いている。現在のインドにもバラモンはいる。でもさすがに全員がお坊さんをしているわけではない。サラリーマンをしていたり、商売をしていたり、農業をしていたりします。同様に、シュードラ身分の人も仕事は様々です。現在、多くの場合、身分と職業は関係していません。けれど誰もが自分がどの身分に属しているか知っている。
 身分制度は差別です。だから現在のインドでは憲法でカースト制度を禁止しています。しかし、2000年以上続いた制度なのでなかなかなくならないようです。
 雑談みたいな話になりますが、講道館柔道の指導者がインドの村で子供達を集めて、柔道を教えていました。小さい子達は、わけへだてなく誰とでも組んで練習をしている。ところが小学校3年生ぐらいの年齢になると、子供達は特定の相手としか組まなくなる。「他の子とも組みなさい」といっても組もうとしない。その日本人は理由がなかなかわからなかったのですが、やがてカースト制度のせいだと気がついた。同じカーストの子供同士しか組まないようになるんです。小さい時はカースト制度のことがよくわからないので、身分に関係なくワイワイ組んでいるのですが、ある程度の年齢になるとだんだん分かってきて、違う身分の子とは組まない。それでは強くなれないし、そもそも差別はおかしい。日本人の指導者は子供たちに何度も粘り強く説いた。そんな指導者のエッセイを読んだことがあります。

(ウ) バラモン教
 話を戻しますが、アーリヤ人がインドに定着する過程で成立した宗教がバラモン教です。バラモン身分の人たちが司る宗教です。
 基本は自然崇拝。昔のことですから、自然の脅威は恐ろしいです。洪水、日照り、嵐、ちょっとのことで人間の命などすぐ奪われてしまうわけです。バラモンたちが儀式において、神々への賛歌を唱え、生贄を捧げ、神聖な炎に様々な捧げ物を投じる。こうして、神々をコントロールし、被害を避けたり恵みを得たりしようとする、そういう宗教です。
 この宗教は、祭式つまり儀式が中心です。呪文の言葉やその節回し、その他儀式の細かい段取りが決まっている。この段取りを間違えると神々への祈りが届かない。その儀式のやり方をバラモンたちは、他の身分の人達には決して教えません。こうして宗教を独占することによって、バラモン身分は他の身分の上に立ちました。これがバラモン教です。
 そして、このバラモンたちの祈りの歌などを集めたお経を『ヴェーダ』といいます。

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